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10歳 ディリ観光

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では31話目お楽しみください。

 ダバオを出港して10日、船はティモール島ディリに入港した。

 午前中に着いたので、出港は翌日だ。

 それでもイツキの母ウルラとアモルは迷わず高級な宿を確保した。

 ここでも事前に兵士たちから情報を得ていたらしい。

 埠頭には相変わらず大人数の記者さん方がいた。


(仕事熱心で結構なことだね)


 そんな人混みを上から見下ろすと、ホテルの前でウルラ達と合流する。

 ディリには、海岸線沿いに野菜の市場や魚の市場があった。

 見て回りながら美味しそうなものを食べていき昼食とする。

 塩焼きはとても美味しかった。

 焼き鶏みたいな料理もあった。

 鶏肉を香辛料で作ったたれで漬けて焼いた料理だった。

 鳥だけではなく牛やヤギの肉もあった。

 大変美味しく頂きました。

 コーヒー屋さんもあったのでコーヒー豆を補充しておいた。

 フルーツもいっぱいあった。

 やっぱり南国特有というのか、マンゴーやバナナ、スイカなどが置いてあった。

 ただ、サイズが大きかったので、周りの人にもおすそ分けしながら歩いて行った。

 進んでいくと、独特の織物を売っている店が並んだ通りに出た。

 バッグやアクセサリーの加工品として売っている店が大半だったが、布地として売っているお店もあった。

 そのなかで、いい布を見つけた。


「あれなんかウェスに似合うんじゃない?」


 それは、青と緑のカラフルな模様の入った綿織物だった。


「いい色ですね。自然の恵みを感じます」

「これで服って作ってないのかな?」


 探してみるとあった。


 Tシャツだ。

 綿織物なので肌にも優しい。


「ウェスはその一張羅しかないんですか?」

「はい、なので暑くて暑くて。でも、いい物を見つけました。」


 とりあえずそのカラーでウェスが着られるものはすべて購入した。

 ブカブカなものもあったが、パジャマにでもすればいい。

 そうして、5人はホテルに戻ってきた。

 オーシャンビューのきれいなところで、海側にプールがある。

 泳ぎたいイツキと暑いウェスは水着をレンタルして遊んだ。

 ゆっくり水に浸かっていると、ウルラから夕食の時間だと伝えられた。

 名残惜しくもプールから上がり、着替えて部屋に戻るとシャワーを浴びる。

 その後の夕食はバイキング形式のものだった。


(バイキングは流行りなのだろうか?それともこれが一般的?)


