11歳~12歳 誕生日プレゼント
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では57話目お楽しみください。
空軍会議でイツキの提案した練習飛行隊だが、驚くべき早さで結成された。
というのも、落第した者を陸軍が拾っていたからであり、あちらからすれば勝手に持っていくなという心境だったとか。
そんなわけで、練習飛行隊が結成され、飛行訓練、戦闘訓練を行っていた。
そのうち、魔王様から爆弾の模擬弾と魔法の袋が支給され、爆弾投下の精度を確認、向上させていった。
一方で、陸軍からはさらなる人間牧場の拡大を要望され、海軍と空軍はてんてこ舞いだった。
ただ、片手で持てる、人が4人入り船に詰め込みやすくした箱を量産していたので、両手で1人8人まで持つことができ、輸送の面は改善された。
そのため、戦闘攻撃師団はそのすべてを人間の拉致及び殲滅に使い、東はハノイ、西はダッカまで侵攻した。
最終的には更に10万人の女性が『人間牧場』に入れられることになり、また、1500人ほどの獣人奴隷を解放した。
そんなどうしようもない戦いの戦功でイツキは大佐に昇任。
副隊長のアモルも大佐に昇任。
アウィスとウェスはそのまま。
フランマとアンビティオは少佐に昇任した。
この頃になれば、階級の穴も埋まってくるもので、同じ第1戦闘攻撃団の第12戦闘攻撃群長に112戦闘攻撃隊隊長だったウェンテル・アルゲントゥム=ウィーウム中佐が就任。
アンビティオの仲間だった第111戦闘攻撃隊の小隊長達も、各戦闘攻撃隊隊長に就任。
今度はフランマの仲間だった者が小隊長となった。
そんな状況下で、イツキは12歳の誕生日を迎えていた。
「ハッピーバースデー!イツキちゃん!」
母ウルラが部屋に入るなり飛びついてくる。
「おかあさん、痛いです」
「その痛みは母さんの心の痛みよ。どうして会いに来てくれないの?」
(確かに省発足の時以来だから約1年ぶり?)
「こっちも忙しいんですよ。小隊長のおかあさんもわかるでしょう?」
「そんなこと言っても同じ建物なんだから、会いに来ようと思えば来られるでしょ?」
「わかりました。今度会いに行きますから今日のところは……」
「ええ!?ケーキも買ってきたのに?」
そういうとウルラの小隊の者と思われる3人がケーキを持って来た。
イチゴと生クリームのホールケーキで真ん中には「イツキちゃん12歳のお誕生日おめでとう」と書かれていた。
その周囲にはろうそくが12本立っている。
初めから配る予定だったのだろう、それを5つも買ってきていた。
(5つ全てのケーキにろうそくはいるのだろうか)
イツキはそんなことを思った。
ウルラはローソク60本に明かりを灯すと、部屋の明かりを消し歌い始めた。
「ハッピーバースデー♪トゥーユー♪ハッピーバースデー♪トゥーユー♪ハッピーバースデーディアイツキちゃーん♪ハッピーバースデー♪トゥーユー♪それじゃあろうそくを消して!」
ふーっと息を吐いても近くのろうそくしか消えない。
1回あたり4本消えたとして、1ホールで3回、5ホールだと15回も息を吹かなければならなかった。
(過呼吸になるかと思った)
「おめでとー!いつきちゃん!」
そう言って部屋の明かりを付けるウルラ。
「それじゃあ、お茶にしましょう」
トントさんは、包丁が切れやすくなるように温め始め、スパッと6等分に切り分けた。
そしてお皿に盛ると、お誕生日おめでとうと書かれたウエハースを付けてくれた。
コーヒーを飲みながらケーキをいただく。
「おいしい。ありがとう、おかあさん」
「どういたしまして」
周りから奇異の目で見られる。
(そんなに子供っぽくしたのが駄目だったのだろうか?それとも12歳には見えないということなのか?訊くに訊けない)
ちなみにウエハース付きだったのはイツキと小隊長2名、ウルラ、アモルだった。
