第197話 更に過去へ
「今度は私がやってみます。みんなはルームに入っていてください」
「はい、大魔王様」
もといたナチュラルリッチタウンを思い出す。あの酒場にいた時間を思い出す。
「転移!」
私はまばゆい光に包まれた。着いたところは・・・ジャングルだった。
「なぜだ!なんで戻れない?」
酒は飲んでないし、頭はスッキリしているし、体調もいい。分からない。最後に目を開けて景色を見たのがいけなかったかな?
「うわー!なんだこいつらは」
もう一回転移したいのだが小さい獣がたくさん私の周りを移動してくる。これは何だ?何かから逃げているのか?
その後ろから大きな魔獣が走って私の方へ突っ込んできた。
「グラビティキック!」
さすがに大きくてこれだけでは止まらない。だが勢いは止めたぞ。更ににパンチやキックをぶちかます。
相手は5メートルはある四足のネコ科の魔獣のようだ。まだ、戦うつもりのようだ。私は素手で魔獣を屈服させるつもりだ。
私は少しだけ殺気を放って相手の魔獣を見つめる。魔獣はどうやら動けないようだ。
「これ以上やるなら少し本気になるけどいいのかな」
「いえあなた様に従います。部下にしてくださいグルル」
「うむ。考えておこう。お前はこの辺を治める者か。名は何と言う」
「私はルーレといいますグルル」
「この辺りに人間は住んでいるか」
「はいこの東の方に行くとたくさんいますグルル」
「誰が納めているかわかるか」
「いえ人間のことはよくわかりませんグルル」
「ルーレのような魔獣はまだまだたくさんいるのか」
「はい、私は山を10個ほど治めています」
「そうか分かった。ちょっと怪我をしているな。治しておこう。エクストラヒール」
「ありがとうございますグルル」
今がいつの時代なのか、それだけは確かめに行くか。みんなをルームから出して 目的を伝える。
「すまないな。私も失敗してしまったようだ。ここはいつの時代だかを調べたい」
「わかりました。私たちは一緒に行った方がいいですか?それともここで待ちましょうか」
「一緒に行きましょう。多分もう誰にも引けを取らないと思うから」
「分かりましたママ」
「私に乗って行ってください。人間の住むところまで案内しますグルル」
「ありがとう」
「大魔王様私も乗せてくださいよ」
「分かったわ」
ミスラちゃんを自分の前に乗せて抱っこしている。
「大魔王様!」
「どうしたの?」
「お、おっぱいが背中に当たって気持ちいいです」
「え、しようがないじゃない。魔獣の上だし、しっかり掴んでないと落ちてしまうもの」
ルーレに乗ること30分人間の町に着いたようだ。町並みは今までとあまり変わりはないようだ。時代的にもそんなにずれてないのかな。
「このまま町に入って大丈夫ですかグルル」
「いいんじゃない。手を出してくるようなおバカが減るでしょう」
「わかりましたグルル」
「もし門番の人。ちょっと物を尋ねたいん・・・だけど・・・」
語りかけている途中で逃げてしまった。この魔獣はそんなに怖いのかな。
しようがない。魔獣から降りて自分で聞いてくるか。
「あ、大魔王様の手を煩わせるわけにはいきません。私が聞いてきますよ」
「え、大丈夫なの?捕虜になったりしないでね」
「分かってますって」
20分後
「お前たちが不法侵入者か」
ミスラちゃんは捕まっていた。全く何やってんだか。
「不法侵入者?ちょっと町に寄るのもだめなのか」
「この城塞都市セントラルは入れる日が決まっている。したがってそれ以外は不法侵入になる」
「なるほどね。それじゃあすぐに出ていきます。その子を返してください」
「それは出来ん。お前たちを含めてみな捕縛だ」
「知らずに入ったのでそこは許してもらえませんか」
「だめだ」
「どうしても?」
「どうしてもだめだ!」
「それじゃあ仕方がない。歯向かわせてもらいます。死んでもいい人からかかって来なさい」
相手の装備は剣や槍くらいだ。特別変わったところはない。
「ブルー!ちょっと素手で相手をしてあげなさい」
「はいママ」
バシ!ビシ!バシ!ビシ!ドン!ドン!バキ!バキ!
8人いた兵隊たちは全員倒れていた。
「今のうちにここを離れますよ」
「はいママ」
都市ごとに治めているのかな。国とかいう概念はないのかしら。これは思ったより昔に来たのかもしれない。
「他の都市に行ってみましょう」
ルーレを含めみんなをルームに入れてフライで飛んでいく。しばらくすると他の都市が見えてきた。
「今度は私が行ってきます」
「みんなはここで待っていてください」
「分かったよママ」
「旅の者です。この町には入れますか?」
「税金を払えば入れるぞ」
「ありがとう」
さっそくみんなを呼んで都市に入れてもらう。ルーレには外で待機させている。
「どこかお店に入りましょう。みんな探して来てね」
「はーいママ」
金塊を両替してくれるかな?おお両替商があるではないか。
ここで両替をして増やしてみんなに必要な物を買わせよう。
「これは良質な金塊ですな。金貨1000枚でどうですか」
「銀貨も入れてください」
「分かりました」
これでよし。みんなはどこかな。集まっているから大体決まったようね。あれー女の子が3人足らない?!ナンバでもされたかしら。
「みんな食事にしましょう。好きなものを頼んでね」
「はーい」
「3人足らないからちょっと見てきますね」
「ああ、みんなは食べていてね。グリーン、イエロー食べ終わったらこのお金で勘定を払ってね」
「分かりましたママ」
裏通りに行ってみるとうちの3人の娘たちとあらくれた男がもめていた。
「このガキどもはおれんところの奴隷だ。どうしようと俺の勝手だ」
「もうへとへとで荷物を運べやしない。かわいそうだわ!」
「じゃあお前らが運んでくれるのか」
「おう、いいわよ。だからお前も手伝ってね」
「なんで俺が運ばなきゃならんのだ」
「だってあんたの荷物なんだし、あんたも運ぶのは当然だろう」
「あのな!俺は主人でこいつらは奴隷!俺は運ばない。こいつらが運ぶ!」
「お前そんな事を言っているとこいつらに恨まれるぞ」
「そうだ。うちのママは優しいぞ」
「子供には優しくした方がいいぞ」
「お前らなんでたった3人でこんな重い物が運べるんだ!」
「鍛えてるからな」
うーん、これなら大丈夫かな。後で褒めてやろう。
さっきのお食事所で聞いたが今は魔国になる前の小国家の前段階くらいのようだ。
アスモデウスのいた時代からまた100年くらい前のようだ。帰還方法についてもっとよく考えねばならんな。