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10歳 提督と修行その1

評価とブックマークありがとうございます。

これを励みに頑張っていきたいと思います。

他の方も評価、ブックマーク、感想、レビュー、活動報告へのコメントなどいただければ幸いです。

では32話目お楽しみください。

 ディリを出港して7日後、船はついに魔王国本土へと到達することになる。

 とはいったものの、イツキにあまり感動はなかった。

 というのも、7日間とはいえ1日1日の積み重ねだからだ。

 1日ランニングしたりストレッチしたり食事をしたり……。

 そういったことの繰り返しが日々の成長につながるのだ。


「アウィス、見てください真っすぐ伸びてるでしょ?」


 ストレッチの結果、イツキの足は180度開脚できるようになっていた。


「ああ、はいはい。すごいすごい」

「何でそんなつれない反応なんですか?すごいことでしょう?」

「なんでも何も、勉強中に連れてこられたらそうなるでしょ?」


 アウィスは相変わらず魔法陣の勉強をしていた。

 速度上昇の魔法陣を習得してから、更にのめり込むようになっていた。

 最近では、風魔法の効果上昇を羽団扇に付属することで威力上昇を量るということも行っていた。

 人は日々進化するものだ。

 イツキもストレッチの成果だけではなく、杖を持った状態でのランニングにも成果が出ていた。

 腕の筋肉がついたのか、重たい杖を持ってランニングしても下に落ちることが無くなった。

 また、ランニングにしてもアウィスやウェスに置いていかれることが無くなってきていた。

 では魔法はどうなのかといえば、比較対象が難しかった。

 ウェスのキャベツを千切りにする魔法は気にはなったが、実戦で使うようなものではない。

 イツキは御遊びの魔法だと切り捨てていた。

 アモルの誘惑や暗示の魔法は使えればそれなりに役に立つだろうが、戦闘の役に立つ魔法ではないと思った。

 アウィスの風魔法は威力は十分だが、魔法の変換効率が悪すぎる。

 2発撃ってさようならでは地上戦で人間の反撃を許すことになる。

 そういうことも考えて、イツキはこの船で最高の魔法使いと思われる人の元を訪れた。

 ヴェパル提督である。


「それで、魔法が勉強したいと?」

「はい。提督なら私の知らない魔法も知っているかと思いまして。」

「……いいでしょう。ですが、私の修行は厳しいですよ」

「心しております」


 そうして修行の日々が始まった。

 まずやらされたのは水弾のコントロールと威力増強だった。

 ヴェパルは使われなくなった木箱の板を持ってきて、上に放り投げる。

 イツキはそれに向かって水弾を飛ばす。

 この訓練、木の板を弾いては駄目なのだ。

 水弾を当て、なおかつ穴を開け、提督の手元に木の板が戻るようにしなければならない。

 細く、そして強く水を木の板に当てなければいけなかった。

 弾いては駆け足で取りに行き、海の上に落としては飛行魔法で取りに行く。

 それの繰り返しだった。

 そんな中で考えたのは如何に板の平らな面に垂直に当てるかである。

 無造作に放り投げられた板は回転する。

 そんな中で板の平らな面を如何に狙うかを考えた。

 放り投げられる板。

 よく観察して水弾を撃つのを止める。甲板の上に板が転がったのでそれを拾って提督に手渡す。


「どうしました?もう終わりにしますか?」

「いえ、うまく当たる位置が見えなかったもので……。もう1回お願いします」

「……ちなみに今の回転であれば3回は撃ち抜けます」

「そうだったんですか!?」

「よく見て狙ってくださいね」


 そう言って提督は板を放り投げる。

 今度は規則的な回転で、常にこちらに板の平らな面が見せられていた。


(これをできないと先に進むことなんてできない)


