第146話 白銀のアルテミス
準備は万端だ。今日こそは探索に行くぞ。3人の従者たちと俺は転移門をくぐった。
この間アレースを見つけた島は小さいと言っても4人で調べるにしては広すぎる。
従って今回もアベイルに頑張ってもらう。分身して島に散らばり棺を探してもらう。
俺はアベイルに魔力を分け与える。100体ぐらいに分身して彼女は走って 行った。
「もうすぐ見つかるだろう」
「またあんな勝負をするんですかボス」
「たぶんそうなるな」
「危険すぎやしませんかマスター。あのアレースさんより弱いという保証はないのですし」
「···確かに」
その通りだ。アレースより弱いかもしれないがもっと強いかもしれない。アレースよりもっと凶暴なのかもしれない。
考えてるうちにアベイルから連絡が入った。アレースを見つけた時点から北におよそ5キロメートル。そこで同じような棺があったそうだ。
俺たちはすぐさまフライで飛んでその地点に行ってみた。確かに同じような棺が置いてある。
「それじゃあ開けてみますか」
ルイーネとアイと俺で棺を開ける。するとやはり干からびた人間が横たわっていた。
埃が舞い立つ。やはり5分ぐらいすると中から人間が起きだしてきた。
「んーあなた今私の恥ずかしい姿を見たでしょ!見たわよね!」
「あー恥ずかしいと言うか亡骸という感じでしたが」
出てきたのは膝まである銀髪のかわいい感じの女の子だった。緑の眼で背中には白い羽が一対あった。そして白い弓を持っていた。
「んー勝負よ!」
「ひょっとしてあなたは白銀のアルテミスさんでは」
「んーなんであなたは私の名前を知っているの」
「それは金色のアレースさんに聞いたからですよ」
「んーーーアレース!あのバカは生きていたのね」
「あの何か怒ってます?アレースさんとはお友達じゃないんですか」
「んーそういう言い方もあるわね。あのアホは私に借金を残してどっかに消えてしまったのよ」
「そうだったんですか。それでそんなに怒ってるんですね。アレースさんならいるところに案内できますよ」
「んーそれは本当か。ぜひ頼む」
この調子だと戦わなくても済みそうだな。話のわかる人でよかった。
「んーそう言えば何かしようとしていたのではなかったかな?」
「気のせいですよ」
「んー思い出した! お前は私の恥ずかしい姿をじっくり見たくせに戦いを拒否するなんてできるわけがないだろう」
「恥ずかしいってミイラになってただけじゃないですか。裸でもないのに」
「んーいや屍を晒す方が裸より恥ずかしいぞ」
「そんなもんですかね」
「んーところでお前は誰なんだ」
「今頃それですか。俺は大魔王ナオトと言います」
「んー大魔王ナオト!勝負だ」
「勝負ってどうやってやるんですか。私の武器は剣ですよ。あなたは弓なんでしょう」
「んーそれはお前があの向こうの木かところに立つ。私はここからお前を狙い撃つ。途中であたったらお前の負け。近づいてから当たってもお前の負け」
「それじゃ俺の勝ちがないじゃないですか」
要するに矢が当たる前に俺がアルテミスを切れば勝てるということだ。
「俺は魔法も使えるぞ。いいんだな使っても」
「んーかまわないよ」
とりあえず木の後ろに隠れて様子を見るか。弓矢だったら裏に入れば届かないだろうしな。
すると直径1メートルはある大木を貫いて矢が現れた時にはびっくりした。
「なんじゃこりゃー!」
びっくりした!この木を貫くとはなんていう威力だ。
俺はすぐさまと飛び出して魔法を放つ。
「エクスプロージョントルネード!」
魔法に向けてアルテミスは弓を放ってきた。なんとそれが魔法に当たったら魔法が打ち消されたのだ。
「何ー!」
彼女は次々と矢を放ってくる。どうやら矢はつがえなくてもいいようだ。かまえれば、引けば矢が発射できるようだ!
「なんという恐ろしい武器だ!あれじゃあ矢と矢の間にほとんど時間がかからないじゃないか」
俺は魔法をウィンドカッターに変えて四方からアルテミスを狙う。
彼女は回転しながら弓を放ちウインドカッターを全て消した。
「なるほどね」
「んーなかなかやるな!」
俺は小転移して彼女の脇へ出る。剣をふるったが途中で空気の壁のようなものに阻まれてアルテミスを切ることはできなかった。
アルテミスは回転して弓を連射する。俺は小転移して逃げるが着地した先に矢が飛んできた。
バリアーで防ぐ!矢は俺の腹に当たっていた。治療したいがそんな暇はない。すぐさままた転移で飛ぶ。
なんて連射だ。これじゃ攻めようにも攻めれない。近くに行っても切れないし。
あ、そうだ!俺はアルテミスの回りに結界を張りウオーターストームを唱える。
彼女はウォーターストームを弓で破壊していくが破壊されても水は残る。
俺は動きながらウォーターストー厶を打ちまくる。すると彼女の周りに水が溜まっていった。
ほどなく彼女全体を水が被ってしまった。空気の壁のようなものがあって 彼女は息をすることはできるようだ。
水の中では弓は放てまい。いや撃ってきた!しかし威力はずいぶん落ちている!
俺は真上からグラビティを連発する。 だんだん彼女の周りの空間は小さくなっていった。
「んー降参よ。私の負けだわ」
「ふう!やっと終わったか」
俺は腹の矢を抜いて治療をする。
「エクストラヒール!」
今回は軽傷で済んでよかった。俺は彼女の周りの結界を解いて水の壁をなくしてやった。
「んー初めて負けたわ!こんな男がいるのね。さあ好きになさい」
「いや別にどうもしませんけど」
「んー失礼な男ね。負けた戦士は勝った者の言いなりになるのが普通だわ。まして女が男に負けたのなら慰み者にされるのが普通でしょう?」
「いや、いいですよ。でも、そんなに何か言って欲しいなら言います。俺の町に住んでください」
「んー分かったわ」
俺はアルテミスさんを連れてナチュラルリッチタウンへ帰ることにした。アベイルはまだ探索をしているがもうじき結果も出るだろう。