11歳 悪辣な作戦
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では55話目お楽しみください。
まず言っておかなければならないのが、この世界には軍隊の民間人への攻撃を犯罪とする方は一切ないということ。
そして、民間人を拘束し、拷問にかけ、殺害したところで法的な措置は一切取られない。
なぜこのようなことを言うのかといえば、今行っている作戦が拉致に当たるためである。
事の起こりは昨夜、空軍大臣であるナベリウスに呼ばれたからである。
「新たな作戦行動ですか?」
イツキはそうナベリウスに問いただした。
「ああ、陸軍の強い要望で通ってしまったよ。」
「それで、どんな作戦なのですか?」
「君は陸軍の主力であるオークやゴブリンがどのように数を増やしているのか知っているか?」
ナベリウスの問いにイツキは当然の様に答える。
「生殖行為ではないのですか?」
「その通りだ。ゴブリンはゴブリンと、オークはオークと子を為す。そして15年の時を経て成長し兵士となる。しかし、例外もある」
「その例外とは?」
「ゴブリンと人間との子供やオークと人間の子供だ。彼らの成長スピードは速く、1年で兵士とすることができる」
(人間を孕ませることで成長スピードが変わるなんておかしなことがあるのか?)
「そんなことがあるのですか?」
「理由はわからんがね。そこで、インドシナ半島への出兵で疲弊した陸軍を人間の女性を使うことで早期に人員を補充するという計画が持ち上がった。魔王様曰く人間牧場だということだ」
「その牧場で飼う雌牛を連れて来いということですか?」
「その通りだよ。ああ、獣人の奴隷も見たら救ってやって欲しい」
(確かにインドシナ半島には獣人の国家があったのだから捕えられて奴隷にされていたとしてもおかしくはない)
「了解しました。作戦開始はいつになりますか?」
「明朝から作戦開始だ。空軍は全力で作戦を行う」
「事前に教えていただきありがとうございました」
「なに、存分に頑張ってもらうためだとも。こんなつまらない戦いで死ぬんじゃないぞ」
「わかっておりますとも」
そうして作戦が始まった。
海軍の艦艇はジャカルタに、空軍はスマトラ島の北西、メダンという町を拠点に行動を開始する。
シンガポールから北へのローラー作戦だ。
シンガポールは港として価値があるのか、工事作業員がいっぱいいた。
それと同時に娼婦もいっぱいいた。
とりあえず、男は殺し、女は猿轡を噛ませ後ろ手に拘束し、空中輸送隊のメンバーにプレゼントだ。
空中輸送師団だけでは足りなかったため、戦闘攻撃隊でも輸送を実施した。
帰り際、海軍の艦艇はジャカルタからシンガポールに入港するようにお願いしておいた。
シンガポールに戻ったら北上する。
工事する人の食料を運ぶ中継拠点の村が点在していた。
これを襲撃した。
外にいる人は男女の区別がつくが、建物の中や壁に隠れられると判断に困る。
とりあえず非殺傷設定で屋根や壁を壊し、中にいた人間を確認して殺すか捕まえるか考える。
そのうち赤子を見つけたとの報告が入った。
「私なら男女がわかるぞ」
とアモルが言っていたので預けたら女の子だったらしい。
そのうち、拘束した女性の数が増えたため、シンガポールに帰投する。
シンガポールには指揮所ができており、イツキの上官であるグレモリー少将もそこにいるので、そこへ向かう。
「閣下、意見具申の許可を願います」
「あら、なあに?」
「女性を拉致するのは簡単です。1戦闘攻撃団で十分です。問題はジャカルタへの輸送です。空中輸送師団では夜明けとともに輸送しても6往復が限度、1日に600名ほどしか運べません。拉致する人数はそれよりも多いのです」
「ではどうすると?」
「第1戦闘攻撃団が女性の拉致、男性のせん滅を実施し第2、第3戦闘攻撃団にも輸送に回ってもらいましょう」