「それじゃあ、次は私のところに遊び来てね!」
そんな感じで嵐の様にウルラは去っていった。
ケーキを頬張り、甘さをかみしめ、それをコーヒーの苦さと渋さで中和するとたまらなかった。
そんな様子がほほえましかったのか、イツキを見る隊員の目が優しさに満ち溢れていた。
(正直居づらい)
ということで、早めに空軍幹部会議で大臣室に行く。
するとナベリウス大臣からこう言われた。
「今日はイツキ大佐の誕生日だそうじゃないか。何か希望があれば我々で叶えようじゃないか」
(そんな子供扱いをされたくないんだけどな)
「では、陸軍の人員補充後の侵攻計画を将軍会議に掛けていただきたく思います」
思いもよらない規模のものを言われてナベリウスは驚いた。
「それはまた大変なものをお願いされたものだ。どういったものかな?」
「過去の『人間牧場』作戦でマレー半島については空白地帯となっている、もしくは少数人間が住んでいる状態かと思います。そこで、シンガポールに海軍の船を使って上陸、またスマトラ島からも船で渡航し、マレー半島に上陸します。そこから北上してバンコクを占領。バンコクの周辺にはカオヤイという高地があるのでそこに拠点を作ります。東側については自由にして、西側はもっと北上します。ガンジス河の河口付近はヒマラヤ山脈とベンガル湾に挟まれた狭いところです。ここにカシー山地という高台があるのでそこに築城しましょう。そうすれば、西側の守りは完璧と言えるでしょう」
「それで、カシー山地を取り、西の守りを固めて、次はどうする?」
ナベリウスが問う。
「東側を北上させてシベリアまで行きます。そこから反時計回りに回ってインド半島で挟み打ちにします」
そして大層な目標に目をむくナベリウス。
「なんと壮大な絵空事だ。そんな迂遠な計画すぐにはできないぞ」
「最終的には、という目標です。途中、築城や農耕が必要になってくるでしょう。そのためには、インドシナ半島やガンジス川流域で取れる米や小麦が必要になってきます。そうして国力を上げていかないと人間には勝てません」
人間に勝つと言ったのが可笑しかったのか、ナベリウスは笑った。
「人間に勝つか。大層な目標だな」
「わたしが目指すのは世界征服ですから」
「はっはっは、世界を望むか。ではまずそのカシー山地とやらを占領せねばなるまいな」
「はい。将軍会議の方、よろしくお願いいたします」
そして会議はナベリウスのこんな言葉から始まった。
「今日はイツキ大佐の誕生日だそうだ。プレゼントとして我々からも何か送ろうと思うのだがどうだろうか?」
他の面子は肯いた。
「ではイツキ大佐、何が欲しいかな?」
そう問われたので、先ほど話した計画を話す。
その内容に皆が驚いた。
その計画に空中輸送師団団長のガープ中将が質問する。
「補給はどうする?」
「空中輸送師団の力を借りたいところです。カシー山地については魔王国本土からは1日かけてやっとだと思うので、何とか補給してもらいたいです。川沿いでは冬小麦を植えるので、来年には食料事情も改善するでしょう。インドシナ半島から逃れてきた獣人さんに農業支援をお願いすることも考えなければいけませんね」
そんな答えに1年以内ならなんとかなると試算するガープ。
「無茶を言ってくれる。だが、誕生日プレゼントなら致し方あるまい」
「戦闘攻撃師団は何をすればいい?」
そう訊くのは戦闘攻撃師団団長のマルコシアス中将。
「戦闘攻撃師団はシンガポールの占拠とバンコクの占拠、それから第1戦闘攻撃団にはカシー山地への護衛をお願いしたいところです」
「では第1戦闘攻撃団はシンガポールから随行、第2、第3戦闘攻撃団はバンコクを強襲ということだな」
このイツキの作戦案は将軍会議で話し合われ、多少の修正があったものの承認された。
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