第145話 準備と見回り
あそこまで拮抗した勝負をしたのは初めてだった。魔力はまだ余っていたが 出血が激しくはっきり言って危なかった。
銀翼のアルテミス?知将アテナ?アレースの友達ならおそらく戦闘狂に違いない。
そんなのがまだまだ出てくるかもしれないのだ。どうしたもんかな。
だが待てよ。俺は今まで自分と互角に戦える強者を求めていたはずだ。
それが実際出てきて戦ってみたらどうだ。この弱気な今の俺は?これは昔の俺だ!こちらの世界に来る前の俺の姿だ!
だったらここから頑張らなければ進歩したことにはならないじゃないか!
探索を続けるとして···そうだな···ある程度思い残すことがないようにしておかんとな。
俺はまずネフィの所に行く。前に約束してた子作りについて実行することにした。
「ネフィちょっといいか」
「はあん。あなたはもういいんですか?大丈夫ですか?」
「心配かけたな。もう大丈夫だ。それより前に約束した子供の件だがな···今日用意をしてきたのでお願いしたい」
「え!本当ですか?わかりました」
ネフィの部屋へ行き作ってきた腕輪を見せる。
「これに2人の血をたらせば完成だよ」
「そうなんですか」
俺たちは早速実行する。これで約束の一つを果たしたぞ。
「それじゃあこの腕輪はネフィが持っててくれ」
「あん。はい。ありがとうございます。嬉しいです」
「どうしたんだそんなうらめしそうな顔して」
「ああん。いえあのー魔族式はあっけないなーと思って。人間式がいいなーと思って」
「あーそういうことか」
俺はあと2時間ほどネフィとしっかり愛し合った。
その後俺はアレースの所へ行って今の体に合った武器を作ってやることにした。
「いやーアレースさん調子はどうだい」
「体の調子はいいぞ。パワーが足らないだけだ。スピードはだんだんついてきた」
「あれ、あっちの方に転がってるのは シャーロットじゃないか?戦ったのか」
「あーあの奥方はなかなか強いな。おかげでこちらは早く体になれることができたよ」
「おーい。シャーロット!大丈夫かー」
「だ、大丈夫です。疲れただけですわ」
「今の体にその槍は合わんだろう。もう少し軽いのを作ろうか」
「いや重さはこのままでいいのだが、にぎりが太くてな。もう少し細いのがあると便利だな」
「わかった。それじゃあ作ってやるよ」
俺はアレースの槍を借りて重さを頭に入れ、ミスリルで槍を作ってやることにした。
槍は1時間ほどで完成した。我ながらなかなかいいできた。
「大魔王はすごいな。何でもできるのだな」
「まあ試しに使ってみてくれ。合わないようならまた調整するから」
「ありがとう。助かるよ」
さあてやることも終わったしそろそろ探索に行ってみるかな。従者の3人に声をかける。
「ボスもう行くんですか」
「マスター大丈夫なんですか?まだあんまり時間が経ってないですよ」
「プミー」
「何。午後からだけど大丈夫さ」
「血液の代わりになる物あるんですか?また血が足らなくなったら大変ですよ」
「なるほど。それもそうだな」
俺の場合外から血液をかけてもらえればそれなりに吸収してしまうので血液型などは関係がない。
つまり新鮮な血があればいーのだ。問題は入れ物だな。
バケツじゃ駄目だろうしな?お茶碗でも駄目だし。やっぱり無菌のものがいいんだろうなあ。
そうだ普通の入れ物に魔力でコーティングしてその中に入れれば綺麗なまま保存できるぞ。
俺は2リットルの入れ物を10個ばかり作った。そして魔力でコーティングをする。
えーと、あとは血を分けてもらえばいいんだけど。そうだヴァルキリーの お姉さん達に分けてもらおう。
「いいですよ!大魔王様のためなら わたしの血、全部使ってください!」
「いや、そんなことしたら死んじゃうから。少しでいいんだよ少しで。この入れ物くらいでいいんだよ」
と言って100ccほどの箱を出してみせる。
血を入れ終わった娘にはヒールをかけてやる。
「ヒール!」
「ヒール!」
「ヒール!」
こうして1時間ほどで血液を集めることができた。2リットル10本ぶんで20リットルだ。これだけあれば大丈夫だ。
「みんなありがとう。助かったよ」
俺はみんなに1キロぐらいの金塊を一つずつあげることにした。
「大魔王様のために役に立てたわ」
「お役に立てて嬉しいです!」
「あの大魔王様!私はお給料たくさんもらってるのでこの金塊はお返しします。かわりにギューしてください!」
「ギューってなんだい?」
彼女は俺の胸に飛び込んで来る。ああ、抱きしめればいいのか。
「わかった!だが金塊ももらえ」
「はい。あ、あ〜ん」
もちろん俺は魔力を流し込んでやる。たぶん快楽の絶頂だろう。
「こらこらそこ服を脱ぐんじゃない」
「そこ!全裸は禁止だぞ」
こうして俺は魔力を込めて彼女たちを 抱きしめる。200人もいるので1時間かかった。
みんな倒れているが気持ち良さそうな顔してるのでまあいいか。そのうち起きるだろう。
「お前は一体何をやっているのだ?大魔王というのも大変だな」
そう言ってアレースが通り過ぎていった。そうそういろいろと大変なんだよ大魔王は。
「もう日もだいぶ片むききましたよ。今日はやめといたほうがいいんじゃないですか?ボス」
「さすがに時間がなさすぎるかな。明日にするか」
従者たちを解散し散歩することにした。
町の西にはウサギ族の子供たちが住んでいる。ちょっと様子を見てくるか。
あれみんな何か一回り大きくなってるような気がする。
「大魔王様こんにちは。すごいんですよここは。住んでるだけで前の所よりずっと早く大きくなれるんです」
「それはよかったね」
まあ確かに土地自体にも栄養はあるけど食べ物がいいのだろうな。
男の子は背が大きくなり女の子は体がプリンプリンしてきた。もう15歳くらいに見える。こりゃ人数が増えるのも時間の問題かな。
彼らには広大な土地で野菜を作ってもらっている。もちろん自分たちが食べるのだが余った分は町の方に売りに出しているのだ。
ミツバチ族も余った蜜やローヤルゼリーは売りに出している。
特にお金が必要なわけではないがあった方が便利なものはあるのでお金を稼いで物を買うということをしてもらっている。
「どうやらどこも順調にうまくいってるようだな」
明日は島の探索に行けるだろう。