10歳 パース滞在
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では35話目お楽しみください。
ポートヘッドランドへ到達した一行は11日間の航海を経てパースへ到着する。
それまでの日々はいつもどおりだ。
朝起きて朝食、コーヒータイム、ラジオ体操、ストレッチ、ランニング、昼食、ランニング、ストレッチ、夕食、就寝とパターンになっている。
魔王国本土沿岸を移動するので、毎日新聞が届けられる。
新聞を読むために、コーヒータイムが伸びた。
しかし、わかったこともある。
魔王国というのはオーストラリア大陸を支配している国家で、ニュージーランドや東南アジア、オセアニアや日本、サハリン、千島列島は同盟国もしくは属国という扱いになっているということだ。
アウィスの家は魔王国の属国である日本のソルフィリア領の統治を魔王に認められているということになる。
漢委奴国王と同じような意味だ。
また、新聞を読んでいてきな臭さを感じるのはインドシナ半島からマレー半島へ避難する難民がいるということだ。
つまり、人間の支配がもうそこまで来ているということに他ならないと記事では書いていた。
マレー半島には獣人の国家があるらしく、そこと魔王国は同盟関係にあるらしいので、救援要請があれば出兵せざるを得ないとも書いていた。
まあ、マレー半島は入り口が細いので、陸上戦で防壁を固められたら容易には突破できないだろう。
また船についても、製造スピードがどれくらいかはわからないが、海賊を倒したことから少数しか所有してないと希望的観測をする。
つまり、当分の間はマレー半島の獣人の国は安泰ということだ。
ただ、経済欄にインドシナ半島で採れる黒砂糖、米、コーヒーは値上がりすると書かれていた。
「コーヒーを値上がりさせるとは、人間め!許さん!一人残らず殲滅してやる!」
とイツキが言ったとか言わないとか……。
それから面白い記事もあった。
上司になってほしい人ランキングでヴェパル提督が3位に入っていた。
ちなみに1位は魔王様、2位が筆頭将軍のロンガ様、他の人は知らないが、演劇集団の団長さんやサッカーチームの監督さんが選ばれているらしい。
(サッカーってあるんだ。魔王様発信なのかな?)
そんなことをイツキは思った。
そんな東南アジア情勢や面白い記事を見て過ごしていたら、パースに着く寸前となっていた。
パースの港に到着する前日に、ブリーフィングが行われた。
「パースから魔王城までは鉄道で移動することになります。鉄道の乗り場へは埠頭から規制線が引かれますので徒歩で移動することになります。飛行魔法は使わないようにお願いします。騎獣については機関車の後ろ2両を確保しましたので、そこでローテーションして休憩をとってください。一部の人は私と同じ1等車に乗ることになります。海賊船での先行を基準に選んでいますので、乗れなかったと不満を言うことがないようにお願いします。以上です」
そんなヴェパル提督の言葉があった。
「1等車か、どんな所なんだろう?」
部屋に戻るとアウィスがそんなことを言っていた。
「兵を乗せて運ぶんだ。こことそれほど変わりはないだろう」
アモルが答える。
「全く夢のない話ね。もうちょっと夢はないの?」
「過大な夢は身を滅ぼすだけだ」
そんな事を話していると、提督がやってきた。
「内密にお話が合ってきました」
「提督が直接足を運ばれるなんて、どのようなご用件でしょうか?」
こういうときの対応は母ウルラに任せてある。
「イツキさんとアウィスさん、ウェントゥスさんとアモルさんは下船の時、私と艦長の後ろについてきてほしいの」
「それは……提督の指示であれば従いますが、一体どうしてでしょうか?」
「勲章の序列の問題です。一番上が私で二番目に艦長とイツキさん達4人。その後に二十数名で一等車に乗りこみます。預けてある荷物はありますか?今のうちに取ってこさせますが」
「わたしは手に持つだけです」
「私も」
「私もです」
