10歳 新しい硬貨、新しい鞄、新しい聞、新しい成果
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では30話目お楽しみください。
部屋に戻ると、母ウルラとアモルが魔法の実験を行っていた。
「やっと帰ってきたか、心配したぞ。」
アモルは声を掛けるだけだったが、ウルラはイツキに飛びついた。
「アウィスちゃんからカジノで遊んでるだけだから心配ないって言われてたけど、こんな遅くまで遊んでちゃだめでしょ!」
「ごめんなさい、おかあさん。心配をかけました。あと、見てもらいたいものがあるのですが」
そう言ってイツキは青い硬貨と四角い金貨を取り出す。
アモルは青い硬貨に反応した。
「おお、ミスリル貨じゃないか?私も始めてみたぞ」
「この青いのがミスリルなの?」
「ああ。ドワーフのみが作ることができるという伝説の鋼だな。本物なら100万サタナスミスリル貨だ」
ウルラは我が子がそんなものを持っていたことに驚くと同時によからぬことに巻き込まれていないか心配した。
「そんなものどうしたの?」
「カジノでもらってきました」
「そんなに勝ったら出禁になるぞ」
「気をつけます」
「もう遅いけど、体洗って寝るのよ」
「はい」
そういってイツキは晩い風呂に入る。ちょっとぬるかった。
お風呂から上がり、バスローブを着るとベットに入る。
晩いこともあって眠かったので、すんなりと就寝できた。
翌朝は叩き起こされた。
眠い目をこすりながら朝食をとる。
とりあえずパンとコーヒーだけ摂った。
朝食が終わったらチェックアウトし、鞄屋さんにゴーだ。
この辺りで目も覚めてきた。
鞄屋さんに着くと作ってくれた鞄を見せてもらった。
肩下げ紐のついたトランク、開けると底は宇宙空間のように見えた。
「これって仕舞うのは入れればいいんでしょうけど、取り出すときはどうすればいいんですか?」
「鞄の中に手を入れたときに中に入っているものが頭に浮かぶんだ。そこで、出したいものを考えながら手を引き出せば取りだせるというわけさ」
(そんな風になっていたのか!)
とりあえず、アモルさんからコーヒーセットを取り出してもらって中に入れてみる。
中に入れるのは順調、取り出すことを試みる。
手を宇宙空間みたいなところに入れるとリストが思い浮かんできた。
とりあえずコーヒーカップとソーサーのセットを取り出そうとすると、何かが手に触れた。
それを掴んで取り出すとコーヒーカップとソーサーを入れた箱が出てきた。
「なんとなくわかりました。ありがとうございました」
「なに、また来るといいさ」
その声を聞きながら船へ飛ぶ。
やっぱり埠頭には人がいっぱいいたが、飛んでいるイツキ達には関係のないことだ。
部屋に戻ると、アモルさんに持ってもらっていた物を受け取る。
具体的にはドライフルーツの瓶とココナッツの化粧品と石鹸だ。
魔法のトランクの中に入れると、午前中はランニングはできないので、次はアウィスとウェスを連れてトレーニングルームで体操とストレッチだ。
ランニングできないのでトレーニングルームには人がいっぱいいた。
「よう『1,000人殺し』、あの魔法具は持ってきてるのか?」
「はい。皆で体操しましょう。手を広げて当たらないくらいの間隔は取ってくださいね」
その言葉で、間隔を広げようとするものの、人が多すぎて入りきらなかった。
「何回かやりましょう。後ろの人はウェイトトレーニングをするか外で待ってて下さい」
そういうと、皆十分な間隔が獲れるようになったようだ。
イツキは魔法具を起動する。
ラジオ体操が始まった。
ラジオ体操が終わったら人を入れ替える。
後ろにスペースがあることを考えると2回でよかったようだ。
イツキは2回目のラジオ体操を行った。
ラジオ体操の後はストレッチだ。
1人でできるストレッチをやっていると周りの人も真似をしてストレッチをしていた。
それが終わったら食堂に行く。
もちろん、食事ではなく新聞を見るためだ。
〈魔王政府 海賊討伐者に勲章を検討〉
