第193話 合成獣の成長と新しい環境
合成獣達に一般的な常識を教える役はミスラちゃんに任せたがちょっと心配なので覗きに行ってみることにした。
「みんなせっかく生まれてきたんだから楽しく生きなきゃ損よ!でもね。この世の中には守らなければならない約束がたくさんあるの。それを覚えてもらうわ」
「一体何を覚えるんだ?ミスラ姉」
「まず人族はやたらに殺しちゃいけないっていうこと」
「なんでだよ?美味いかもしれないのに」
「人族を襲ったら敵とみなされて皆に付け狙われるわ。そうしたらいくら強くてももたないわ」
「ふーん」
「あとは決まりを守っていればそうそう不都合なことはないわ」
「面倒だな」
「あなた達ももう少し人間に近づけば こんな心配はいらないんだけどもね」
「どうすれば近づけるんだ」
「それはナオ様に聞いた方がいいわ」
以外にもまともな事を言っていたのでびっくりした。
「ママ、ミスラ姉が人間に近づけば心配がいらなくなるって言っていたぞ。どうすれば近づけるんだ」
「そうねー私の魔力でここまでになったのだから魔力かな?いや血の方がいいかな?」
「ママ人間にして」
「やったことはないけど血をあげてみましょう」
人差し指を剣で傷つけて血を一滴垂らしてみた。するとトカゲ男はかなり人に近くなった。
手足にトカゲの爪と尻尾があるだけであとは人になった。これはすごい!
次のヘビ女は赤い髪の女になった。ただ尻尾があり多少ウロコのようなものが膝から下に残った。
蜘蛛女は背中から蜘蛛の足が少し出ていたが金髪の女性になった。
カマキリ男は緑色だがちょっと手足の長い人間になった。
3体の竜たちは一体がオス2体がメスだ。尻尾は残ったものの緑や青の髪を持つ人間になった。
「ママこれで私たちも人間になれたかな」
「見た目はもうほとんど人間と変わらないわね。後は中身の問題だけね」
「中身の問題?」
「そうさっきミスラちゃんに言われたことを覚えておきなさい」
「わかったよママ」
「ママ俺にもミスラ姉みたいな名前が欲しい」
「あたしも」
「私も」
「わかりました。考えておきましょう」
「「「うわーい!」」」
「そうだ。みんな人間になったのなら服を着ないといけないね。これを身につけておきなさい」
合成獣達に下着を身につけさせた。まあ大事なところだけ隠せてればいいだろう。
ルームを広げて43人が中で過ごせるようにした。そしてみんなにはルームに入っていてもらう。
「さてミスラちゃん。これで厄介ごとも全て終わったので元の世界に帰るとしましょう」
「私覚えていないんですけれどできるんでしょうか」
「いややらなければ!ずっとこんな過去でウロウロしてるわけにもいかないわ」
「そうですね。必ず戻りましょう」
「それじゃあ元いた場所元いた時間をちゃんとイメージしてね」
「わかりました」
「行くわよ!転移!」
あたりは眩い光に包まれて私たち二人は元の世界に戻れた。
はずだった。
「ちょっとミスラちゃん一体さっき何を考えていたの」
「いえちゃんとナチュラルリッチタウンのあのお店のことを考えていましたよ」
「じゃあ何でこんな大平原の真ん中にに来るわけ?」
「わかりません」
よく分からないわ。ただミスラちゃんができるんなら私にもできるはずだ。今度は私が中心でやってみよう。
なんか騒がしいと思ったら、よく見たらここは戦場じゃない。そのど真ん中に降り立ってしまった感じだ。なんてことだ。
しかしいったいどんな奴らが争っているんだろう。
山の方を見ると獣の皮を着たような連中が1000人ほど刀や槍を持って騒いでいた。
反対側の平地の方では 馬に乗ったこれは軍隊だな。それが一糸乱れぬ体型で今まさに攻め込もうとしている。
およそ騎兵が200はいる。その後に歩兵800が続いている。一体ここはいつの時代なんだろう。ちっともわからないわ。
とりあえずここにいたらまずいので逃げることにする。ミスラちゃんを連れて小高い丘の上まで走ることにした。
「この辺まで来れば大丈夫でしょう。ちょっと様子を伺ってみましょうね」
「なんだろう?部族同士の争いかしら」