 そんな思いを強くして水弾を撃った。

 水弾は板の真ん中に1センチほどの穴を開け、提督のすぐそばに落っこちた。


「すみません、提督。もう少し水弾を細く、小さくしなければいけませんね」

「その通りです。水弾は弾く以外に貫くという作用も持っていることに気づいてくれればいいです。さぁ、日暮れまで続けますよ」


 そう言ってその後も規則的な回転で板を投げてくれた。

 貫通痕は5ミリにまで減少したが、提督に言わせると1ミリを超えてからが勝負なのだとか。

 お手本を見せてもらうと、ほとんど見えないような穴が開いていた。


「このレベルまで頑張ってくださいね」


 そう言われては頑張るしかない。

 夕食の時も夜ストレッチしている時もイツキは魔法のイメージを深める。

 イメージするのは水の分子だ。

 酸素の体に水素の足。

 そして、別の分子の酸素と水素が引き寄せあう水素結合。

 それが水の性質だ。

 イツキは寝る間も惜しんで魔法開発に取り組んだ。

 見えないものを作ることはなかなか難しかった。

 しかし、何十回の試行により、見えないが何かそこにある状態を作り出せた。

 後はそれを固めるだけだ。

 そこでふと考えた。

 水は通常でも水素結合によりくっついたり離れたりを繰り返している。

 その中で、ベンゼン環のような6角形や8角形になるのではないか。

 そして、水素結合を働かせるために、2層目以降は下が水素であれば酸素に、酸素であれば水素にすればなかなかいけるのではないかと思った。

 そうして、グラファイトの様に積層構造を作り、細長くしたイツキの見えない水の槍ができることになる。


「これはまたすごいものを持っていますね」


 翌朝の提督の言葉である。

 提督には見えていた。


「ひとまずやってみますか」


 そう言うと規則的な回転で板を投げてくれた。

 イツキは水の槍となった水弾を、加速の魔方陣を五重にも使って板に向かって放つ。

 ドーンという音とともに水弾が当たった後、板は提督の元に戻る。


「かろうじて開きましたけど、もう少し太いほうがいいですね」

「はい」

「では続けましょう」


 そう言って提督はまた規則的な回転で板を放り投げる。

 今度のイメージはワイヤーロープだ。

 単発の水の槍の周りに別の水の槍を配置し束ねることで太くする。


「シュート!」


 掛け声とともに太くした水の槍を板に突き刺す。

 やはりドーンという音とともに板が提督の手元に戻る。


「これはいいですね。合格です。今の感覚を忘れないでください」

「はい!」

「次は波ですね。船尾楼に移動しましょう」


 ということで船尾楼の上にやってきた。

 船の軌跡に白い波が立っている。


「さあ、大きな波を作りましょう」


 そう言われたので、大きな水の壁を作って、それを倒すことで波を作る。

 提督は首を振った。


「波を作るには、海から水を引上げ、落とすと同時に押し下げることが必要です」


 そう言うと提督は手本を見せる。

 海の水を船尾楼の上の高さまで上げると落す。

 そして、海面を下に押し下げるとまた水を高く上げて落とすことを繰り返す。

 すると、船の後ろに見事な大波が発生した。


「では始めてください」


 ということで真似をしてみる。

 イツキは気圧を操作して、船尾楼後方にほぼ気圧なしの空間を作った。

 そしてそこに海水を吸い上げると、気圧を高めて押し込んでいく。

 高さはそうでもないが深い波ができた。


「やり方が違いますよ。海水を操作して上に持ち上げたり、下に沈めたりするんです」


 提督のチェックが入ったのでやりなおす。

 まず海面を意識し、そこから釣り糸を巻き上げるように水を持ち上げていく。

 そして、今度は下から引っ張られるように水を下に押し下げた。


「やっぱりやり方が違います。難しいんでしょうかね?こうやるんですよ」


 そう言うと提督は入っていた水槽から水球を浮かばせる。


「水自体が浮くということを納得してもらえないと次に進めませんね」


(水が浮く?どういうことだろう。浮く気体は空気より軽いものがあるが、液体は重いから浮くことはない。では、気体より軽い液体があるとしたら浮かぶんじゃないか?つまり力の及ぶ範囲の及ぶ範囲で重力の作用を抑える魔法を使って水を軽くして上に浮かばせる。逆は重力を強く作用させ下に沈める。そういうことだろう)


 まず提督の入っている水槽で試した。

 ある一角だけ水にかかる重力を抑える。

 すると水が浮かび上がり、球体を作った。


「どうでしょう?」

「うーん、ちょっと違うんですよね。水に浮くという性質を付与するんです」


 結局その日はそれで修行は終わった。


お読みいただきありがとうございます。

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