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ただただ走り駆け回っていく
爆発音はもう聞こえないがそこらじゅうに広がる粉煙と何かの焼ける匂い
「っ……くそっ」
そんな言葉がぼそっと出る
片手に大鎌を持って走り回る
私はここにいたのに事を起こしてしまった
町の人に聞きながら行動して助けるところに向かう
どうやら次の行くところで最後だ、助けに行くのが遅くなってしまった
出来ればなにも……誰も!!そんな事が頭を過ぎる
さっき見た景色のせいでずっと頭の中に残る黒いモヤモヤは私の頭を支配している
青空、炎、煙、悲鳴、そして血…どうやら見覚えがあるそれらの合わさった景色はあまり思い出したくないものなのだろう
だけどそれを気にしていられるほど事態は楽じゃない
「ハアアアッ!!!」
最後の場所の瓦礫やものを吹っ飛ばす
端々から感謝の言葉が聞こえてくるがそれに対した事はしてないとか適当に返事を返す
私は武器を元に戻し走って乱れていた服を整え、通信用の魔法道具を出す
その道具に魔力を少し込めると淡く紫色に光る
ピピピと音が鳴りミナちゃんに繋げる
しばらくするとはい、ミナですその声が聞こえる
「みなちゃん、ミオだよ。組織が動き出した、今町の至る所が被害にあってる。何時ぐらいに着く?」
「ほんとうに?!今町の手前に居るわ。急いで向かうわ」
ミナちゃんの通信道具越しに聞こえてくるゴソゴソいう音、動いているのだろう
「わかった。とりあえず今こっちワタワタしてるから気を付け……」
突如上から大きな音が聞こえた。すっと上を向くと昨日出会った時と同じ黒いフードの姿で立っている少女がいた
酷く口元を歪ませて笑う彼女
「みぃーつけたぁ……」
そんな声が辺りに響く
機械越しにミオ!ミオ!と何度も私を呼ぶ声が聞こえた
そんな声を無視してカノジョはニコニコと笑いながらこっちを見ている
「ごめん、ミナちゃん出来るだけ早く来て」
そう言って通信機器を切る
切る直前までミオ!待ちなさいミオ!と言う声が聞こえたがそのまま聞こえなくなった
私が電話を切るとほぼ同時に雷が飛んできた
真上に飛び
「重力魔法、空中散歩」
自分の体に魔法をかけ重力をほぼ無効にする
周りから悲鳴が上がり逃げ惑う声が聞こえる
「大鎌。朱色の波」
大鎌が紅く光り触れた所から炎が上がる
ほとんど重さを感じない体で空中を蹴って少女に突っ込む
大鎌を縦横斜至る所から切り込んでいく
だがその全てを相手の短剣で受け流される
やっぱりこの子強い、大体の人は鎌の重さで弾けるのに……
一撃一撃をしっかり踏み込み打ち込むが受け流され彼女は分かっているかのようにニッコリと笑う
ほんとにやりにくい相手…属性雷だし…
1度攻撃してその反動で後ろに下がる
体制を整えお互いがお互いの目を見る
みなちゃんたちが来るまで時間を凌げばいい
「炎熱の風」
大鎌を横に動かすと二階建ての家ほどの大きさの炎の壁が私の後ろに出てきて住人達に近づけないようにさせる
「へぇ……やるじゃん?」
黒髪の女は怪しく笑う
私と相手の2人だけの空間のようになる
回りは私の出した炎の壁で埋まっていてだれかが干渉するにはわたしの仲間か上から入ってくるしかない
「あはははっ」
「っ……」
屋根の上にいた女は屋根からストンと降りて武器を身構える
「ふふっ……この後ろの炎の壁……ここのヤツら守るためにしてる?」
「そうだよ。何がおかしいの」
「何がおかしい??あはははオカシイに決まってる。この私相手に誰かを守りながら戦うなんてムリがある」
にこっりと笑いながら彼女は私にナイフを使って切りかかってくる
「っ……そんなのやってみないと分からない!!」
大鎌のサイズを少し縮め持ちやすい大きさにする
これで少しは受けやすくなる。小さくなった鎌を彼女の短剣に合わせて早く動かそうとした
「突然の雨」