「私もだ」
「よかったです。では下船の際は手荷物を持って甲板に集合でお願いします」
そう言って提督は帰って行った。
「私は一人だけ3等なのね……」
ウルラの機嫌はなかなか良くならなかった。
翌朝、パースに着くと入港の鐘が鳴らされた。
「ではおかあさん。また魔王城で会いましょう」
「ええ、その時は苦労話をたっぷりしてあげるわ」
そう言ってイツキはウルラと別れた。
甲板には提督と艦長と思われる方、他二十人位と作業している兵士さんがいた。
「提督、おはようございます」
「おはようございます『杖持ち』さん。では、艦長の後ろにお願いしますね」
と言われたので、艦長と思われる男の人の後ろに着く。
順番は年齢順でアモル、アウィス、ウェス、イツキだ。
「タラップ固定しました」
「下船開始します」
先導の兵士さんが一人タラップを降りると、提督から降りていく。
提督はいつもの水槽には入っておらず、飛行魔法を使っていた。
ただし、超低空でこすれないか心配になるぐらいだった。
提督に続いてみんな降りていく。
埠頭には多くの人か詰め掛けていた。
船に家族が乗っている人もいるだろう。
魔王国の旗を振っている人もいた。
記者の人もいるのか時々フラッシュがたかれる。
下りて200メートルも歩くと駅があった。
レンガ造りの東京駅を思わせるような建物だった。
中に入ると正面に改札口があった。
もちろん自動改札ではない。
そこをフリーパスで通ると、左のほうに進んでいく。
いちばん奥が1等車らしい。
中に入ると、片側通路式の寝台車でスライドドアが付いている。
部屋の入り口には名前が張られており、1部屋に4人寝ることがわかった。
提督は一番後ろの展望室で、船長と2人で過ごすらしい。
ちなみに提督と船長が付き合っているということはなく、ビジネスライクな関係らしい。
イツキ達は展望室の隣になった。
4人一緒だ。
中に入ると船のなかよりも明らかに豪華な木製の2段ベッド。
天井も高く翼をもつ人にも十分に配慮された設計になっている。
各自自分のベッドを決めると、下のベッドに座った。
入って右下がアウィス、右上がイツキ、左下にアモル、左上にウェスとなった。
部屋を見回して、アウィスは誇らしげに言う。
「ほらね。豪華になったでしょ」
「誤差の範囲内だ」
「確かに3段ベッドから2段ベッドに進化したけど、あんまり変わりないんじゃない?」
アモルとイツキに否定されアウィスは意固地になった。
「この木の質感とか、歴史を感じない?」
「パンフレットに1年前に作られたって書いてあるけど……」
ウェスがとどめを刺しにくる。
「新しいってことはいいことじゃない!」
とよかった探しをしているアウィスを後目に外を見ると、人がぞろぞろ車両に乗っていた。
その中にウルラもいた。
イツキは窓を上にスライドさせて開けると叫んだ。
「おかあさん!」
手を振るとウルラも手を振り返した。
どこに乗るかはわからないが、この列車に乗ることは間違いないことにイツキは安堵した。
「恋しいのか?」
「違います。心配してただけです」
そう言うと窓を閉めた。
「ところで、この鉄道ってどんな仕組みで動かしてるんですか?」
「パンフレットによると、4人の魔力を合わせて動かすみたいですよ」
ウェスがパンフレットを見ながら教えてくれる。
「魔力を合わせてこんなに大きいものを動かすって想像できる?」
「できませんね」
ウェスは即答した。
「まぁ、先頭に行けば分かるかもしれないけど、騎獣がいるんでしょ?見に行けないならこの便利さを享受してもいいと思うけど?」
「まあ、確かにそうですね。パンフレット後で貸してもらえます?」
「わかりました。あと、読む物なら利用規約なんかが入ってたんですけどどうします?」
「読みましょう。気をつけなきゃいけないこととかあるかもしれませんし」
そうして鉄道の旅は始まった。
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