10歳 サキュバスの魔法
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では21話目お楽しみください。
最終的にアクセサリーショップで購入したものは以下のとおりだ。
イツキは2つの黒い蝶型のバレッタでツインテールにし、耳には赤いイヤリング、首元には赤い珠玉のネックレスに同じ色のペンダントトップ、右手首に赤い珠玉のブレスレットだ。
イツキの母ウルラはポニーテールをイツキと同じバレッタで留め、耳には黒いイヤリング、首元は金の小さなリングを連ねたネックレスに赤いペンダントトップ、右手首には赤いブレスレットだ。
アウィスは白い薔薇に加工されたサンゴのバレッタでポニーテールにし、首元はイツキと同じ赤い珠玉のネックレスと赤いペンダントトップ、両手首に赤いブレスレットだ。
ウェスは白いレースに白い薔薇が3つついたカチューシャ、銀のネックレスに白いペンダントトップ、両手首に白いブレスレットだ。
アモルは黒いイヤリングに金のネックレスにピンクと白のまだら模様のペンダントトップ、両手首に黒いブレスレットだ。
一応ケースももらったものの、誰一人としてケースにしまうことなくホテルに着いていた。
ホテルは4階建てで、車寄せの部分は白い石造りになっていた。
通りに面した部分は磨りガラスになっており、採光はしても中の様子は窺えない。
中に入ると、高い天井と広いロビーに圧倒される。
ロビーの一角にはテーブルといすが置かれており談笑するスペースになっていた。
フォンス城前のホテルは高級なだけあってお客さんもお金持ちが多い。
そのため、装飾品が多いものが多かった。
到着したイツキ達は全身を珊瑚の装飾品で固めていたが、あまり浮くということにはならなかった。
チェックインすると、最上階の部屋にもらったアクセサリーケースを置いて、1階に戻る。
ホテルのレストランは1階だからだ。
一番奥の席に案内されると、周りで食事している人が品定めするように見てくる。
5人は着席するとメニューに目を通し始めた。
料理は別料金なので、コースで頼むのも単品で頼むのも自由になっていた。
「じゃあ、コースにする?単品で頼む?」
ウルラの問いにアモルが答える。
「単品で頼んで皆で分けるのがいいだろう」
「皆それでいい?」
3人でコクコクと肯く。
まずは前菜だ。
「三枚肉の角煮がいいわ!」
ミリト豚に取りつかれたアウィスは言った。
(確かにあれはおいしかった)
他の人もそれには賛成だったようだ。
他にもソーセージ盛り合わせと生ハムマンゴーを頼んだ。
次はサラダ。
葉物野菜とトマトのサラダにした。
スープはコーンスープ。
魚料理はグルクンのから揚げ、カサゴの煮物、アオリイカの刺身の3つ。
肉料理はミリト豚の生姜焼きとカステルム牛のシャトーブリアン。
主食はパン。
食後のデザートはレモン・オレンジ・グレープフルーツのシャーベット。
最後は紅茶だ。
まず三枚肉、やっぱり美味しい。
次に来たのはソーセージでこれも美味しい。
三枚肉とはまた違った美味しさだ。
付いてきた粒マスタードとの相性も最高だ。
生ハムマンゴーは不思議だった。
マンゴーを生ハムで包み、爪楊枝で刺したその料理、まず生ハムの脂味と塩味が来て、次にとろけたマンゴーの甘み、最後に生ハムの食感が残る。
次にサラダは細かく刻んだキャベツとちぎったレタスに櫛切りにしたトマトにプチトマトが乗っている。
ドレッシングは白く、口に含んだイツキにはシーザーサラダのドレッシングが思い浮かんだ。
コーンスープはコーンの甘みがすごく、またドロリとしたポタージュの食感を楽しんだ。
グルクンのから揚げはさっぱりしていて、さらに骨まで食べられるというおまけ付き。
カサゴの煮物は、醤油を使った甘辛仕様、ご飯が欲しくなる。
アオリイカの刺身は醤油とワサビでいただいた。
(そういえば前世でワサビが食べられるようになった時は泣いて喜んで、ワサビで泣いていると勘違いされたな)
そんなことをふと思い出した。
ミリト豚の生姜焼きはミリト豚を醤油、酒、みりん、生姜で味付けして焼いたもので、付け合わせにキャベツの千切りがある。
この生姜焼きは切られていなかったのでウェスに切ってもらうことにした。
「どれくらいの幅にします?」
「2センチくらいかな」
「わかりました。えいっ!」
その声とともに不可視の刃が降りおろされ、生姜焼きは幅2センチで切られていた。
イツキは驚嘆すると同時にその魔法について考えようとしてウルラに注意される。
「イツキ、フォークが止まってるわよ」
魔法のことについて考えたかったが、仕方なく食事を続ける。
