第147話 智将アテナ
「んー。はーはっはははははアレースなんだその姿は?自慢の胸はどうした」
「ふん。それでもお前よりはマシだ」
「んー。何を言っている。よく見ろよく!ほれほれ」
2人はお互い向き合って胸を突き出して大きさを比べあっている。
こいつらは友達同士と言いながら罵り合ってばかりいるな。大丈夫なのか。
「まあまあお2人とも久しぶりに会って積もる話もあるでしょう。どうぞこれで何か美味いものでも食べてきてください」
そう言って俺は2人に金貨100枚ずつを渡す。
「こんなにもらっていいのか。すまんな」
「んー悪いな」
「んーアレース金返せ」
「ふん。知らん!」
罵り合いながらも2人は繁華街の方へ一緒に歩いて行った。なんだかんだ言っても友達なんだな一緒に行くんだから。
そうこうやってるうちにアベイルから連絡が入った。
「プミー見つけました!大魔王様アレースさんを見つけたところから東へ5キロメートルのところに洞窟があります。その中に棺を発見しました」
「そうか、よくやったなアベイル。ご苦労様」
「それが大魔王様、棺が1個ではなくて30個はあるんですけれども」
「何?30?どういうことだ。すぐ行く。待っていてくれ」
俺はルイーネとアイに声をかけてすぐさま転移門で移動する。
「これがそうか」
「プミー大魔王様どうしますか?」
「ボス今日はもう一戦してますし、やめといた方がいいんじゃないですか」
「なあに今日は特に血を流してわけでもない。全然平気だよ。その真ん中のでかいのだけ開けてみよう」
3人で力を合わせて扉を開けてみる。例によって埃が舞い立つ。離れてしばらく見ていると人が出てきた。
赤い髪のショートヘアで緑の目、いかにも賢そうな顔をした女性が出てきた。長い剣を腰に下げている。
「やあ、こんにちは。君が扉を開けてくれたのかい?ありがとう」
「え?」
あまりにも今までと違った反応に俺は思わず驚きの声を出してしまった。
「どうかしましたか」
「いえ、あなたの反応が今までの2人と全く違っていたのでちょっとびっくりしてしまっただけです」
「2人とは誰のことですか」
「アレースさんとアルテミスさんです」
「ということはあなたはあの2人に勝ったのですね。すごいですね」
「なんでそんなことが分かるんですか」
「だってあの2人があなたを見たら戦うに決まってるじゃないですか。そしてあなたがここにいるということはあの2人が負けたということでしょう」
すごいアテナさん頭がいい。びっくりしてしまった。
「確かに勝負には勝ちましたけどもギリギリでした。だけど俺の国に滞在してもらっています」
「そうですか。あなたは優しいんですね」
「いえ、そんなことはないと思いますが」
「この子たちを起こしてしまっていいでしょうか。いきなり襲ったりしないから大丈夫ですよ」
「はいどうぞ」
彼女が手を振り上げると小さな棺の扉が全部舞い上がった。そして中から赤い人型のゴーレムのようなものが出てきた。
「これは人工生命体の一種ですか」
「まあ、そんなようなものですよ」
「さあみんなおいで」
彼女の掛け声とともに赤い人工生命体は小さくなって彼女の体に張り付いていった。
「まるで鎧のようですね」
「そういう役目もしていますね」
見てわかる。かなり強力な人工生命体だ。それが30もいるなんて。
しかも彼女は剣の達人。絶対に相手にしたくないな。
「あなたも私と戦おうというのではないですか」
「いえ私は意味のない戦いはしませんのでガシャ。それにあの2人が負けたということは、私も同レベルですからやらなくてもある程度分かりますよガシャガシャ」
「そうですか。わかりました」
俺は彼女を自分の国に案内することにした転移門を使って移動をする。1分もかからずに戻ってくることができた。
「この転移門というのは便利ですね。長距離をこんな短時間で移動できるなんてガシャガシャ」
「そうですね。便利この上ないです」
ナチュラルリッチタウンに到着した。
「ここが私の国の首都です。アレースさんとアルテミスさんは今食事をしてると思いますよ」
繁華街の方が何か騒がしくなっている。なんだろう嫌な予感がする。
「んーお前なあ。あれだけ金貨をもらったんだから借金を私に少しは返すべきだろう」
「何を言ってるんだ。大魔王はうまいものでも食ってこいと言っただけではないか」
2人とも昼間っから飲んでるようで声がかなり大きくなっている。冗談じゃないあの2人がここで争ったら町がめちゃくちゃになってしまう。
「お2人ともご機嫌ですね。お仲間をお連れしましたよ」
「アテナじゃないか。久しぶりだな」
「何をやっているんだお前たちはガシャガシャ」
「んー出たな。ガシャガシャ女!」
「どうです。場所を変えて飲み直しませんか。ついてきてください」
町中よりは家の方がましかな。自分の部屋に3人を連れて行く。
かなり広い部屋だからくつろげるだろう。故郷の酒ワインを出してみた。
「これは中々うまいな」
「んー飲みやすいね」
「これはおいしいですガシャ」
こうして4人で夜中まで飲み明かすのだった。