第124話 再戦
「ばっかやろう!!親衛隊が揃いも揃って全員負けるってのはどういうことだ!」
「そんなこと言ったって相手の方が強かったんですよ」
「そうですよ。あれは達人レベルですよ」
「相手は女で5連戦だったそうじゃないか」
「大体ラグエルさん、いなかったじゃないすか。どこ行ってたんすか」
「う、俺にも用はあるんだよ」
「再戦は申し込んでおきましたから また対戦の機会はありますよ」
「おのれー、突撃隊の連中も呼んで一泡吹かせてやる!」
国同士の転移門の設置はおあずけになったが貿易はすることでまとまった。
なので我が国の東の端の都市チョウカと西神国のラファエルの居城を結ぶ商業用の転移門を設置した。
あとは西神国内の転移門を設置した。中心都市と各村や町が自由に行き来できるようになった。
この作業は魔国でも行ったので一週間で蜘蛛の巣を張ったように完璧に終えることができた。
「すごいですね。この転移門は!便利な事この上ないです」
「喜んでもらえてよかったです。訓練の件はお願いしますね」
「はい。来るときには連絡を取ってください」
「わかりました」
「ラファエル様、魔王ナオト様にお願いがあるのですが」
「あなたは?」
「私は親衛隊長のラグエルと申します。ぜひ魔王様御一行に稽古をつけていただきたくお願いに参りました」
こいつは前にはいなかったな。隊長の留守中にやられたのでリベンジに来たわけか。
「いいですよ。最近平和で腕がなまってますからみんな喜びます」
「みんな親衛隊の隊長さんから稽古の申込みだよ」
「そうですか。いいですわね」
「いよっしゃー相手してやるぜ」
「今回はあたいもやるっすよ」
「リリンもするー」
「あん。それじゃあネフィもやります〜」
闘技場についたら、何やら雰囲気の違う連中が10人ほどいた。この国の突撃隊だそうだ。
野性味あふれる男たちだ。面白くなるかもね。
あちらは12人。こちらは6人。1人が2人を相手すればいい計算かな。
「魔王様。こちらは実践形式で構わないっすよ」
「それはどういうことだい?何でもありってことかい?」
「「「「はい!」」」」
「こちらは何でも構わないよ」
「なんでもありって言ったけど一対一だよ。リリン幻獣使っちゃだめだよ!」
「そうなのー!分かったのー」
どうやら一番手はリリンが行ったようだ。どうなるか楽しみだ。
「一番手リリンなのー」
「突撃隊!ダイエン」
突撃隊も大きな男が出てきた。三叉の槍を持っている。
「「お願いします」」
男が三又の槍で突っ込んでくるがリリンはそれを難なくかわす。
槍がいくつにも見えるようなスピードだがそれでもリリンには一撃も当たらない。
予想通りリリンの方は短検を使ってだがペシペシと相手に一撃を与え続けていた。
3分後両手が血まみれになっているダイエンがひざまずいていた。
さすがは突撃隊だ。両手が使えなくなってもまいったはしていない。
体当たりして突っ込んでくる。そこをかわしてリリンは風魔法で相手を吹き飛ばしている。
相手が倒れてしまったのでそこで終わりとした。
「見事な心構えだ。エクストラヒール」
俺はダイエンの治療をしてやった。
「す、すごいお方だ!ありがとうございます」
二番手はエレンミアが行くようだ。大鎌を持って実に楽しそうだ。
「エレンミアっす」
「突撃隊!アドラ」
今度は短剣使いのようだ。刃先に毒が塗ってある。
エレンミアは全身に風をまとっている。だから短剣を投げようが毒を飛ばそうが彼女には当たらない。
大鎌からは炎が漏れ出ている。
「「お願いします」」
アドラが短剣を矢継ぎ早に投げてくるがエレンミアには当たらない。
エレンミアの大鎌の攻撃が2回3回とかわされたが4回目にはアドラの左脇腹に突き刺さった。
「ぐはっ!捕まえた!」
「すごいっすね、ファイアーランス」
「ぐあああああ」
アドラは全身にファイアーランスを受けて火だるまになっていた。
すかさずエレンミアは大鎌で攻撃を加えようとするがアドラが倒れたのでそこで終わりになった。