とりあえず、生姜焼きも美味しかった。
シャトーブリアンは赤身の肉であるにもかかわらず柔らかく、それでいて脂味に誤魔化されることなく肉の味をストレートに伝えてくる逸品だった。
そこでパンの登場。
パン単体でももちもちとして甘かったが、更にグレイビーソースを付けていただく。
そのため、パンが終わるころにはシャトーブリアンの乗っていたお皿はきれいになっていた。
最後にシャーベット。みんなで3種のシャーベットを食べ比べる。
イツキはオレンジの甘いシャーベットが気に入った。
そんな感じで夕食を済ませると部屋に戻る。
もう寝ようとアウィスとウェスがベットに倒れ込もうとするとウルラから風呂に入るようにいわれる。
最高級だけあってお風呂もきれいで広かった。
せっかくなので5人で入ることになった。
イツキにとっては眼福である。
身体を洗っているとふとアモルの体に目が行った。
おへその辺りにハートマークのタトゥーを入れていた。
「アモルさん、そのお腹のタトゥーはどうしたんですか?」
「ああ、これはサキュバスなら誰にでもあるものだ。この先に子宮があるということだ。魅了させやすくなる効果があるぞ」
「お風呂に入ってるんだから、魔法の話はそこまでよ」
イツキはウルラに止められた。
「じゃあ、寝る前に話をするのはいい?」
「しょうがないわね。アモルちゃんは構わない?」
「問題ないぞ。ゆっくりサキュバスの魔法を教えてやろう」
ということで、お風呂の後に話を聞くことになった。
「では、何から話したらいいかな?」
お風呂に入った後、浴衣に着替えた5人は、アウィスとウェスはベットで休み、ウルラはソファに座ってイツキが失礼なことを訊かないか見張っていた。
「アモルさんの使える魔法の種類について教えてください」
「使える魔法か。闇魔法、飛行、誘惑、暗示、精力変換、生命探知とそんなところか」
イツキは闇魔法については多少習得していた。
「闇魔法って、影から影を渡ったり、黒い刃で切り裂く魔法ですよね?」
「よく知っているな。後は疑心暗鬼にさせたり、呪いをかけたりといったものだな」
「誘惑はどんな魔法なんですか?」
「誘惑は、自分を魅力的に見せる魔法だ。特定の人物に対しての魔法と不特定多数に対する魔法と2種類に分けられる。誰か相手でも見つかったか?」
アモルは冗談めかしてイツキに問う。
「いませんよ、そんな人。それで、暗示の魔法はどんなものなんですか?」
「基本的には誘惑がかかった後で使う魔法だ。特定の行動をさせたいときにこうしたいんじゃないかとといかけることでその行動を取らせることを目的とする。また、ある人からこんな風に思われてますよということを伝えることで、人間関係を崩壊させたりもできる。」
効果は薄そうだが、やられると地味に嫌な魔法だとイツキは思った。
「次に精力変換はどんな魔法なんですか?」
「先ほど食事をとっていたが、サキュバスは食べ物から得られるエネルギーは少ないんだ。そのため、人の精液や体液をエネルギーとするために精力変換が必要になってくるんだ」
「じゃあ、今は空腹状態なんですか?」
「いや、ミリト豚やカステルム牛は屠殺されて間もなかったのだろう。残った生命エネルギーが摂れたので、それほどエネルギーがないわけではない。船まで飛べるエネルギーはあるし、船に戻ればほぼ精液は飲み放題だからな」
(夜いないと思ったらそんなことをしていたのか)
「最後は生命探知ですね」
「生命探知は人がどこにいるのか調べる魔法だ。人は生きている限りその生命エネルギーを外部へ放出する。それを探知するのが生命探知だ。まあ、サキュバスの場合は一夜を共にするものを見つけるために使うんだがな」
(それって対人用のレーダーじゃないか?)
「それって人間も対象になるんでしょうか?」
「そもそもが人間を見つけるための魔法だ。人間を見つけられないわけがないだろう?」
「有効範囲はどれくらいなんですか?」
「主に使うのは100メートルくらいだが、魔力を使えばもっと広い範囲を探すことも可能だ」
その言葉を聞いてイツキは、この魔法が戦争の役に立つと思った。
相手が探知できない範囲から攻撃できれば一方的に相手を倒すことができる。
「その魔法、教えていただけませんか?」
「教えるのは構わないが、使えるかどうかは別問題だぞ?」
「わたしは使えますので、安心してください」
「何を安心すればいいのかわからないが、頑張って覚えるように」
そうしてアモルの夜の魔法教室の幕が開いた。
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