話を聞き終えるとグレモリー少将は他の団長と話をする。
「ということをうちの下の方が言ってきたんだけれど?」
女性の将であるアスタロト少将は黒い翼を少し動かして、意見を言ってきた。
「それであれば戦功の少ない我が第3戦闘攻撃団を拉致任務に就かせましょう。第2戦闘攻撃団は第3戦闘攻撃団とともに移動し、拉致すればシンガポールまで運ぶのです」
黒い翼を持つウヴァル少将はアスタロトの意見に同調した。
「それであれば第2戦闘攻撃団も戦功をあげられるでしょう。第2戦闘攻撃団長としては賛成です」
「イツキは前線から居なくなるけどそれでいいかしら?」
グレモリーがイツキに確認してくる。
「安全なところに行けるのです。否はありません」
「マルコシアス団長はいかがお考えですか?」
「現場の意見がそうなら尊重するまでだ。上に報告してこよう」
戦闘攻撃師団のテントからみんなで払ってしまった。
イツキは留守番をすることにした。
しばらくすると、皆帰ってきた。
「作戦変更は受理された。明日から第1戦闘攻撃団はシンガポール~ジャカルタの輸送、第2戦闘攻撃団は女性の拉致及びシンガポールへの輸送、第3戦闘攻撃団は女性の拉致が任務だ」
「了解しました」
そう言ってテントの外に出てきた。
(前線から離れて拘束した女性を運ぶ輸送任務か……楽になるやら気が滅入るやら)
ひとまず、部下を召集して行動予定を伝える。
「じゃあ、前線で戦功は立てられないんですね」
アンビティオはあまりうれしそうではなかった。
「その通りです。あまり悲しまないでください。むしろ安全なところに行けたと感謝があってもいいくらいです」
「しかし、それでは……」
「考え方を替えましょう。空中輸送師団の面々は1日に6往復がやっと。我々は7往復、8往復してやるんです。他の隊に格の違いを見せつけましょう」
そして翌日、麻布で簀巻きにされた女性を両肩に乗せ輸送開始。
自分だけではなく人を運ぶということで、無理はできなかった。
1人で2人運ぶというのは空中輸送隊ではやっていなかったようで、輸送力が上がったと高評価だった。
この両肩に乗せる方法を空中輸送隊でも採用。
輸送人員が2倍になり、一度に運ぶ人数も2倍になったので、2,400人ほどを1日に輸送できるようになった。
実際にはジャカルタからの帰路で高速飛行した第1戦闘攻撃団が1日に8往復していたため、1日に2,800人輸送していた。
海軍の船の中はさながら奴隷貿易船の様になっていた。
海軍は拉致した人間の数に驚き、ジャカルタ~パース間でピストン輸送を行うとともに、小型船でダーウィンへも輸送を行っていた。
海軍は難儀していても、空軍は快調だ。
1週間でマレー半島を制圧するとインドシナ半島の制圧に取りかかった。
ここまで来るとシンガポールとの距離も開くので、第2戦闘攻撃団の輸送も長時間かかることになる。
自然と歩みは遅くなった。
そこで、第3戦闘攻撃団はバンコクに拠点を構え、そこに捕まえた者を集中させることとした。
近くに拠点ができたことで、第3戦闘攻撃団の歩みは速くなった。
一方で、第2戦闘攻撃団の輸送任務は限界に達しようとしていた。
第2戦闘攻撃団の人員がシンガポール~バンコク間の輸送できるのが1日に4往復、800名程度が限界であった。
バンコクの収容所は文字通り溢れかえっていた。
そこでお鉢が回ってくるのが第1戦闘攻撃団である。
イツキの第11戦闘攻撃群はシンガポール~バンコク間の輸送に投入され、1日に5往復、1,000名を追加で輸送することを可能にした。
そして作戦開始から1カ月、空軍は撤退することとなった。
捕獲した者は10万を超え、獣人もおよそ2,000人ほど保護をした。
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