第137話 幻獣島
ミツバチ族の件が一段落したので俺は 朝リリムに魔力をあげるとすぐに冒険に出発することにした。
いつものように従者達を連れて行く。 神国の東海岸に飛びその後虫島に飛ぶ。
その後は行ったことがないので円盤に乗って次の島に近づいた。今度の島は前よりは大きい。約50万平方キロメートルはあるだろう。
最初に魔国に来て治めた領地と同じぐらいだ。
「今度の島はやっぱり緑ばっかりだな。町がある様子はないな」
「そのようですねマスター」
今度の島には火山がいくつかある。山もあるしジャングルもある。だが人は住んでるようには見えない。動物はいるようだ。
みんなで円盤を降りて島を探索し始めた。
「植物は虫島と似てるところがあるが この島には大きな花はないな」
「ボス、強力な動物同士が争っていますよ」
「何でしょうねあれは。マスターどっかで見たことがありますが」
「あれはリリンが呼び出す幻獣じゃないかな。確か名前はフェンちゃん!」
5メートル位のフェンリルだ。リリンが呼び出すものより小さい。
相手はやはり5メートル位のグリフォンだ。
お互いしきりに噛み合ってずっと格闘している。
「呼び出されるのは別物で、これはこれで特に仲が良いわけではないんだな」
巻き添えくったら面倒なので違うところを探してみることにした。
かなり離れた所でコカトリスとサンダーバードが戦っていた。
「単なる縄張り争いかな。それとも戦闘狂なのかな。よくは分からんがもう少し見てみよう」
ちょっと離れたところでヘルハウンドとバイコーンが戦っていた。
「こりゃ幻獣島だな。よくわからんがいろんなところで種類の違うもの同士が戦っている」
「お、恐ろしい島ですね。早く次に行きましょう。大魔王様」
「そうだな。行くか」
その時いきなり上空から声をかけられた。
「ブホ。お前強そうだな。俺と戦え!」
「なんだ?」
上空から声をかけてきたのは50メートルはあるウロボロスだった。
「いやだね!そんなことしたら疲れるだろうが」
「ブホ。そういうな。お前が勝ったら俺の宝物をやろう。だが俺が勝ったらその隣にいる龍を俺にくれ」
「なにー!アイスちゃんがほしいのか?」
「ブホ。行くぞ!」
おいおいこっちはまだ承諾してないっていうのに、さっさと突っ込んでくるとはよっぽどアイスちゃんが気に入ったんだな。
「この野郎!そう簡単にはいくか。お前たちは円盤で待ってろ。ちょっとこいつと遊んでから行く」
「「「分かりました」」」
俺は飛び上がって相手のウロボロスをまじまじと見る。黄色で立派な龍だ。
とりあえず挨拶代わりにサンダーストームを食らわせる。2発!3発!4発!5発!
「ぷほー、なかなかやるじゃない」
この野郎あんまり効いてねえな。なかなかの頑丈さだ。雷はダメらしい。
相手のブレスが来る。こいつは雷をはけるのか!
「お前こそやるじゃない」
俺はエクスプロージョンを連発してエクスプロージョントルネードを作り出す。
「くらえ!」
ドッガーン!ものすごい音と共に大爆発が起こる。
「さすがにちょっとは効いたかな」
相手はきりもみになって堕ちていく。しかしなんと途中から持ち直してまた浮かび上がってきた。
「ブホーまだまだ!」
「へー頑丈だなお前」
相手の尾から針が飛んでくる。小転移でかわす。
真上からグラビティを撃ちまくり地面へ落とす。
さらに四つの足に槍を投げて身動きできなくしてやった。
「どうだまいったか」
「ブフォブフォ···まだ···まだ」
しようがない。頭の方へ降りて連続パンチをおみまいする。
ガン!ドン!ゴン!
「······」
「さすがに気絶したか。これで終わりだな」
俺は4本の槍を抜いてウロボロスの傷を癒してやる。
「エクストラヒール!」
「ブフォ!しまった。負けたのか。うーん残念!惜しいことをしたなー。かわいい娘だったのに」
「あれは俺の従者だ。お前にはやらんぞ。負けたんだから立ち去れ」
「仕方がない。これをやろう」
意外と律儀な奴だ。ウロボロスは口の中から白いカプセルのようなものを吐き出した。
「なんだこれは」
「これは俺が昔戦った相手だ。あんまりやばかったので飲み込んで保管してた。死んではいないはずだ」
「何でそんなもんがお宝なんだよ」
「お前は俺と同じ匂いがする。女好きだろう?」
「嫌いじゃないかな。それより聞きたいことがある。ここはお前のような生き物がたくさんいるのか。他の島もみんなそうなのか」
「俺たち幻獣のすみかさ。ここの他に幾つかの島に散らばっている」
「そうか」
「なあ、あっちの譲ちゃんくれんか」
「やらん!」
「はっははは、ではまたな」
ウロボロスは飛び去って行った。このカプセルみたいな物どうするか?
奴は生きていると言ったが。
「なんかよく見ると生物の組織のような感じもするな。早めに開けた方がいいかな」
入れ物は意外と簡単に壊すことができた。中から本当に人間が出てきた。
12歳位の裸の女の子だ。一緒に剣と盾が入っていた。
でもこの姿はどっかで見たことがあるな。あー、うちのバイモンさんと同じなんだ。
少女は妖精族だった。いつの時代の娘か分からないが何でこんなちっちゃい子が戦っていたんだろう。
「ん、ここはどこだ?」
「ここは幻獣の島だよ」
「私は確かウロボロスと戦っていたのでは」
「あーそれでやつに飲み込まれて何年たったかわからないが今ここで蘇ったわけだ」
「なんだと。くっ私は負けたのか」
「なんで君みたいな子供が戦ってたんだい」
「子供?私はれっきとした大人の戦士だ。子供などではないぞ」
「自分の姿をよく見てみろ。どう見ても子供だろうが」
「キャーなんで裸なの?見ないで!」
俺は反対を向いて剣と盾を彼女に返す。
「服はウロボロスの中で溶けちゃったようだな。この二つは無事だったようだ」
「ああ、ありがとう」
ストレイジから布を取り出して彼女に渡す。色々事情を聞いてみたがどうやら本当は大人だったようだ。
ウロボロスに飲み込まれていた時に服は溶けてしまいエネルギーを吸われて子供になったというところかな。
「あなたはあのウロボロスに勝ったのか」
「ああ、撃退してあなたをもらった」
「あなたがいつの時代の人かは分からないが家にも妖精族の嫁さんがいる。とりあえずこれからどうするか会って話してみたらどうだ?」
「妖精族がいるのですか?」
「確認しているだけでも3箇所で100人以上いると思う」
「そんなにたくさん···」
「うちの施設にも十何人かは住んでいるよ」
「そうですか」
彼女はどうしたのか嬉しそうだった。やっぱり一族のために戦っていたのかな。
「魔力を吸われて小さくなったのなら俺の魔力でよければあげましょうか」
「いいのですか」
「構わないですよ。気持ちいいけど我慢してくださいね」
「え」
俺は魔力を流す。ウロボロスといい勝負をするような子なら多少強めにあげても大丈夫だろう。
「はぁ、はあ〜ん。こ、これは···ああ、もうらめぇ~」
気絶してしまったが元に戻ったようだ。20歳ぐらいのお姉さんになっている。
薄い金髪の長い髪、藍色の瞳のスレンダー美人。名前はエステルさんと言うそうだ。
島のことがある程度わかったので従者たちを連れて帰ることにした。