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「おはよー……」
ミオはのんびりとした口調で食堂で朝ご飯の準備をしていたレナに挨拶をする
「おはようございます!ミオさん」
挨拶をしながらも両手を動かしせかせかと働くレナ
「もうここで食べていいんだ」
「えっ?あっはい!警察官さんにお願いしました!お客様にもご迷惑がかかるって言って」
ふふっと笑いながらレナはさっきの別の宿泊客が食べていたのであろうお皿を持ち歩き出す
「ミオさんのお席はこちらですよ」
そう言われてわたしもレナが進む方向に歩く
相変わらず壁は壊されたままだ。ポッカリと穴が空いているがそこにビニールテープを被して隠している。
申し訳ない気持ちで一杯になるもう少し早く気づいていれば被害すらもなかったかもしれないのに…
そんなことを考えていると目の前に自分が座るであろう席ひしっかりと準備された朝ごはんが置かれていた
「わあああ!美味しそう!これレナとハルが作ったの?」
「はい!」
私に質問された答えをニコニコしながら受け答えするレナ
美味しそうに見える料理を見てやっぱり料理上手だなと思ったのだ
朝ご飯を食べたあと私は昨日の黒髪の少女と出会った場所に向う
やっぱり気にしないと思っていても気にはなるものだ。
それに彼女が私に言ってきた
"私のこと分かるでしょ?"
という言葉が私にはどうしても頭から離れない。もしかしたら私が忘れた記憶かもしれない。彼女は私を知っている。だけど私は知らない。
歩く速度がどんどん早くなる
私には記憶が無い。紅に来る前の記憶がほとんど無い。
ただ覚えてるのは火に塗れた私の家らしきもの、人の悲鳴、血塗れになった両親らしき人の姿。
それより前のことは覚えていないのだ
そんな記憶しか無いものだから私が彼女を覚えていないだけなのかもしれないと思ってしまう
だとしても彼女は私とどんな関係があるのだろうか?それが知りたいと思ってしまった。
知る手立てもないしできる限り関わりたくなかったんだけどな……
知ることは怖いことだ。知ってどうする?だけど……
ため息が出る。
そんなことを考えているうちにどうやら目的の場所に着いたようだ
だがそこについてもわたしには昨日現れた彼女は本当に誰だったのか分からない
「はぁ………今の所は何も無いし…とりあえず近辺調査だけして帰ろう」
また私は歩き出す
*
わたしは付近を歩き回ったあと
街が良く見える高台にきた
そこから見る町はカラフルな屋根が沢山見え楽しそうに笑う人々を見れる
楽しそうだなぁ
本当に誰なのだろうか…黒髪の少女いや女性なのかな。年上だったことはわかる
私のことも知っている。ああほんとうに誰なのだろうか
ふと不意に音が鳴り響く
わたしはポケットをゴソゴソしてその正体を突き止める。音の正体はどうやら私が持っていた連絡用魔法道具だった
ボタンを押すと聞き慣れている声が聞こえた
「ミオ。リカだ。お前が昨日連絡してくれたようにこちらでも調べてみた
どうやら今お前のいる街に名もなき組織の幹部が居るようだ。警戒しておけ。
とりあえずそちらに何人か送っておいたから明日には着くはずだ」
リカは声のトーンを変えずに淡々と連絡だけする
「そっちに向かっているのは、プルメリアとコウト……後ミナ」
「えっ?ミナちゃん?なんで?」
道具越しにため息をつく声が聞こえる
「当たり前だ…。相手はミオ、お前が怪我をさせられるほどの奴だ。それにだ、何かあった時に回復要因はいた方がいい。」
私が昨日怪我を負ったからでリカちゃんなりの気遣いだろう
優しいなぁみんなが傷つくのを避けてる
「そっか……わかった。とりあえず今は何も無いよ。引き続き調査続けるね」
「ああ。何かあったら連絡をくれ。俺からミナに回す」
わたしは一呼吸起き答える
「うんわかった。あのさリカちゃん
。調べて欲しいことがあるのだけど……」
*
晴れる空の中歩く人達がいた
「あーまだつかないのかよ……セイウの街ー!!」
声を上げた茶髪の男の子は上を向き手をだらんとさせながら気だるそうに歩く
「もうすぐだよ。男なんだから我慢しなよ、コウト」
そう言って後ろを歩く男の子に注意をする青色の髪の女の子
そして男の子の後ろをテクテクと歩く金髪の女の子
「そっそうですよっ!コッコウトさん!もうすぐですし!頑張りましょう!」
その女の子はたったったと走りコウトと呼ばれた男のコの前でグッと手を握る
「おう……けどよ…あともう少しって言われてから結構たってるんだぜ?あっち出たのもかなり早かったし…眠い……」
コウトは目を擦り欠伸をしながらまた歩く
そんな姿にミナはため息をつきまた言ってくる
「まあ遠いっちゃ遠いけど……まだまだはかかるかな?
さてっ!急ぐわよ!プルメリア!コウト!」
青髪の女の子がにこっと笑いまた歩き始める
「はい!ミナさん!」
「おおー……張り切ってるなぁミナ……」
その後ろをついて歩くプルメリアとコウト。その3人がミオて合流するまで後半日
一方ミオは
「はぁ……名もなき組織の幹部……か……」
これはいよいよめんどくさい事になってきてるなぁ
どうしようか…3人が着くまで待ってもいいんだけど………むううう
「はぁ……かんがえても何も出ないやー!」
またトボトボと歩き出すミオ
ほんとわかんないや
彼女は何のために?私の過去を知ってるのかな。私の知らない覚えていない過去を
「はぁ……」
息をするかのようにため息が出る
ああ私ダメだなぁ
今考えてどうするんだ今なにか出来ることはない
私ひとりで戦うには相手の属性は不利すぎる
私では電気を使うであろう彼女には電気の有利属性の炎では勝てない
例え魔力で勝っていたとしてもダメージが大きいんだ…
ダメだダメだ!考えては行けない
「帰ろう」
そんな言葉がポツリと出た
*
暗い部屋、少しの明かりが灯る中
黒髪の男が何かを作っている
カチャカチャと鳴り響く金属音
「ねぇ、ブラック。あんたカイトさんになにか頼まれてるの?」
黒髪の女、モプが話しかける
「なにがですか…俺、手紙見せましたよね」
「ふーんそっか」
側においてあるドライバーに手を伸ばし何かを接合した後ブラックはモプを見ながらため息をつく
「はぁ。気になるなら聞けばいいんじゃないんですか?
別に変なことをする訳でもないですから」
そうブラックが問いかけるとモプは頭を掻きながら
「いや今聞いても楽しめないし」
またブラックは溜息をつき
「俺はあなたの楽しみとかは知りません。こんなこと面倒なので早く帰りたいんです。新作の武器、あともう少しでできそうだったのに、あなたのせいでこちらまで駆り出されたんですから」
いつもと全く変わらないいや変化することのない表情で話すブラック
壁にもたれかかっているのをやめてまっすぐ立つとわたしはそいつを見る
ていうか今日はよく喋るなこいつ
「はいはい、ごめんってばブラック」
私がそう言ったらこちらを少しだけじっと見てまた手元に目線をやるブラック
「……」
返事返せよ……
しかも表情ないからなんか怖いのだけど
「まあいいや。んでいつから動き出すんだ?」
「今夜です。準備しておいて下さい」
「はいはい分かりました。」
私はその返事を聞いた後にブラックの居た部屋を出る