第10章 暗黒大陸編 第121話 新大陸
魔国での戦いが終わった。もう警戒する必要もないんだ。たぶん。きっと。おそらく。
魔国での連合国リーダーの交代をしてもらおうと思っていたが先にお前しかいないと釘を刺されてしまった。
仕方がないのでまたリーダーをやっている。朝は人間界の家にいるが用事が無ければナチュラルリッチタウンにいる。
そこから各地に転移門を設置して交通の便をよくした。経済も活性化したようだ。
各魔王達が俺のところに修行という名目で女の子を置いていくのだ。もちろん誰でも受け入れているわけではない。
ある程度強いか、何かの才能がない受け入れはしない。何とベルフェゴールもその中に入っている。
「大魔王様次は魔王アマイモン様との会談になっております」
「お前いつから俺の秘書になったんだ?ベルフェゴール」
「我の心はいつも大魔王様と共にありますから」
「はあ、そうですか」
確かに秘書はいなかったな。目の付け所がいいや。
リリンは午前中幻獣と遊び午後は俺のところに来る。エレンミアとシャーロットは自分の領地にいることが多い。
ネフィとフレイムは午前中はヴァルキリーと訓練。午後は各地の視察に出ている。
バイモンは午前中は妖精の里にいて午後はネフィとフレイムの視察に合流する。
従者達はナチュラルリッチタウンで訓練に付き合ったり、それぞれ研究をしたりしているようだ。
「また旅がしたいな。魔国も回ってないとこはたくさんあるしな」
「旅に出るのですか?」
「知らない町を回ってみたいんだ」
「でも、もう顔が売れすぎてまよ?」
「それは変装するから大丈夫だ」
「我もお供しますわ」
「別に構わないよ」
早速もとルシファーの国の方に行ってみることにした。嫁たちはそれぞれやることがあるらしく今回は一緒には行動できないとのことだ。
俺はベルフェゴールと従者の4人を連れて旅に出ることにした。もちろん女性に変身してだ。
「あなたと言う人はとことんむちゃくちゃですね」
「そうかな?これも旅先で身につけた技術なんだが。勤勉なだけだよ」
「あの時の女の子はあなただったんですね!」
「ああ、俺の国へ来た時か。そうなるな。ナオと呼んでくれ」
「はあ。わかりました」
魔国の南にもいい所はあるはずだ。久しぶりに自分で車を運転する。なかなか綺麗な景色だ。人が行き来できるように道もよくなってきている。
ここは南の町イトル。特に変わったことがある町でもない。だが明らかに周りと違う植物が茂っていた。なんだこりゃ一体?
「あのすいません。ここの木や草だけ周りと違うんですけど、何でですか」
「あーこれはなぁ、何年か前に飛んできたんだよ。火の玉みたいになって岩がな」
「はー飛んできたものがこんなふうに」
火山の噴火かなんかで飛んできたものがここに根付いたのか。なるほどな。
確かにここは海にも近いけれど他の陸地から飛んできたということか。面白そうだ。
「その火の玉ってのはその後来たことはあるんですか」
「いやー小さいのは飛んできたことがあるなあ。1年に一回ぐらい落ちるわ」
「ありがとうございます」
ちょっと好奇心が湧いてきたんで円盤に乗って調べてくることにした。みんなを連れて俺は円盤で飛び立つ。
海から飛んできたとなれば東の方しかないが、飛ぶこと30分位で、大陸が見えてきた。
なんだ!我々の大陸以外にも陸があるのか。
「知らなかった」
「我も知りませんでした」
大きさは魔国位ありそうだな。火山もいくつかあってかなり活発に活動している。
緑も豊かだし湖もある。ちょっと植物は魔国とは違うようだが。
動物はいるのかな?人もいるのかな?
「ちょっと調査してみるか」
どうやら動物はいるようだな。魔国と似たような動物がいる。
一本角のうさぎが魔国にはいるが、こちらにも似たようなのがいる。ちょっと捕まえてみるか。
「うわ!速い。何ていう速さだ」
あっという間にうさぎは見えなくなってしまった。こんなに速いんじゃ弓でも捉えられないな。
「すごいなあ。この大陸のうさぎは スピードが段違いだ」
「マスター他の動物もいますよ」
「本当だ!トカゲがいる!魔国のトカゲと形が似ているな」
「ボス!こっちの方が魔国より大きくて速いですよ」
「とにかく一匹捕まえてみよう」
「ご、ご、ご主人様!無理ですー速すぎますー」
「プミー!」
アベイルが体をかなり広げて包み込むようにしてトカゲを捉えることに成功した。
暴れる!暴れる!すごい勢いで暴れる。アベイルが困っている。俺は素手でトカゲを殴ってみた。
トカゲは動かなくなり、やっと仕留めることができた。
「アベイルよくやった」
「プミー!」
しかしなんでこんな速くて強いんだ。魔国とは比べ物にならないな。トカゲ一匹取るのにこんなに苦労したことはないぞ。
ひょっとしてこの大陸。生物自体のレベルが魔国より上なんじゃないのか?
俺たちは もう少しこの大陸を調査してみることにした。
「このトカゲ焼いて食ってみよう」
「分かりましたマスター」
たき火をして塩をつけて焼いてみた。
「そろそろ焼けたんじゃないかな 食べてみよう」
「う、うまい!うまいなこの肉はー、びっくりした」
「ほ、ほ、ほんとうに美味しいです」
「プミー!!」
なんだろう。嫌な予感がする。
その後、沿岸沿いの動物や植物を調べてみたが魔国と似ているものが多かった。
しかしその内容は明らかにこちらの方が優れていた。
ひょっとして奥の方に行けば行くほど 大きかったり強かったりするのかな。
もっと速くなるのかな?俺の心の中は期待と不安で入り混じっていた。