第五話 決意
最初の爆音が聞こえてから10分ほど立ったが、その間爆音が止むことはなかった。そして圭人は今、街の中心にいく一般人の流れにそって逃げている…訳ではなく、前線へ向かう兵士達に混じって爆音の発生源へと走っていた。
「?!避難したはずじゃ…?!何でここにいるの?!あなたは銃も持ってないし、わざわざ死にに行くようなことしたらダメよ!早く逃げて!」
リーナが走りながら叫ぶように行った。よくそんな体力があるもんだ…そんな中圭人は
「だっ、だいじょゲホォッぉぶダカラぁハァハァ」
今にも力尽きそうだった。3年も引きこもっていたのだ、当たり前である。銃もない。体力もない。こんなのが前線に行っても足手まといにしかならない。だが、圭人には行かなければならない理由があった。そうそれは5分前のこと
5分前、圭人は狭い路地にいた。悲鳴や爆音の中、逃げることもなく、ただ人の流れを呆然と眺めていた。圭人はつい3時間程前は引きこもりだったのだ、そんな生活を送っていたのに急に異世界に送られ、盗賊らしきものに襲われ、そして戦争ときた。こんな状況になったら大抵の人間はこう思うだろう『これは夢だ、悪夢だ』と、しかしこれは現実だ。これから本物の殺し合いが始まる。これはゲームではない。撃つと死ぬし撃たれると死ぬのだ。リスポーンもできない。そうゆう世界。その時、女神の声が聞こえた。
『キミはここで諦めてしまうのかい?もっと面白いものが見れると思っていたのにな』
「ッ!?誰だ!」
しかし振り返っても誰もいない。
『キミはもうボクの事を忘れてしまったの?悲しいなぁ…結構印象に残ると思ってたのに』
頭の中に直接響いているような感覚がある。あんまり気分の良いものではなかった。
「ユルド…か?」
『ご名答〜みんなの女神ユルドちゃんでしたぁ〜ぱちぱちぱちぃ』
売れないアイドルのような若干腹が立つような言い方で煽るように言った。
「神様ってのはこんな事もできるのか…なんの要件だ」
『んん〜?ボクは普通に話がしたかっただけなんだけどなぁ〜まぁ用がないって言ったら嘘になるけどね』
「なんだ、勿体ぶらずに早く言えよ」
『一応ボクは神様なんだけどなぁ…まぁ仕方ないね…教えてあげるよ』
『キミの大好きだった妹が、この世界にいるんだよ』
………………は?
だって、あの時、3年前…あいつは…?
『そう死んだ、あの時キミの妹は確実に死んだ…だから正確に言ったら、その移し身といったところかな』
「輪廻転生…ってやつか…?」
『まぁそこらへんは企業秘密ってやつだね、でもほとんどキミの妹、ということは事実だ』
衝撃の事実だった。死んだ妹が…いや、妹に限りになく近い者ここで、こんな血なまぐさい世界で生きている嬉しいような悲しいような複雑な気持ち…しかし
「でも、そいつは俺の妹じゃない、そんなの…違う…でも」
『でも、会ってみたいんじゃないのかな?一目でも生きている姿を』
「っ」
するとユルドは目の前にいたら大袈裟に手を広げているような、実際に上げているのかもしれない。
『ならキミに神からの予言を授けようっ!』
『この世界の攻略を目指しているうちにッ!キミは必ず逢いたい人に逢うことができるッッ!』
「なっ、…」
ほとんど無理ゲー、まず世界とかいう自由度高すぎるゲームをクリアなんて条件も分からないのに…
『まぁキミはセンスがあるからね、きっとこの世界でもうまく行くはずさ、ボクの送ったプレゼントもうまく使うんだよぉ〜じゃあねぇ〜』
「おい!ちょっ…まっ!…ほんとどこまで自分勝手なんだあいつ…ッ!」
だがこの世界で圭人が掲げる目標は決まった。
「やってやろうじゃねぇか…この世界の無理ゲーの…攻略ってやつを!」
そして圭人は知らず知らずのうちに爆音のする方へ駆け出していた。
決意を胸に