10歳 魔王物語その1
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では50話目お楽しみください。
手紙を出したらホテルに戻ったら勉強だ。
自分の覚えている魔法と魔法の教科書の魔法を比較していく。
すると多少は違いがあった。
祖父アーディンが教え忘れたのかもしれないが、抜けがあったのだ。
簡単な魔法で数種類、そしてMAP兵器の様な非常に殺傷性の高い魔法は教えてもらえていなかった。
(確かにあんなところでMAP兵器なんか使えないね)
イツキは納得すると同時にそれらの魔法を学んでいった。
「休暇なんだから勉強なんてしなくていいじゃない」
アウィスはイツキのワーカーホリックぶりに呆れていた。
「いつ勉強できるかわからないんだから暇なうちにやっておくのがいいんだよ」
イツキはそう答えた。
その時ホテルの部屋のドアを開けてアモルが飛び込んできた。
「取れたぞ!明日の王立劇場の魔王物語の夜公演、SS席だ」
「やったじゃない。ところで、SS席ってどの辺り?」
「2階のボックスシートだ。ドリンクサービスやオペラグラスの配布もしてくれる」
「いい席ね。ありがとう、アモルさん」
そんなわけで、翌日、朝食を摂ったら部屋でのんびり読書をし、お昼は隣のレストランにまた行き、時間まで読書をして、王立劇場に向かった。
入口でアモルがチケットを見せると係員に畏まられ、2階に案内してもらう。
席は2階の中央で、上から劇が楽しめる。
ウェルカムドリンクとして白葡萄のジュースが振る舞われた。
「御用の際は手を上げてお知らせいただければ参ります」
どうやら専属の係員がいるようだ。
席に備え付けてあるメニューを見ると、各種果物のジュースにコーヒーや紅茶、ワインなどのお酒まで注文できるようになっていた。
下を覗くと1階席に人が座っているのが見える。
(見ろ、人がごみの様だ!)
言葉には出さなかった。
オペラグラスを使って壇上を見る。
まだ幕が下りた状態だが、よく見えた。
そのうちブザーが鳴る。
開演開始の合図だ。
「時は旧魔王歴1年、人々は人間の圧政に苦しんでいました。土地を追われ、奴隷にされ、希望の見えない時を過ごしていました。そんななか、インド半島の付け根、ジョドプルの村で希望が誕生しました」
その言葉が終わると幕が上がる
それと同時に拍手が巻き起こる。
背景はどこかの家。
女性が子供を抱いていた。
「この子は魔族の希望になる。それにふさわしい名前をつけなくてはいけない。そうだ、世界各地の魔王の名前を名づけよう。サタン・ルシファー・イブリース・ロキという名にしよう。それがいい」
その言葉と同時に、子供は女性の腕から飛び出すと床に立ちお辞儀をした。
「素敵な名前をありがとう。お母様」
その姿に女性は驚くと、子供に抱きついて1回幕が下りる。
「サタン・ルシファー・イブリース・ロキ=プルガトリウムはすくすくと成長するとともに、その魔法の才能を開花させていきました。」
もう一度幕が開く。
今度の背景は草原だ。
1人の老人がいる。
「このまま旱か続けば草原は枯れてしまう。羊たちが食べるものが無くなってしまう。」
そう嘆く老人に10歳くらいの子供が出てきて声をかける。
「村長さん、困ったことがあるの?」
「おお、サタン。お前に行っても仕方のないことじゃが、雨が降らなければこの村はおしまいじゃ」
「雨が降ればいいんだね。それっ!」
子供が手を振ると、舞台上に雨が降る。
「おお、恵みの雨じゃ。ありがとうサタン」
老人は子供と手をつなぐと部隊から捌ける。
雨が止むと、再びナレーションが始まる。
「サタン・ルシファー・イブリース・ロキ=プルガトリウムも15歳になると羊の世話を任されるようになりました。そして羊と麦を交換しようと町に出かけました」
恰幅のいい人間とすらっとした青年が現れる。
「質の良い羊をありがとうございます。今後ともごひいきに」
人間は青年に媚びるように言う。
「こちらも麦が手に入るのだからお互い様だ。……ん、あれは何だ?」
そう言って青年が指さす。
「あの犬人でございますか?」
「ああ、なぜこんなところに犬人が?」
「あれは奴隷にございます。奴隷商人から購入し働かせているのでございます」