すぐに火を消してエクストラヒールをかけてやる。どうやら大丈夫なようだ。
「凄まじいな。突撃隊の闘志も通用しない」
「うむ。すごい奥方たちだ」
3番手はシャーロットが行くようだ。
「シャーロットです」
「突撃隊!キリア」
今度の男は槍使いだ。
「「お願いします」」
シャーロットは大剣を軽々と振り相手に打ち込みをかけていく。
キリアも凄まじい槍さばきでそれに応戦している。
だがシャーロットは元々風使いだ。最近はウィンドカッターを飛ばすだけではなくて剣を操ることもできるようになった。
彼女の背中には剣が10本くらい浮いている。それが交互に攻撃をかけてくる。もちろん大剣の攻撃もある。
キリアは達人だが単純に手数で押し切られている。3分後には全身に剣が刺さり倒れていた。
俺は剣を抜き血止めをしてエクストラヒールをかける。どうやら大丈夫のようだ。
4番手はネフィが得意のハンマーを持って行く。
「あはん。ネフィです〜」
「突撃隊!セットル」
今度の男は剣士のようだ。体の各部に短剣がたくさん備えられている。おそらく投げてくるのだろう。
うちの嫁たちは色々な魔法をマスターしているので最初の頃とは違う。防御も完璧に近い。ネフィも体に風をまとっている。
「「お願いします」」
挨拶を同時にネフィが打って出た。ハンマーを矢継ぎ早に振り回す。
相手は受け太刀はしない。たぶん当たった瞬間に砕けるのがわかってるのだろう。
ハンマーの攻撃の間にネフィは蹴りを加えてくるが相手ももなかなか当たってはくれない。
セットルは短剣を投げてくるがネフィには当たらない。
ネフィは少し大きくなりハンマーの力を増していく。足からは重力魔法グラビティの効果が出ている。
セットルは後ろに吹き飛ぶようになり、ついにハンマーが左腕に当たる。
「ぐああー!」
すかさずネフィはグラビティで相手を上から押さえつけハンマーでとどめに行く。
「はい、そこまで!」
俺が蹴りでハンマーを抑えて終わりになる。
「エクサトラヒール!」
これで、大丈夫だろう。
「な、なんという強さだ。底がしれん」
「す、すごいな」
5番手はフレイムが出てきた。今日は何でもありなので彼女も魔法を使うと思う。
「フレイムだ。よろしくな」
「突撃隊!ミラリ」
この男は鞭使いのようだ。体術も使うのかな。
「「お願いします」」
ミラリの鞭がうなる。しかし、フレイムのガントレットからは拳を振るうたびに火山弾のようなファイアーボールが無数に飛んでくる。
あっと言う間に鞭は溶けてしまった。ミラリは蹴りや拳で応戦してくる。
すでに体のあちこちには火傷を負っている。手から見えない糸のようなものを出した。
これで体を切断しようというわけか。なるほど。しかしフレイムの腕を取ったと思ったが炎で焼き切られてしまった。
結局全身大火傷をして倒れてしまった。俺はエクストラヒールをかける。 何とかなったようだ。
妻たちにはもう一度ずつ相手をしてもらい、そのすべてに勝利した。
「隊長さんたちの相手は俺がしましょう」
「魔王ナオトです」
「親衛隊隊長!ラグエル」
ラグエルは剣士だ。相当速いようだ。
「「お願いします」」
俺は心を無にしてラグエルに対峙する。相手の剣をかわし、脇腹を切る。
「いつの間に?」
今度はこちらから打ち込む。かわされるがもう一本の剣で右手を切る。そして腹を刺して終わった。
「エクストラヒール!」
「突撃隊隊長!ゼラキエル」
この男も剣士のようだ。
「「お願いします」」
速い打ち込みだがかわせる。かわして左腕を切る。相手の突きが来るがかわして腹を切る。蹴りを入れて勝負がついた。
「エクストラヒール!」
「いやーいい訓練になったよ。ありがとう」
「はい。こちらもよい経験になりました」
「「「「「ありがとうございました」」」」」
「今度、うちの親衛隊を連れて来るから相手をお願いしますよ。多分いい勝負になると思いますから」
「「「「「はい。楽しみにしています。」」」」」
こうして訓練はお開きになった。