13歳 シムリパルの戦い
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では63話目お楽しみください。
10月に入って警戒管制隊の小隊から怪しげな人の動きがあることを告げられた。
「どうにも一都市に人を集めてる感じなのよね」
母ウルラはそう言う。
イツキは推測する。
(各地の警備兵か民兵のどちらかだろう。これは総力戦になりそうだ)
「どこに人を集めてるんです?」
「半島の西側にも大きな川があるでしょ。あのほとりの大きな都市よ」
インダス川の下流となるとインド半島を東西に横断しなければならない。
その移動には時間がかかるだろう。
「とりあえずその都市から人が動き始めたら教えてください」
「わかったわ」
ウルラとの会話はそれで終わった。
10月初め時点で陸軍は兵員2万人を超え、西側各拠点に1,000名ずつ、カルカッタ城には2,000名を置いていた。
残りはダッカ城に2,000名、カシー城に1,000名ほどとなっていた。
(この場合、時間がかかればかかるほどこちらの兵力は増えてくる。兵糧に問題はないので、いつ動き始めるかだな……)
その知らせは意外と早く届けられた。
10月末、兵を集めた都市から兵が移動していることをウルラから聞いた
「規模はどれくらいなんですか?」
「数え切れないわ」
「そういう時は小さな範囲に何人いるか数えて、それを面積の分かけるんですよ」
「えーと……たぶん10万人くらい?」
「聞いてどうするんですか。10万人ですね。了解です」
その知らせを聞いてイツキは危機であることを陸軍に訴える書簡を送り、陸軍2万人に対する指揮権委譲を求めた。
もしそれが無理なら、ハルファス将軍に築城をしてもらったシムリパルの城に2万人を移動させるようにしてほしいことも追記した。
陸軍は追記の案を採用し、シムリパルの城に2万人を移動させることとした。
そこでイツキはもう1通書簡を送る。
敵がシムリパルを無視して攻めるようであれば、その後背を撃つことである。
これは承認された。
そして空軍に対して戦闘攻撃師団の集中運用を願い出る。
これはすぐに承認され、シムリパルには各戦闘攻撃群団が勢ぞろいした。
(これで、打てる手は打ったかな……)
拠点の各地から兵士がシムリパルの城へやってくる。
ダッカにも海軍が続々と兵を送ってくるが、それはシムリパルではなく各拠点の警備に回してもらった。
そして年が明けて1月、両者は対峙した。
人間の軍は金属鎧を付けた人が1,500人ほど。
1,000人で10万の兵を動かし、500は後詰めか督戦隊か偉い人でも居るのだろう。
そしてお互いの言い分を言い合う。
「この土地を不法に占拠している魔族に告ぐ。この土地は人間のものである。人間が治め、人間が耕し、人間が実りを得る土地である。不法な占拠を止め、即刻立ち去るがいい!」
アモルが答える。
「わざわざ東の辺境まで来た人間どもに告ぐ。この土地はこの土地に住む者のものである。不当に高い税率を設定し搾取をする人間にこの土地は自分のものだと言われても違和感しか感じない。それから、耕すのは人間と言っていたが、耕していたのは獣人の奴隷である。人間にその実りを得る資格はない。即刻立ち去れ!」
(アモルさんかっこいいー!)
