表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/76

10歳 魔王物語その2

評価とブックマークありがとうございます。

これを励みに頑張っていきたいと思います。

他の方も評価、ブックマーク、感想、レビュー、活動報告へのコメントなどいただければ幸いです。

では51話目お楽しみください。

 魔王物語の第1幕が終わった。


「これから10分間の休憩に入ります」


 そんな放送が流れると、イツキはちょっとほっとした。

 いつの間にか劇にのまれていたからだ。


「なかなか劇というのも侮れませんね」

「だろう?」


 アモルは得意げな表情だ。


「魔王様役の人かっこよかったですね」

「ブロマイドも売っているぞ。帰りに買っていこうか?」

「はい」


 ウェスも楽しんでいるようだ。


「ここからが本番よね」

「アウィス、ここからの内容を言ったらだめだからね」

「わかってるわよ」


 アウィスも楽しんでいるようだ。

 そして第2幕が始まる。


「ジョドプル周辺の町を平定した魔王サタン・ルシファー・イブリース・ロキ=プルガトリウムは悩んでいました。周辺の人間の町から兵隊が送り込まれるのです」


 幕が上がると、石壁に赤絨毯、椅子が置かれており、魔王は座って頭を抱えていた。


「俺が出てもいいが、1人に頼る軍隊では広い範囲を支配することはできない。どうしたものか」


 そこに本を持った獣人の兵士が入ってくる。


「領主の屋敷で奇妙な本を手に入れたとのことでございます」

「奇妙な本か、見せてみよ」

「はっ」


 そうして魔王は本を読みだすと、あるページを開けたまま手を振り上げる。


「いでよ、バアル」


 すると上から王冠を被り、貴族の様な服を着た男性が下りてくる。


「わたしをお呼びですかな?」

「ああ、そうだ。悪魔の王と言うのは偽りないか?」

「その通りです。それが何か?」

「南から人間の軍が来る。獣人部隊を指揮し、これを殲滅せよ」

「かしこまりました」


 そう言って貴族服の男性は捌ける。

 石壁には窓が開いており、向こうに空が見えていた。

 昼、夕暮れ、夜、明け方、朝と移り変わると、獣人の兵士が飛び込んできた。


「南方の戦闘は我が方の大勝利にございます。魔王様の遣わして頂いたあの人物は何者でしょうか?魔王様に勝るとも及ばない魔法の遣い手でございます」

「そうか。ひとまずは良かった。兵士たちに十分休養させるように」

「はっ」


 そうして獣人の兵士が出ていくと入れ替わりに貴族服の男性が入ってきた。


「バアル。見事な活躍だったと聞いた。礼を言う」

「礼には及びません、礼はあなたの命ですから」


 そう言うと貴族服の男性は手を魔王にかざす。

 しかし魔王は動じなかった。


「どうした?命を奪うのではなかったのか?」

「なんという膨大な魔力、吸い切れるものではないか……」


 そう言うと貴族服の男性は手を下ろした。


「何だ、あきらめが早いな。だが、私も刃を向けてきた相手に情けをかけるつもりはない。どうする?」

「従属の契約を結びましょう。これであなたには二度と刃を向けることがかなわなくなります」

「ずいぶんと都合のいい奴だ。だが、能力は評価する。その従属契約とやらを結ぼう」

「では血判をいただけますか」


 貴族服の男性は羊皮紙を一枚、懐から取り出した。

 それを魔王は受け取り眺めるとナイフで親指を切り血判を押す。

 すると羊皮紙は燃え上がり消えてなくなる。


「これからもよろしくお願いいたします。ご主人様。」


 貴族服の男性は傅き、魔王は質問をした。


「貴様は悪魔の王と聞く。部下はいないのか?」

「こちらに呼べるものではありません。ですが、仲間の悪魔に声をかけてみましょう。」


 そうして貴族服の男性は捌ける。

 そして空が一回りした翌朝、貴族服の男性は多くの人とともに現れた。

 老人や、獣人、人魚、翼人、ガイコツと様々だ。


「我らゴエティアの悪魔72柱、尽く陛下に仕えさせていただきます」

「うむ。では、従属の契約かな?」

「はい。こちらに血判を」


 そうして取り出したのは羊皮紙を何枚も貼り合わせて作った巨大な契約書だった。


「これは巨大だな」

「71人分ともなりますと名前を書くだけでも大変な量になりますので……」

