第108話 ベリトと空間魔法勝負
水龍の玉を手に入れた俺たちはすぐに転移でサミュエルの町に飛んだ。
「えーと確か騒げば出てくるとか言っていたな。どうするか」
まさか町中でエクスプロージョンをぶっ放すわけにもいかないしな。
「町の中央に公園があるな。あそこで何か賑やかな事はできないかな」
「あ、それなら楽器がありますから精霊を呼び出せば演奏できますし歌えまーす」
「あはん、私は踊れます〜」
「リリンも踊るのー」
「大道芸なら出来るっすよ」
「それなら私も大丈夫ですわ」
「俺も踊りのほうがいいな」
「ええ〜、私は料理くらいしかできません。どうしましょう」
「そうだ職業斡旋業者に断ってくるか。あいつらうるさそうだからな」
「公園で興行?」
「何だ!だめなのか?!」
「いえ場所代だけ払っていただければ大丈夫です」
俺たちは場所代銀貨50枚を払って興行することにした。歌と踊りをベースにして大道芸を入れていく。あと簡単な食べ物屋もやるつもりだ。
昼近くから始めたので軽食とエールがよく出ていた。バイモンの精霊が奏でる曲は客の気持ちをよくつかんでいた。
3曲演奏すると2曲踊り、3曲演奏すると大道芸を見せる。かなり受けていた。
踊りの方はサービスして水着のような服装を用意した。周りには100人位の人だかりができていた。
「ナ、ナ、ナオト様〜手が回りません」
「わかった。小型のゴーレムを出そう。これで何とかなるだろう」
「これはかなり賑やかになったな。すぐに店じまいができない雰囲気だな」
「本当に流行ってるベリ」
「おうよって、ベリト!」
「ここで騒いでるって事は水竜の玊が見つかったのか」
「ふふん。まあな。それで勝負はしてもらえるんだろうな」
「ああ、もちろんベリ」
約3時間後店じまいをしてベリトと向かい合うことになった。町外れの原っぱだ。
「ナオト、水竜の玊は」
「ここにある」
「でかいな。そんな大きさの物がよく手に入ったな」
「苦労したからな」
「お前と戦えばもらえるんだな」
「そうだ」
「ナオトー頑張ってなのー!」
嫁たちが応援してくれている。
俺はいつもの二刀流だ。スキは全くないはずだ。
確かムルムルは攻撃が当たらないって言ってたな。何をするのやら。ベリトも刺突剣を抜く。
「行くぞ!ベリト」
「こっちも行くベリ」
一足一刀の間合いに入る。素早く踏み込み左肩を狙う。確実に入ると思った。
と、その瞬間やつの姿は消えていた。
「しまった転移か」
ザシュ!
ベリトは俺の左側に転移して脇腹をついてきた。短い方の剣で対応したが間に合わなかった。脇腹をえぐられてしまった。
「なるほど転移か!やるじゃないの」
俺もすぐさま転移でお返しをする。やつの剣も間に合わなく確かに剣が肩に食い込んだと思ったのだが空間が歪んで空をを切ってしまった。
「なに?」
確かに当たったはずだ。しかし剣は空を切っている。空間を捻じ曲げたのか?別のとこへ繋いだのか?
これはこちらが不利だな。少なくとも同じことができない限りなかなか勝てないぞ。
そんなことを思ってる間にもベリトの転移攻撃はどんどん飛んでくる。
仕方がないので俺はバリアーを張った。この間に考えねば。
よし攻撃は最大の防御だ!攻めるぞ。
魔法攻撃に切り替える。
「ハイレーザー」
撃つとすぐさまバリアーを張る。するとハイレーザーがわきから帰ってきた。
やはり空間を別のところにつなげられるようだ。これは厄介だな。
元々転移魔法だって今のいる空間といったことのある空間をつなげているのだから理屈は似たようなものだ。
だが攻撃された空間を別なところへつなぐのだからこれは難しいな。どうやるんだろう?
とりあえず相手の攻撃と合わせてカウンターを狙ってみよう。
おお今度は魔法を撃つようだ。
「ファイアーランス!ファイアーランス!ファイアーランス!」
俺は左前移動してバリアーを張る。すると元いた所に三方向からファイアーランスが飛んできた。
なるほど一瞬遅れるようだな。
「うわっ!」
今度は奴の転移攻撃だ。これを交互に繰り返されたらたまらんな。
俺は転移して剣攻撃と魔法攻撃を繰り返す。
彼は順番にそれをかわして別空間へ飛ばしている。やはりなかなか当たらないな。
後はディセイブルマジックで魔法無効化するか毒攻撃ぐらいしか手がないな。
しかしそれでは奴に勝てたことにはならんなー。本当の殺し合いなら何でもいいんだが。今回は腕くらべだからな。
ベリトの攻撃をどっかに飛ばしてみるか。
ファイヤーランスが来る。ここを空間ごと切り取る。反対向きにして空間に貼り付ける!
「おお、できた!」
「むっ!」
今度は自分の魔法を発動してそこを切り取って相手にぶつけてみよう。
「ウィンドカッター!」
ウィンドカッターをたくさん発動させる。端の方切り取って左からぶつける。端の方を切り取って右からぶつける。
「うぎゃ!」
「おおっ!当たった!」
「右手からウィンドカッター誘導弾!」
「左手からファイヤーボール」
ウィンドカッターは真上から飛ばした。ファイアボールは真っ正面から打った。自分は転移でベリトの前に現れる。
ベリトは俺のファイヤーボールと転移の攻撃は交わしたが誘導弾であるウィンドカッターには被弾した。
「うあー!くそう!」
ウィンドカッター誘導弾を大量に出して端から削り取っていく。多方面から放つ。
1度や2度は交わしたが3度目4度目以降はほとんど当たった。転移で真正面に出て剣を振り首に当てる。
「ま、まいったベリ」
やっと勝負がついた。ベリトと自分の治療をする。
「いやー、中々面白い勝負だったよ」
「負けちゃしようがないベリ」
「約束だ水龍の玉を渡そう」
「おお、ありがとう」
ベリトは勝負に負けたのは残念そうだったが玉をもらったのは嬉しそうだった。
「これがあれば未来も正確に占えるベリ」
「未来のことが全部わかったら面白くないだろう」
「いいことはな。でも悪いことは回避できるのもあるベリ」
「なるほど」
「そうだナオト達の事を占ってやろうベリ」
「面白そうだな」
俺たちはみんな何を占ってもらうか考えた。