第196話 リリスに再会
「たった半日足らずで砦を二つも落とすとはお主凄まじいな」
「いやー今回のは当たりでした。良い訓練になりました。礼を言います」
「これからどうするのだ。どこか行く当てはあるのか」
「帰りたい場所はあリます。だがうまく帰れるかどうかはわかりません。まあやってみるだけです」
「うん、そうか。よきかな大魔王ナオ」
「あと200年もするとあなたの前に二本の剣を持った少年が現れるでしょう。その時は相手をしてやってください。では、さようなら」
「嵐のような女だったな」
格好つけてアスモデウスの前から立ち去ってきたが、はっきり言って帰れる自信は全くない。
だがこの時代でも私はもう一ヶ所だけ行きたいところがある。それはリリスのところだ。
いかにあの女が妖怪じみていても200年前だったら、まだ可愛いところがあるかもしれない。
ちょっと様子を見に行ってみようと思う。その前にこの子たちにご褒美をあげないといけないな。さて何がいいか。
「みんな今回はよく頑張りました。よって好きなものをご褒美にあげたいと思います。何がいいですか」
「私は魔法を教えて欲しいです。遠くから攻撃ができるから魔法があると便利です」
「なるほどね」
「俺は丈夫な剣が欲しいです。拾った剣は途中で折れてしまったし、相手から奪った剣も途中で折れてしまったからです」
「うん。なるほど」
「私はもう少し丈夫な防具が欲しいです。拾ったやつは途中でみんな砕けてしまったので」
「なるほどなるほど」
特に他に欲しいものはないようなのでこの三つの願いを叶えるようにした。
武器や防具はミスリルで作ることにした。前に魔国を旅した時に生成したものがたくさん残っているのでそれを使うことにした。
さすがに全部作るにはコピーを使っても半日ぐらいかかった。
昼食をとって午後からはみんなに魔法を教えることにした。覚えが良く1種類ならほとんどもの者が覚えることができた。
「そうだ。ミスラちゃんは何か欲しいものはないの?」
「私の場合は欲しい物と言うか、できるようになりたいことなので」
「なんだか言ってみなさい」
「魔力を増やしたいなーって思って。みんなを転移で運んだんですけど、すぐに疲れてしまって。15回目からはとてもきつかったから」
「それは訓練である程度は増やすことができるわ。レベルを上げても増えていくわ」
「はい、だから地道に努力していきます」
「前にも渡したけどとりあえず魔力の入る器を作ってあげるわ」
「ありがとうございます」
この日はこれで休みにしてゆっくりすることにした。
翌日の朝
「ちょっと私はあと一ヵ所だけ行きたいところがあります。みんなどうしますか」
「俺たちもママと一緒に行きたいです」
「もちろん私も行きます」
「そうですか。それじゃあちょっと遠くて円盤に乗って行くのでルームに入っていてください」
「「「はーい」」」
多分居るとしたらこの大陸の中心から南西の方角だと思う。俺が一番最初に治めたあの海沿いの地域かもしれない。
円盤で飛ぶこと1時間で前に自分が治めていたシードラゴン付近に着いた。
「町の手前で地上に降りるのでみんなは町見物でもしていてちょうだい。お昼にはどこかで一緒に昼食にしましょう」
「分かったわママ」
「ミスラちゃん、みんなを頼むわ」
「はーい」
200年前だが多分生まれていると思う。一体どこにいるんだろう。町の中心地を探してみよう。
いないいない気配が全くない。この辺じゃないのか。200年ぐらいは生きていると思ったんだが勘違いだったかな。
あれ?闘技場の方が騒がしい。闘技場では赤い髪の女の子が幻獣たちを相手に大暴れをしていた。
「ちょっとあんた達!出てきたのになんで私の言うこと聞かないのよ」
「それはあなたに我らを統べる力がないからだ」
「なんですって!人が一番気にしてることを」
「我は帰る」
ボン!ボン!ボン!ボン!
今目の前にいるのは間違いなくリリスだ。12、3歳ぐらいに見えるがきっと生まれて数年だと思う。
「お嬢さん随分有能なのね。幻獣を4体も呼び出せるなんて。おいくつなの?」
「あなた誰?」
「ああ、私は通りすがりの魔法戦士ナオと言います」
「魔法戦士?」
「はい。あなたは?」
「私はリリス。召喚術師で産まれて2週間よ」
すげー生まれてたった2週間で幻獣を呼び出せるなんて!あ、でもリリンもそんなような事やってたな。
「何か困っていたようだけど」
「これは私自身の問題よ。あなたには関係ないわ」
「あーそう。大変ね。頑張ってね」
まあリリスならこんなもんだろう。さてと行くかな。
「ん?殺気?」
ガイン!ガイン!ガンガンガンガンガンガンガンガンガン!
「突然どうしたの。あなた自身の問題じゃなかったの」
「いやこっちの方は相手がいないとできないんでね。ちょっとお相手願えるかな」
「いいですよ」
ガンガンガンガンガンガン!ガイン!ガイン!ガイン!
召喚されて一番最初に手を合わせした時を思い出すな。あの時より全くこっちの方が荒削りだがこれは確かにリリスだ。
私は剣速を早めて手数を多くしてリリスにプレッシャーをかける。彼女の力量がどんどん上がっていくのがわかる。やはり普通じゃなくこの人は天才だな。
「お前と手合せしていると私の腕が上がっていくのがわかる。すごいな」
「そうですか。もともとあなたに力があったのでしょう」
それから1時間ほど稽古をしてやっと終わりにすることができた。
「お前の実力底がしれんな」
「そんなことはありません。あなたよりちょっと長く生きてるだけですよ。 それじゃあこれで失礼しますね」
「ああ、ありがとう」
「今の気持ちで幻獣達に接したら多分 言うことを聞いてくれますよ」
「······」
さてリリスにも会えたしみんなを回収して元の地へ戻るか。
町へ行ってみると海の方が騒がしく大騒ぎになっていた。
「ママ大変だよ!海に怪物が現れて大騒ぎになっているよ」
「怪物?怪物っていったい何?」
私たちは急いで海岸まで走って行った。するとその海岸で暴れている大きなリヴァイアサンを見つけた。全長は30メートルぐらいだ。
しかしリヴァイアサンが召喚もされないのに何でこんなところにいるんだろう。理由もなく暴れるなんて考えられないな。
「ママあれを倒すのかい」
「いやあれは理由もなく暴れるようなものではない。何か理由があるんでしょう」
「ナオ様ナオ様!あの怪獣の背中に木が刺さってますよー」
「あーなるほど。だから暴れてたのか」
するとそこへどこからともなくリリスがやってきた。背中に飛び乗り木を抜こうとしている。
なかなか抜けなくてかなり苦労している。リリスは木とともに転移した。その後治癒魔法をかけてリヴァイアサンを癒していた。
「なるほどリリスがリヴァイアサンを使っていたのにはこんな出会いがあったのか」
「大魔王様あれは誰なんですか」
「あれは私の義理の母リリスだ」
「あの方が、やっぱりすごい方なんですね」
「うん。そうだね」
私たちは元の時間と土地へ戻るべく転移を試みる。