 そんなことをイツキは考えつつ、料理を選んでいく。

 主食はナシゴレンにした。

 後はちょっと辛そうな赤いスープに魚のフライ。

 デザートにココナッツミルクを寒天で固めたものに、さらにココナッツミルクをかけたものをいただいた。

 ナシゴレンは揚げたお米だが、スパイスが効いてるのか結構辛い。

 スープをいただく前に魚のフライを食べ、辛さを押さえてからスープに挑む。

 トウガラシやニンニク、トマトの効いたスープは辛さもあったが飲める範囲で助かった。

 デザートは濃厚な甘みと濃厚な甘みがぶつかったものだ。

 食後に紅茶がなければ甘さで死んでしまうところだった。

 他の5人も思い思いの物を食べている。


「アウィス、それ美味しい?」


 訊いたのは、取る時に甘い匂いのした白米だった。

 実はココナッツミルクで炊いたお米だった。


「なかなか甘くておいしいわよ」

「そう。よかったね」

「一口食べる?」

「いや、止めとく」


 ウェスはカレーの様な料理を食べていた。


「ウェス、何食べてるの?」

「これですか?ルンダンっていうらしくて、赤いんですけどあんまり辛くないんですよ。食べてみます?」

「じゃあ一口」

「では、あーん」


 スプーンで1口分すくってくれている。


「あーん、あむ」


 確かに香辛料の辛さも感じるけど結構甘い。


「ありがとう、ウェス」

「いえいえ。どういたしまして」


 そんな様子を釈然としない目でアウィスが見ていた。

 そんなことを話しながら夕食を済ませると、お風呂に入って就寝だ。

 バスローブを着けてベッドに飛びこむ。

 なんだか無性におかしくてイツキは一緒に飛びこんだアウィスとウェスと笑いあった。


「明日も早いんだからすぐに寝なさい」

『はい』


 ウルラの注意に3人の声が飛んだ。

 翌朝、朝食を食べるとチェックアウトし、船に飛んでいく。

 埠頭は相変わらず混雑していた。

 部屋に戻るとウェスが着替え始めた。

 新しく買った服のお披露目だ。

 ズボンは勝ってないので上だけになるのだが、ウェスの一張羅は上下一体の物。

 バンツが見えるが気にしてはいけない。

 ウェスは一番大きなTシャツを着た。

 胸元が見えそうになるし、袖も7分丈みたいになっている。

 裾も太ももの辺りまであって、見えそうで見えない感があって素晴らしかった。


「ウェスはいつお嫁さんに出してもいいね」

「ええっ!何でそんな話に?」


 予想外の反応にウェスは驚いていた。

 さて、出港時のトレーニングはもう確立したと言っていいだろう、ラジオ体操とストレッチだ。

 それを終えたら、食堂で新聞を読む。

 久しぶりに読むから話題が変わっているだろうと思ったら、また私たちの記事だった。


 〈ヴェパル中将 旭日大綬章受章決定〉

 〈独占スクープ 海軍新エースは新米!?〉

 〈海軍省 勲章受章者多数決定〉

 〈焦る陸軍省 将軍会議での発言力低下を懸念〉


「提督、勲章をもらえるんですね」


 いつも新聞を読むと一緒にいる竜人と話す。


「まあ、海賊相手とはいえ規模が規模だったからな。それを1隻で打ち負かしたんだからやらない方がおかしいだろう」

「好戦的になるでしょうに。ちゃんと制御できるんでしょうかね?」

「それは魔王様次第だな」


 とりあえず読んでみた。


 〈魔王国政府のプレス報道官は10月9日の定例会見で去る9月17日の海賊討伐で戦功が大きかった特別輸送艦隊司令官のヴェパル中将に旭日大綬章が授与されることが決定したことを明らかにした。また、海賊討伐の際に臨時に編成された飛行魔法使い隊の隊員についても旭日重光章が授与されることが決定したことが伝えられた。その他、残敵掃討に貢献をしたものについては旭日単光章が授与されることが決定したことを明らかにした。これにより、海軍閥の勢力は増すものと考えられており、新たな戦艦の建造が行われるのではないかと言われている。それを受けて、戦艦の建造を一手に引き受けているトリアロンブス工業の株価が一時急騰した。トリアロンブス社の広報によれば、「現在のところ追加で発注するという連絡は受けていない」とのことだった。〉


「旭日重光章ってどれくらいの勲章なんですかね?」

「俺らがもらえるかもしれない旭日単光章の4つ上で、ヴェパル提督のもらう旭日大綬章の1つ下だ」

「いまいちよくわかりませんが、すごそうってことは理解しました」


 次に2つ目の記事を読んでみる。


 〈太陽新聞の取材により、海賊退治で一番槍となった飛行魔法使い隊が新兵であることが分かった。当新聞では戦艦レヴィアタンに乗船しているものの情報を精査。既存の乗組員では飛行魔法は使えても長距離攻撃を行うための部隊を編成することはできないことが分かった。そのことから、飛行魔法使い隊のメンバーには現在徴兵中の新兵が含まれている可能性が高いと言わざるを得ない。このことについて海軍省に問い合わせたところ、回答することはできないとしている。〉


「うーん、ちょっとばれましたね」

「まあ、勲章を誰がもらったかは遅かれ早かれ公開されるものだからな。いつかばれるさ」


 新聞から情報を集めたのでみんなに話をしに行く。


「旭日重光章……ってなに?そんなにすごいものなの?」


 これはアウィス。


「旭日重光章ってどんな勲章なんでしょう。私の服に似合うかな」


 これはウェス。


「旭日重光章をもらえるなんて思ってもみなかった。大快挙だぞ。もう少し喜べ」


 これはアモル。


「私だけやっぱり除け者?」


 これはウルラ。


 航海はもう少し続く。

 次の寄港予定地はポートヘッドランド。

 魔王国本土だった。


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