そんなイツキも言うことは言っておかないといけない。
「人間の軍で金属の鎧を着た方に告げます。真っ先に殺します。嘘だと思うなら攻めてきてみてください」
その声に震え上がるものもいたが、構わず前進を開始してくる。
列を乱さないところを見ると練度もあるようだ。
「おかあさん、敵の金属鎧を着た人だけ抽出できる?」
「ちょっと待ってね……情報を送るわ」
そのウルラの声と同時にイツキの視覚にはターゲットが緑の枠で浮かび上がる。
それは他の戦闘攻撃師団の人間も一緒だ。
「射撃開始!」
イツキのその声で魔法攻撃が開始された。
金属鎧を着た人目掛けて撃たれた魔法は、少々他の人に犠牲を出しつつも、目標の金属鎧を着た人を打ち倒していく。
そうして指揮官と思われる金属鎧を着た人を撃ち殺していくが、兵が引く気配はない。
仕方がないので敵後方に居る金属鎧の500名を狙って魔法を放つと、シールドで弾かれた。
「敵にも魔法使いがいるようですね」
ウェスがそう言う。
「全員、魔力エネルギー弾での戦闘に移行!おかあさん、敵の魔法使いを魔力ダメージで気絶させます。どこに運ばれたか見ておいてください」
「わかったわ」
そう言ったイツキの目の前で、色とりどりの魔力エネルギー弾が敵陣に飛んでいく。
魔法使いは何人かいるのかシールドが何枚かあるが、魔力ダメージにより、シールドを破壊、魔法使いを気絶状態へと追い込む。
その後は通常の魔法攻撃により敵後方の控えを壊滅させていく。
そうすると、前進していた者たちも逃げ出し始めた。
(やはり督戦隊だったのか?)
交戦の可能性もないと考えたので、陸軍の兵士たちとともに城の外へ出る。
穴だらけの死体を見るが、ちょっとぐろいなと思うぐらいで済んだ。
そして敵の後方集団を見る。
「魔法使いだけど運ぶ余裕もなかったみたい。たぶんそこにいる人たちだけね」
そんなウルラからの通信が入る。
少し歩くとローブに杖を持った如何にも魔法使いですよという外見の人間を何人か発見。
息はあるので捕虜として連行する。
他にも外傷はないが気絶している高貴そうな服をした人を発見、捕虜としておく。
全体としては、敵の損害は5,000人程度だろうか。
対してこちらは被害なし。
陸軍に過大報告だと言われると困ると思いながらも1つ思い付いた。
魔法使い用の牢屋を作ってもらってなかった。
ということで、陸軍の人にハルファス将軍に連絡を取ってもらってカシー城の下の牢屋を魔法使い用に変更してもらう。
(それまでは戦闘攻撃師団の面子で2人で1人を見るようにすればいいか)
そんなことを考えていた。
連絡をするとハルファス将軍はすぐにやってきた。
(よほど暇なのだろうか?)
ちょっと心配になってしまう。
工事は完璧でイツキが牢屋に入っても魔法を使えなかった。
そこに魔法使い達を入れる。
10名だったので、1人1部屋あてがっておいた。
そして、高貴な服を着た人だが、自分ではハイデラバードの王子と言っていた。
海軍が入港した際に、懐かしのサトリ=ウォルンタース13世にその真偽を訊いてもらってみた。
「本当に王子らしいですね。王位継承権は2位だとか」
「ありがとう、サトリさん。提督によろしく言っておいてくれるかな」
「了解しました」
ということで、王子様ということが発覚。
これを交渉材料に停戦合意を取りつける。
停戦期間は10年と長くし、ガンジス川流域とカルカッタ周辺の村については魔王国領とすることで合意した。
それで終わればまだよかったのだけれど、やっぱりちょっとやりすぎた。
兵士が少なくなったことで厳しい締め付けができなくなったハイデラバード王国で内乱が勃発したのだ。
イツキはそれを横目に見ながら、捕虜の魔法使いから人間の魔法について学ぶ。
すると、驚くことが分かった。
空を飛びながら攻撃することができないというのだ。
というのも、人間はあまり魔法が使える種族ではなく、使えたとしても1属性のみ。
そして、同時に使えるのも1つだけらしい。
つまり、現在の空軍に居る様なものは人間にはめったに居ないということだ。
(空戦の時代は当分というかかなり来ないな。しばらくは大空を自由に飛びまわれる。しかし、突然変異種というのはどこにでも居るものだ。人間の中で迫害されていれば安心だが、英才教育を受けているとなると厄介だ)
そんなことをイツキは思った。
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