10歳 初心に帰る
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では37話目お楽しみください。
昼食のメニューはパンとコンソメスープ、パースで採れた魚のムニエルだった。
どれもおいしく頂いた。
食堂車で提督と会ったのでお礼を言っておいた。
「提督ありがとうございます。おかげで暇もつぶせそうです」
「それは良かったです。何か面白いことはありましたか?」
「北方で誘拐が多発しているとか。提督もかわいらしいので誘拐されないようにしてくださいね」
「それはイツキさんも同じことです。気をつけましょう」
食事が終わったら部屋に戻ってテレビを見る。
代り映えのしないニュースの後、サッカーの試合が始まった。
パース対シドニー、シドニーのホームゲームだ。
観客は赤と黒のレプリカユニフォームとマフラーをして応援している。
やがて両チームの選手が入ってくる。
シドニーは赤と黒の横縞、対するパースは白地に袖だけ紫という出で立ち。
シドニーはセンターバック2人に両サイドバック、1人のボランチ、4人の攻撃的なミッドフィルダーに1人のストライカーという布陣。
対してパースは3人のセンターバック2人のボランチで正面を固める。攻撃的なミッドフィルダーは2人でフォワードはウイング含め3人の布陣だ。
まず、パースのキックオフで試合が始まる。
センターバックのラインにまでボールを下げたパースにシドニーのフォワードがプレッシャーをかける。
2人のボランチにはシドニーの4人のミッドフィルダーがぴったりついている。
そこでパースは1枚飛ばして攻撃的ミッドフィルダーにボールを当てる。
シドニーのセンターバックがカバーしようとするが、つかれる前にパースはフォワードにパス。
キーパーとの1対1になり、フォワードはきっちり決める。
1対0。
そうなるとパースのペースなのか、ボランチを下げて5バック気味にして守る。
シドニーは何とか追い付きたいがサイドはしっかり守られているし、正面も固められている。
なので、早目に長いクロスを上げてフォワードに託す作戦になった。
ただ、やはり長いクロスなので精度を欠くため、パースの守備陣にはじき返される。
その弾いたボールをパースは取り、ロングボールでカウンターを狙う。
フォワードが守備陣よりも前に行ければ勝ちの単純な勝負だ。
右のウィングが上がったボールを中央に蹴り込み、中央のフォワードは足が合わなかったのかこれをスルー。結局反対側のウィングが蹴り込み2対0.
客席からブーイングが出る展開となった。
シドニーはアーリークロスも行いつつ、パースのディフェンスラインの前にいるミッドフィルダーに疲労を強いる作戦に移行、マークできるかできないかというところでパスを回す。
やがてマークしきれなくなったのか、パースのディフェンスラインとミッドフィルダーの間にスペースが生まれた。
そこにシドニーのフォワードが走り込み、ディフェンスラインの突破を試みるも倒され、ペナルティエリア近くでのフリーキックとなる。
パースはゴール正面に6人の壁を作り守る。
シドニーは直接ゴールは狙わず壁をかわすように横にパス、そこにカウンターに備えていたボランチの選手が走り込んできて蹴った。
これが決まって2対1、まだまだわからなくなってきた。
次はパースのキックオフ。
センターバックまで戻して攻撃を組み立てようとするがここでパスミスが出る。
これを拾ったのはシドニーのフォワード。
そのまま持っていくと最後は横パスで走り込んできたトップ下の選手が決めて2対2。
その後も惜しいシーンはあったものの前半終了。
(やっぱりサッカーは面白いね)
「ねえ、イツキ。それって面白いの?ただ球を蹴ってるだけの様な気がするけど?」
「確かに球を蹴ってるだけですね。でも、そこには戦略があるんですよ」
「ふーん」
アウィスは興味なさそうだ。
ハーフタイム中はリプレイとニュースだ。
そのニュースの中で、情勢の変化が見られた。
「魔王国政府は本日10月29日の定例会見で戦闘が激化するインドシナ半島の情勢に触れ、人間が獣人の領土を侵犯することは到底容認できない。近日中にしかるべき対応をとると述べ、事実上インドシナ半島への陸軍の派兵を認めたことになります。これについて専門家はインドシナ半島が内陸部に山地があることから守りやすく攻めにくい土地柄であり、派兵をした場合多数の戦死者が出るとの見方をしております」
「何か今度は陸軍が戦争するみたいだよ」
「海軍ばっかりが勲章をもらったから意地になって功績を取りに行くんじゃないの?」
「そうかもしれない。けど、それじゃ、死んじゃう兵士が浮かばれないね」
そのあとサッカーの後半戦が始まり、結局シドニーが3対2で勝利した。
その後はラグビーの試合をやっていた。
「今日って、なんかイベントがあるの?」
「今日は日曜日でお休みよ。だから、スポーツ観戦とかに皆行くのよ」
「そうなんだ、今日が日曜日ね」
(そういえば、金曜日の夕食はカレーだった気がする)
そんな事を思いながらテレビを見ていると、夕食の用意ができたことを車掌から告げられて食べに行った。
メニューはパン、コーンスープ、ステーキだ。
野菜があんまりないと思いながらも全部美味しく頂いた。
パンが特に美味しかったので聞いてみたら、食堂車に専用のパン窯があるそうだ。
なかなか豪勢なことをする。
部屋に戻ったらまたテレビを見る。
ニュースはどこぞの町で強盗事件が起こったことを伝えていた。
(日本の警察は優秀と聞いていたけど、ここはどうなのかな?)
そんな事を思いながらイツキは外を見た。
線路の周囲は緑だが、遠くは茶色い砂漠だった。
(まだまだ内政する余裕はあるよ魔王様)
そんなことを思っていたら駅に着いた。
車内放送が流れる。
「現在メレディンの駅に停車して機関手の交代と食料の補充を行っております。すぐに発車いたしますので下車なさらないようにお願いいたします」
メレディンってどこだと思ったがパンフレットによればまだまだ西側だ。
テレビを見ていると今度は音楽番組をやっていた。
そこで、イツキは自分の聞いたことがあるような曲が流れる。
クラシックの名曲モーツァルトのレクイエムディエスイレである。
イツキは曲名は知らなかったが、曲だけは知っていた。
次に流れたのはとあるアニメのオープニングLILIUM。
エロいグロいと言われて敬遠されがちだったが、イツキは見ていた。
懐かしさに涙がこぼれそうになる。
最後に流れたのは某エースなコンバットの5作目のラストステージの曲だ。
イツキが戦闘機乗りを目指そうとしたきっかけになったゲームだ。
思わず口ずさんでいたら、アウィスが怪訝そうに聞いてきた。
「知ってる曲なの?」
「この曲は、私が飛びたいと思ったときに聞いた曲だから……」
イツキはちょっと泣いていた。
「大丈夫?」
アウィスが心配してくれる。
「うん、思い出して泣いてるだけだから、何ともないよ」
「そう歌詞が全然分かんないんだけど?」
「ラーズグリーズって飛行の天才が歴史の変わり目に現れる。初めは悪魔としてその力で大地に生きる者に死を与えやがて死ぬ。そしてしばらくの眠りの後にラーズグリーズは英雄として再び現れる」
「そのラーズグリーズって何者?」
「さあ、物語の中の話だからね。わたしの聞いたところでは4人組の飛行魔法使いだったよ」
「ふーん。ねぇ、私達がそのラーズグリーズになれると思う?」
あのゲームでも、最初は新人パイロットだった。
それが救国の英雄になったのだ。
「努力次第としか言いようがないよ」
「そうね。がんばらないと」
そうだ。
がんばらないと。
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