第5章 故郷編 第62話 故郷へ
一段落したらなぜか急に故郷が恋しくなってしまった。
親父とお袋は今頃何してるだろうな。俺の店はどうなったかな。
コンビニの帰りに出てきちまったしな。もう荒らされてなかったりして。
俺は転移魔法が使えるんだ。戻ってみようかな。
だが待てよ。こっちの時間と元いた世界の時間が同じ進み方とは限らないしな。
向こうに帰ったらよぼよぼのおじいさんになってた。なんてなったらシャレにならんしな。
俺の感覚じゃあ1年ぐらい過ぎてるような気がするが。こっちは1日も1年も前のとこよりも長いしな。
こちらでは1年はたっていないが向こうは1年ぐらいはたってるだろう。ちょっとリリンたちに話してみるか。
「みんな、ちょっと聞いてくれ。この国の件も今少し落ち着いてるし、人間の国の商売も、みんなのやりたいことも順調に進んでる。だから一度俺は故郷に帰ってみようと思う」
「ナオトの故郷ってどこなんですの」
「初めて聞いたのー」
「そうっすね」
「日本という国で、とても遠いんだ」
「マスター、私のデータにも日本は入っていません」
「ちょっと聞いたことがないですねー」
「とても遠いんだ。魔法で戻れるか試してみたい」
「リリンも行きたいのー」
「私も行きたいっす」
「もちろん私もですわ」
「マスター。お供します」
「ナオトさん。私もついて行っていいですかー」
「まずは俺一人で行ってみて安全なようなら迎えにくるよ。多分行けても魔力はぎりぎりかもしれない。そうしたら2、3日は戻れないかもな」
「「「「ええーー!!」」」」
「じゃあ試してみる」
俺は自分の故郷の家をイメージして転移してみた。自分の周りが、まばゆい光に包まれた。
「おおっ!成功した。家がある」
うわー成功したのはいいけど魔力が半分以上なくなってしまった。だが転移は出来るらしい。
うちの中に転移する。
「これも、できた!」
テレビをつけてみる。あれつかないや、電気が通ってない!
こちらの普段着に着替えてちょっと出かけてみる。コンビニまで来て雑誌を見てやっとわかった。
やっぱり1年が経過している。俺の予想はほぼ当たっていた。
鏡を見ると姿は若返ったまんまだ。
1年が経過しているということは当然俺は行方不明者扱いか。
家はそのままになっていたので親父が何とかしてくれたのかな。
電気が切られてしまってるので,とりあえず自分のキャッシュカードを探した。
「あった」
これはまだ使えるはずだ。中身は100万以上残っている。とりあえずなんか食うか。
久々に定食屋に行く。誰も俺に気づかない。当たり前か。
「飯がうまい」
肉野菜炒め定食を食べ終わってから考えた。この後どうしよう。
親父たちに会いに行くにしてもこの姿は何と説明しよう。もう、そのまま言うしかないのかな。
それにしても嫁たちを呼ぶには、ちょっとこちらの建物は貧相すぎるな。
こっちでももう少し金を稼がねば何もできん。俺はこの100万をもとにして金を稼ぐことを考えた。
さてどうしたもんかね。地道におもちゃ屋さんをやってたんじゃいつまでたっても嫁たちを迎えに行けないし、もっと儲かる方法はないかな。
とりあえずパチンコでもして考えるか。
「おいおい兄ちゃん。ここに来るにはまだ早すぎるぜ」
「何ー」
あーそうだった。俺は若返ってたんだ。つい自分の姿を忘れてしまっていた。
年齢制限に引っかかるとは!入れないとなると入りたくなるのが人情だ。
俺はサングラスを買ってマスクをする。ふふふ簡単簡単!
つい無理やり玉をねじ込んでしまった。これは反則なんだろうな。
結構な儲けになった。うーん。今の俺ならひょっとして賭け事は無敵なんじゃないか。
近くに競馬場があったな。ちょっとやってみるか。
馬を見ていると、どの馬が調子いいのかすぐわかる。調子のいい馬は輝いて 見えるのだ。
ある程度未来が見えるようなもんだ。 これも反則かな。まあいいわ!今はお金を稼ぐ事が第一だ。
1日会場にいて全部で2000万円になった。
しかし毎日賭け事をして過ごすというのも何かちょっとしっくりこないな。
ずっとこっちにいられるわけでもないので何かないものか。
「ああ!これがあった!!」
俺は株を買うことにした。前から買っておいたものを売る。四季報を見て業績のいい会社を選ぶ。そして今が底値になっている会社を更に選択する。
『サーチ』
これにしよう。1500万円で150円の株を10万株買う。その日のうちにストップ高したので500万円の儲けになった。
とりあえず今日の収入は2500万。俺は親父たちに会いに行くことにした。
転移して実家に着く。俺の実家は町の中ではなくて、すごーく山の中だ。
親父もお袋もその中でほぼ自給自足の生活をしている。
「ただいま。今帰ったよ」
「どなたじゃな」
「嫌だな。父さん、俺だよ直人だよ」
「うん?お前!···新手のオレオレ詐欺か?」
「ちがうってば!ほんとに直人だよ! ちょっと若返ったんだ」
「そんなことあるわけねーべ」
「いやだからー」
「本当に直人の若い頃にそっくりですねー」
「さすが母さん、分かりが早い!」
「直人の隠し子かえ?」
「ち,違うって」
それから俺が直人だと信じてもらうまで1時間かかった。
「最後の質問じゃ。それじゃあ、お前が柿の木に登って落ちて動けなくなって見つかったのは何歳の時じゃ」
「8歳の時だよ父さん」
「ううむ。どうやら本物のようじゃ。 しかしその若さはどうしたんじゃ。何でそんなに若いんじゃ」
「あーこれは外国に行った時に肌にいい物を見つけて、それで塗ったらこうなったんだよ。今度父さん母さんにも 分けてあげるよ」
「ほう。それは楽しみだね」
「すまないねえ直人」
俺たちはその晩、遅くまで話をしていた。そして久しぶりに実家に泊まった。
次の日の朝
「じゃあまた来るよ。今度来るときは友達をたくさん連れてくるよ」
「待ってるぞい」
「体に気をつけるんだよ」
みんなが心配してるといけないので明日一旦戻ることに決めた。
自分の家の中に転移門を作る。これでいつでも自由に来ることができる。
次の日、俺は日本の家から異世界の自分の家へ転移して帰っていった。