「わかった」


 魔王はそれを受け取り眺めるとナイフで親指を切り血判を押す。

 すると羊皮紙がやはり燃え上がり消えてなくなる。


「では、働いてもらうぞ」

「はっ!」


 魔王以外の全員が膝をついた。


 場面は変わって草原、片側では獣人が兵を従えて侵攻する様子を描く。


「勧め進め!勝機は我らにあるぞ!」


 そう叫んで捌ける一方で野戦病院の姿も描かれる。


「この草をすり潰して傷口に塗りなさい。多少は治りが早くなるでしょう」


 白衣を着た獅子の獣人が看護婦とともに負傷した兵士を診察していた。


「魔王と72柱の悪魔の軍は止まることを知りませんでした。南においては海を制し、北においては巨人と義兄弟の契りを結びました」


 そうナレーションが入ると、片側は海戦で人魚が船底に穴を開ける姿を、もう片側は白銀の世界で魔王が巨人と握手している姿を見せる。


「そうして勢力を拡大すると、さすがの人間も看過できなくなったのか和平の使者を送ってきました」


 場面は戻って石壁と赤絨毯だ。

 登場人物は玉座に座る魔王と宰相、白いフードをかぶった人間の女性だ。


「それで、この状態で和平を結ぼうというのか?」

「はい。我々の国内でも亜人の奴隷を解放し、その権利を認めます。いかがでしょうか?」

「言うことは簡単だ。何を持って約束が履行されることを示すのだ?」

「人間の秘宝を陛下にお渡しいたします。履行されればお返しいただきたいほどのものです」


 そう言って女性は懐から大きな透明の石を取り出す。

 小さな台に置かれた石は魔王の元へと運ばれる。


「ふむ、これが人間の秘宝?透明な石などたくさんあるではないか」


 魔王はそう言って宝珠を掴んだ。


「ぐおっ、何だこれは!?」


 魔王が苦しみ出す。


「魔王様!?」


 宰相が魔王に声をかける。

 魔王が苦しみ出すのと同時に女性も苦しみ出すが、声は嬉しがっている。


「その宝珠は魔を封じる宝珠、触れた魔の者を封印する人間の秘宝にございます」

「貴様!謀ったな!」

「いいえ、確かに人間の秘宝にございます。二つとないのですから」

「こんなところで封印されるわけにはいかん!」


 魔王は宝珠から手を離そうとする。


「いいえ、封印されます。宝珠の力とわたしの呪術の力で。命を賭した呪術、逃れられるものなら逃れてみなさい」

「ぐおおおおおお」


 その声とともに魔王は宝玉に取り込まれ、透明だった宝珠は赤くなっていた。

 宰相は宝珠を胸に抱くと叫んだ。


「魔王様!」


 そうして幕が下りた。


「なかなかおもしろかったけど、どれだけ本当なんでしょうね?」


 イツキはホテルへの帰り道、アウィス達へ聞いていた。


「魔王様がいるんだから見てもらって寸評でももらえばいいんじゃない?」

「魔王様、この話を見ますかね?」

「どうだろうな。最後は自分の不注意で封印されたのだから、見たくないのかもしれない」

「案外、ここが違うとか指摘し始めて劇にならなかったりするかもしれないわよ」


 アウィスとアモルはこんな感じで答えた。

 ウェスは劇場で買った主演のブロマイドを見てポッとなっていた。

 そんな感じでホテルに戻ると遅い夕食を摂って就寝。

 朝に兵舎に戻るも、まだ誰も戻ってきていなかったので、イツキ達は買ってきた本で勉強した。

 歴史書の内容は魔王物語と同じような内容だった。

 インド半島に生まれた魔王様はその領土を拡大、東南アジアでは海戦もあったらしい。

 そしてオーストラリアやほかのオセアニアも平定。

 北上すればシベリアで巨人と遭遇、争わないことを誓う。

 そして、西進しエルサレムで封印される。

 全盛期で世界の半分くらいを制圧していたことになる。


(これからその偉業を超えることになるのか……気が重いな)


 イツキはそんなことを考えていた。


お読みいただきありがとうございます。

誤字脱字等ありましたら活動報告、感想でお知らせください。

評価、ブックマーク、感想、レビューをしていただけるとありがたいです。

勝手にランキングもクリックしてほしいです。

アルファポリスのバナーも付けてみました。

よろしければこちらもクリックしていってくださいね。

今後ともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