〈勲章授与へ 東南アジア海賊討伐〉
〈海賊討伐の立役者 勲章を検討 特進については否定〉
〈大きさはどうなる? 海賊討伐者の勲章〉
「ああ、勲章もらえるのでしょうかね?」
「勲章は間違いないだろうな」
近くにいた竜人はそう答える。
もうちょっと良く読んでみる。
〈魔王国政府のプレス報道官は9月28日の定例会見で、去る9月17日の海賊討伐で戦功が大きいとされる者について旭日章の授与を検討していることを明らかにした。等級については未定としたものの、特別輸送艦隊司令官のヴェパル中将の明かした小規模の飛行魔法使い隊に所属していたメンバーについては高い等級の勲章が授与されるものとみて間違いないだろう。一方で、中将が要望していた特進についてプレス報道官は特進は死者に対する手向けとの見解を示し、事実上これを否定した。これについて軍事専門家であるぺリトゥス氏は以下の様に述べている。「未曾有の勝利に貢献した者に対して勲章が授与されることは当然である。特進についても同様で、政府は死者に対する2階級の特別昇進を基に否定しているが、能力のあるものが上にいけないことは国にとっても本人にとっても不幸なこと。海軍省としては昇進させたいのではないか。」現在その魔法使い隊を乗せている戦艦レヴィアタンはダバオの港である。魔王新報としては今後の動静を注視する構えだ。〉
「わたしは上に立った方がいい者なんでしょうか?」
「上に立つものが優秀なのは下の者にとって幸福なことだ。今でもいろんなものを作って貢献したり、あの戦いでも味方に損害なく敵を倒せたじゃないか。十分に上に立つ資格があると思うがね。」
そんなことを後ろから近づいてきた兵士さんが言う。
「そういえば他の人の勲章についてはどうなんですかね?」
「まぁ、1番低いのがもらえるかもらえないかだな。それがどうかしたか?」
「いえ、自分達だけ貰うのも申し訳なく思ったので」
「気にするな。自分の手から離れたものをどうこう言っても仕方ないじゃないか」
宮仕えの人が言うと含蓄があると思ったが、自分も宮仕えだったことを忘れていた。
とりあえず勲章がもらえるかもしれないことを皆に伝えると、反応は様々だった。
「勲章だなんてそんな……着ていくものとかどうしよう?」
これはアウィス。
「勲章ですか……それって簡単にもらえるものなんですかね?」
これはウェス。
「あれだけのことをしたんだ、当然のことだろう」
これはアモル。
「私だけ除け者?」
これはウルラ。
ダバオを発ち、次の寄港予定地ディリまでは10日の航海を予定していた。
その間に喜ばしいことが2つあった。
まず、アモルに頼んでいたデータリンクの魔法が完成したのだ。
5人で生命探知で船が探知できないところまで飛んで、イツキが魔法を発動させた。
すると、他の4人は生命探知で探知できなかった範囲の生命反応も探知できたことに喜んでいた。
船に戻るとイツキはウルラと話した。
「この魔法はおかあさんこそ使うべき魔法です。遠くから敵を見つけその情報を味方に伝える要です。そういったことができるようになりましょう」
「自分の子供にそんなこと言われるなんて思ってもみなかったわ。わかった。やってみるわ。お母さん譲りで目がいいのよ、私は」
そう言ってウルラは魔法の練習と遠くを見る訓練をしていた。
次の喜ばしいことはアウィスが飛行加速の魔法陣を使えるようになったことだ。
まだ、魔法陣の維持に気をつけなければいけないが、そのうち余裕も出てくることだろう。
試しに競争してみたら、イツキの圧勝だった。
「何でそんなに早いのよ!?」
「転生の才能とアウィスが使えるようになった魔法陣をいくつも使ってるからです」
「それってただ単純にいくつも魔法陣を出せばいいだけ?」
「はい。重要なのは魔法陣の向きをまっすぐそろえることです。頑張ってください」
「いつか勝ってやるわ!」
そんなことをしながらディリへの航海を楽しんだ。
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