「犯罪奴隷か何かか?」
「さあ、そこまでは……」
「そうか。今日のところは失礼する」
そう言って両者は別の方向に捌ける。
「明くる日、今度は羊と野菜を交換しようと町に出かけました」
別の人間と青年が入ってくる。
「質の良い羊をありがとうございます。今後ともごひいきに」
人間は青年に媚びるように言う。
「こちらも野菜が手に入るのだからお互い様だ。……ん、あれは何だ?」
そう言って青年が指さす。
「あの魔人でございますか?」
「ああ、なぜこんなところに我が同胞が?」
「あれは奴隷にございます。奴隷商人から購入し働かせているのでございます」
「犯罪奴隷か何かか?」
「さあ、そこまでは……」
「そうか。今日のところは失礼する」
そう言って両者は別の方向に捌ける。
一度幕が下りナレーションが入る。
「その夜、野菜農家の屋敷周辺を探っていたサタン・ルシファー・イブリース・ロキ=プルガトリウムは働かされていた奴隷を見つけました」
次に幕が上がると、背景は小屋だった。
みすぼらしい格好をした魔族と青年が舞台に立っていた。
「なぜ奴隷となっているのか?」
「人間に捕まったからさ。人間に捕まったら皆奴隷にされちまう」
「犯罪を犯したわけではないのか?」
「ただ慎ましやかに羊を飼っていただけでこの有様だ」
「なんということだ。なんということだ!」
青年は怒りに打ち震えると舞台から捌ける。
幕が下り、次に幕が上がると背景がちょっときれいな建物になっていた。
野菜農家の人間が座っている。
そこに怒る青年が入ってくる。
「あの者は犯罪奴隷ではないと言っているぞ!どう言うことだ!?」
「さあ、私は野菜売り、奴隷に関してはわかりません」
「そのような物言いが通用すると思うな!あの奴隷は開放してもらおう!」
「あの奴隷はわたしが買ったものです。勝手に開放などされては困ります」
「邪魔立てをするな!」
そう言うと野菜農家の人間から血糊がいっぱい吹き出し、倒れた。
そして青年が屋敷を魔法の炎で包むと捌けていった。
また幕が下りる。
「こうしてサタン・ルシファー・イブリース・ロキ=プルガトリウムは奴隷となっていた同胞を救いました。しかし、それは新たな危機の始まりでもありました」
幕が上がり、今度は草原。
村長と言われた老人が怯えている。
「見ろ、人間の軍隊だ!人間が攻めてきたぞ!」
「村長、そんな騒ぐほどのことではない」
「だが、あんな人数では村が滅ぼされてしまう」
「そんなことはさせん!」
そして、金属鎧に槍をもった兵士が12人ほど舞台に現れる。
「この村に放火と窃盗の犯人がいると聞く。邪魔立てすると許さんぞ。」
そう兵士は威圧するが、青年は動じない。
「放火と奴隷を解放したのは俺だ。逃げも隠れもしない。その代わりにこの魔法を受けてみよ!」
そう言って腕を振るうと兵士がバタバタと倒れていく。
村長は狼狽する。
「なんということを……お前は人間と戦争でもするつもりか!?」
「俺はただ何の罪もない人を救いたいだけだ」
そう言って幕が下りる
「そうしてサタン・ルシファー・イブリース・ロキ=プルガトリウムは奴隷解放への戦いへと身を投じるのでした」
そして幕が上がる
次の場面は牢屋が背景だった。
牢屋にはみすぼらしい格好の人たちがいっぱい入っている。
青年と後ろに魔族が2人、対して人間が兵士姿の者が10人ほど。
「こんなことをして許されると思っているのか」
「許してもらおうなどとは思っていない。死ねっ!」
そうして腕を一振りすると、人間の兵士は全員倒れる。
青年は先頭の兵士の腰に付いた鍵を取ると牢屋を開けていった。
「女は逃げよ。男は槍を取れ!」
そうして女性は捌けていき、男性は魔王の後ろにいた魔族から槍を受け取りその後ろについていく。
舞台上が槍を持った男性でいっぱいになると背景がせり上がってきて、石壁に木の大きな扉が現れる。
「ここが領主の館か!」
中央にいた青年がそう呟くと、振り返って叫んだ。
「領主にも奴隷の苦しみを与えてやろう!」
そう言うと木の扉を魔法で木っ端みじんにしてそこから侵入していった。
人が見えなくなると幕が下りる。
第1幕はそこで終わった。
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