第118話 アスタロト軍崩壊
俺はアスタロト。国を奪われた惨めな王だ。今は東のはずれの山の中に要塞を築いて潜んでいる。
ほとんどが地下にあるので魔王ナオトも分からなかったのだろう。ここに魔人50人と一般兵1000名と潜伏している。
食い物はあるので1ヶ月はここにいることができる。その間に答えを出さねばならぬ。
打って出て戦うか、どこか他へ逃げるか。それしかないだろう。今さらルシファーにつくというのもな。
潜伏するのに反対した魔人15人は残って戦ったが誰も帰っては来なかった。
魔王ナオトを打ち取ると言って息巻いていたグシャラボラスも戻っては来なかった。
切り札だった勇者も破れてしまったし完全に手詰まりだ。
「サルガタナスよ、何か良い手はないか」
「アスタロト様、完全に手詰まりですじゃ」
「ネビロスはどうだ?何か良い手はないか」
「ありません。生きのびるだけなら何とかなりますが国を取り戻すとなると···」
「うん、そうよね。私も浮かばないもの」
「勇者達はどうしておる?」
「かなり落ち込んでおります。体の方はもう大丈夫なようです」
「それじゃあ使えないわねぇ」
「しかし、勇者はあれほど強いのに更にその上をいくとはな···やはりどうやっても我らに勝利はないのか」
「「···」」
「降伏するか」
「しかし、それではアスタロト様の命が···」
「私の命ひとつで1000名が救われるならそれもいいかな」
「アスタロト様!それを実行なさるのは今しばらくお待ちください」
「ない頭をしぼって考えますじゃ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ルシファー様、アスタロトの国が魔王ナオトにより!落とされました」
「ベルフェゴールよ、これは容易ならぬ事態だ」
「はい。次は我々ということですね」
「うむ。アスタロトの国にも戦力はあるはずだが戦わずに引いたようだ。それほど魔王ナオトは強大なのか!」
「はい。単純に魔人の数で比べても2倍はいますから。更に側近の力もすさまじく、本人の強さは超人的です」
「このままでは我らの滅びるのは必至になるな」
「···」
「何とかアスタロトと連絡を取り連合して魔王ナオトを打つしかあるまい!」
「はい。全力を尽くします」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「魔王ナオトよ。我らを召し抱えてくれて感謝する」
「いや、もともとムルムルに力があったからさ」
「我が眷属たちも呼ぶことができた。こんなに嬉しいことはない
「それはよかった。頑張ってくれ」
アスタロトの捜索はしているが発見の報告はない。
今は守りを固めるしかないかな。こういう時は焦っても仕方ない。なにか楽しいことでもしたいな。何かないものか。
「リリン何か楽しいことしたいな。何かないかな?」
「うーん。そうねー、ヴァルキリーを使って宝探しでもしたら?」
「宝探しねぇ···面白い!やってみよう」
さっそく宝をまく。金塊を森の中にまいて探してもらうつもりだ。
「さあ、みんな宝探しだ!森の中に金塊がまいてある。早い者勝ちだ!頑張って探してくれ」
200人のヴァルキリー達は一生懸命に宝探しをする。
「大魔王様!何か穴が空いています!」
「何?これは一体?」
「ずいぶん深い穴です!何かあるようです!」
中から魔人が出てきた!
「アスタロト軍だ!」
「何ー?全員戦闘開始!」
何と!宝探しをしていてアスタロト軍を見つけてしまった。魔人がたくさん出てくる。
俺はすぐさま魔王達に連絡をする。みんなすぐ来てくれるようだ。
まさかこんなとこにいるとは!
「味方が来るまで持たせろ!」
「「「分かりました!」」」
戦闘を開始してから2時間がたち相手の魔人はかなり打ち取ることができた。
こちらも何人か犠牲者が出ている。そのたびに俺は復活魔法をかける。
「リバイブ!」
「ああ、よかったー」
「大魔王様ありがとうございます!」
「あとは味方に任せてゆっくりしていろ」
こちらは魔人級が100人はいる。相手はそれ以下だ。時間の問題だろう。
さらに1時間が過ぎ味方の軍が到着し始めた。それと同時にアスタロト軍が降伏してきた。我々の勝利だ!
しかし、アスタロトやネビロス、サルガタナスはいなかった。勇者もだ。転移して逃げたようだ。
「もう奴らに兵はいない。逃げてもどうにもならんだろうに」
「来たらやっつけるだけなのー」
「うん。まあそうだな」
俺たちは捕虜を連行して意識を南の方へ向けた。