両軍が激突した。最初は機動力のある騎兵の方が有利に戦いを進めていた。 しかし山側の部族が四足の巨大な魔獣を出したら騎兵達は浮き足立って形勢は逆転した。
「このままいくと山の方の部族が勝ちそうね。あの魔獣は強いわ」
「そうみたいですね」
「まあどっちが勝っても私たちには関係ない。ここがどこだか調べに行きましょう」
私は円盤を出してミスラちゃんと共に上空からここの土地を見てみることにした。
なんとここは魔国ではないか。魔国の中心あたり、なるほど私たちが住んでるナチュラルリッチタウンがあるあたりだ。
町がないところを見るとまた時間帯が違うようだ。いったい今はいつなんだろう。情報収集が必要だな。
地上へ戻ってみると戦の勝負はついていた。山の方の部族のが勝ったようだ。
私たちは一番近い町の方へ行ってみることにした。町の手前で降りて歩いて町を目指す。
するとルームの合成獣達が外へ出たいと騒ぎ出した。しょうがないなぁこの辺の山で遊ばせるか。ミスラちゃんをつけておけばなんとかなるかな。
「私は町へ偵察に行ってくるのでこの子達をお願いします。いいですね!お·ね·え·さ·ん」
「わ、わ、わ、わかりましたー」
「みんな今お昼だから夕方頃までには戻るのでここら辺で遊んでいてちょうだい。ご飯置いてくので適当に調理して食べること。あとミスラねえさんの言うことをよく聞くように」
「「「はーい」」」
ストレイジにある魔物の肉3頭ばかり置いていく。調味料はミスラちゃんに渡しておく。
そして私は町へ入る。まずここは誰が治めているのか調べないと。
「町の名はローレンスと言うのか。まずお昼にしましょう」
レストランのような店がある。ここにしよう。
店に入るといかつい男たちの視線を浴びた。うわーむさ苦しい。剣をさげているものが多くいるので今戦争中なのかな。
「何か食べ物をちょうだい。あと適当に飲み物も」
「ようよう嬢ちゃん。ここはあんたのような人が来るとこじゃねーぜ」
「どんな人が来るところなんだい」
「ここは俺たちサルガタナス軍ご用達の店だ」
「サルガタナス?どっかで聞いたわね」
「そうだろう、そうだろう。サルガタナス様の名はあちこちに鳴り響いてるからな」
「ということはあんたたちはアスタロトの部下か」
「アスタロト?誰だいそりゃ」
「いやいいんだ。なるほどな。それでみんな誰と戦ってるんだい?」
「ああ、アスモデウスって奴だ。山の蛮族だ」
「ふーん。あんたたちも大変だね」
どうやら200年ぐらい前に来てしまったようだな。前よりひどいじゃないか どうしよう。
「どうだ嬢ちゃんうちの軍につかないか。いい思いをさせてやるぞ」
「あんたたちが強いならモグモグ、行ってもいいよ」
「おおそれなら心配いらねぇぞ。俺たちは相当強いぞ」
「それじゃあ試させてよ。私と立ち会って一本取れたらついて行ってやるよ」
「ほう嬢ちゃんも剣を下げてるからなぁ。よしそれじゃあ近くに広場があるからそこで勝負しようぜ」
「いいよ」
ガインガインガイン!ドス!
「ぐはぁ!」
「兵隊さん。こんな小娘に負けてそんなんで勝てるの?」
「くそう!次は俺だ!」
ガインガインガイン!ボカ!
「ぐえー」
「なんなんだこいつは?こんな強い女見たことないぞ!」
「一体何者なんだ!」
「もういいです。大体分かりましたので。それじゃあ失礼しますね」
「ま待ってくれ。俺達のボスのところへ来て会ってもらえないだろうか。是非あなたを我が軍に迎え入れたい」
「いや結構です。兵隊さんがこれじゃあ、ボスの方もどうなんでしょうね。それでは失礼します」
ここはどっちかって言うと敵陣だな。まだアスモデウスの方を頼った方が良さそうだ。早くみんなのところへ帰ろう。
町の近くで野営をしている一団が軍隊らしき者たちに文句をつけられていた。
「誰に断ってこんなところで野営してるんだ」
「別に誰にも断っていませんけど。迷惑はかけていませんよね」
「今は戦争中だ!食い物が足らなくて困っているんだぞ。それをこんなところで野営などと。余ってるなら軍に差し出せ!」
「えーそんなー!」
これはただでは済みそうにないな。さてどうしたもんかな。