頭上から女の子と思われる透き通るようなソプラノの声が聞こえてきたと思うとあたり一面に大量の雨が流れてくる
「っ…?!炎がっ……」
自身が出した大鎌の炎も周りに出した炎もどんどん小さくなっていく
雨?!水…最悪の組み合わせでしょ…水と雷なんて
突然降ってきた雨に気を取られているうちにナイフが迫ってくる
「ぐっ……」
うまく避けることが出来なくて左腕に大きく切り込まれ、切られた時一緒に電気も流てくる
「ああああああああっ!!!」
痛い…腕が!体が痺れる…
「電気と水は相性がいいんだよ?油断してたでしょ…」
「っ………豪火っ!!」
炎よりも強いはずの豪火を放つが雨が降り続いてる影響で炎が弱い
「ミミっ!」
「はーい!」
不釣り合いな幼い声が聞こえて来てその声が聴こえた途端雨の量が増える
どれだけ出しても炎が消える
どうしたら……
「っ…うっ……ごほっ!!」
喉から何かがせり上がってくる感じがして咳き込み吐く
何度咳き込んでも止まらなくて口の前を手で塞ぐが指の隙間から赤い液体が流れ落ちる
「っ……?!」
魔力切れの証だ。無理に魔法を使ったから体が持たなかったんだ
まさかこんな時に魔力が切れるなんて…
「あれ?魔力切れ?なんだぁ面白くないなぁ……
まあそうだよねぇ。昨日時空間魔法使ってさぁその上複合魔法の連発だもんねぇもつわけない………」
「うるさっげほっ!!」
「正義の味方は大変だねぇ。まあもうそれじゃ戦えないでしょ?楽にしてあげる」
目の前の女の子はわたしを見てニコっと笑いナイフを振りかぶり長らくわたしのところに来る
力もうまく入らなくて動けなくなった。
私は目をつむり来るはずの衝撃備えようとする
彼女は私に向かって切り込んで来ようとしたはずだった
「っ……!!」
いつまで経っても来るはずの衝撃が来ない
ぎゅっとつむっていた目を開けて上を見上げると薔薇の茎が私の前に沢山あった
「へっ……?植物…?」
「ちっ……いらない邪魔してきて……」
また何かが上がってくる感じがしてゲホゲホと咳き込む
「ミオさん!!大丈夫ですか?!」
「プルメリアちゃん?……ごほっ!!」
「!!…魔力切れですね?!無理しないでください!!」
プルメリアは私の体を支え大人くししてて下さいと伝える
「動くな」
低い声が響きそっちを向くと茶髪の男の子が大剣を彼女に突きつけていた
「わー……これはこれは」
「お前は名もなき組織か?それともタダのクーデターか?なぜこんな破壊活動を?」
「さぁて何でしょう。ふふっそんなに怒らないでよ。ただの遊びじゃない」
「ふざけるな!遊びじゃない!……っ?!?!」
コウトが突きつけていた剣をナイフで弾き後ろに飛ぶ
ピンク髪の少女の隣に立つ
「はぁ……流石に3人相手はしんどいかなー。精鋭ばっかりだし?あんたらの所の大将本当に嫌な性格してるね」
彼女は隣の少女の頭を撫でながらやれやれと言う
「あーそうだそうだミオ・イレイス。貴方は何故か覚えてないみたいだけど一つだけヒントをあげる
私の名前はモプ。モプ・アーレス。次に会うまでには思い出しといてね?
行くよ。ミミ」
隣の少女もうんと行って後ろに付いていく
待てと言おうとしても咳が出てきて言えない
体の力が抜けて次第に視界も掠れてきて私は倒れた
誰かが名前を呼ぶ声が聞こえたけど
そこからは覚えてない
*
「ねぇ。もぷちゃん戦わなくて良かったの?」
ミミは不思議そうな顔をしてモプにそう尋ねた
「まあ…確かに今戦えばわたしは勝てただろうけど…。つまらないもの。もっと苦しんで苦しんで次会う時に」
そう、この程度の苦しみじゃわたしの苦しさは晴れない、晴れることは無い
あいつの幸せを全て奪わないと
私にしたように同じように奪ってやる
「そっか…次は○○せるといいね」
ミミはじっとモプを見て言ってくれる
「ああ。そうだな次こそは…必ず」
次に会う時は思い出しててね
ミオ・イレイス。私は決してあなたをユルサナイ