10歳 天狗の少女に魔法具を その2
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では14話目お楽しみください。
翌日の朝にはアンキラが気を回したのか、屋敷の門の前に机と給水用に水が用意されていた。
ランニングを始めると、庭師の人から応援されたり、門番さんから「腕が落ちてるぞー!」という指摘が飛んできた。
正直なところきつかった。
門の前で水を飲みながら休んでいると、インターバルが長いと1分の砂時計を用意された。
往復300メートルのランニングに1分の休憩というのは想像以上にハードでお昼は食欲がなくフルーツだけもらった。
午後もそんな調子だったので、夕食は食べられなかった。
せいぜい心配したアンキラが持ってきたオレンジジュースを飲むくらいだった。
翌日は筋肉痛で指輪をしてるとまったく体が動かせなかった。
なかなか起きてこないことを訝しんで部屋に入ってきたアンキラにその旨伝えると、朝食にオレンジジュースをもって来てくれた。
ガラス製のストローももって来てくれたので楽に飲める。
そのまま午前中ベットで休んでいると体力も回復してきて、お昼は食堂で摂れた。
午後はまずアウィスをつれて魔法具店を訪れる。
店主さんが対応してくれた。
「いらっしゃい。おお、お客さんか。頼まれた魔法具なんだが、明日でいいか?」
「わかりました。何かありましたか?」
「細くて長い穴を開けるのに手間取ってな。今の状況なんだが……」
そう言うと店主は作業スペースから魔法具を取り出してくる。
柄の上に1本だけ羽根が取り付けられていた。
「こんな状態なんだわ。穴を開けてそこに羽根を差し込むって言うのは簡単だからな、夜を徹して作るつもりだ。だから明日また来てくれ。とりあえずこれは返しておく」
そう言うと店主はサファイアとその留め具、羽団扇の柄を出してきたので受け取る。
「よろしくお願いします」
魔法具の作成は職人さん頼みだ。
お願いして外に出るとアウィスに羽団扇の柄を見せる。
「アウィスさん。私はこの木がどんなものでどんな性質なのか調べたいと思っています。その為にこれをドゥクスさんに預けるのがよいと思うのですか、どう思いますか?」
「おじい様なら材料を知ってるかもしれないけど、確かに何の木からできたか私にはわからない。これから先、天狗の魔法技術が途絶えないためにも調査が必要と思うよ。だからドゥクスさんに預けようとするなら私は賛成」
ということで、魔法具店の店主から受け取ったものはすべてドゥクスに渡される事になった。
「調べておくよ。色んな木を持ってこないとなぁ」
そんなことを言っていた。
そのうち魔法具の研究書が出回るかもしれない。
それはともかくイツキはやることはやったので、後の時間はランニングだ。
アンキラに机と水、砂時計を用意してもらってスタートした。
相変わらず応援が飛んでくる。
ヘトヘトになって止めようとすると門番から声をかけられる。
「もう1周だけ頑張ろう」
もう1周くらいならと頑張って走る。
また門の前に戻って机で水を飲んで入ると門番からまた声をかけられる。
「もう1周だけ頑張ろう」
無限ループかとも思ったが、もう1周位なら頑張れそうな気がした。
そういったやり取りが続くこと10数回、ヘトヘトすぎて机に覆いかぶさるように休む。
「よく頑張ったな。丁度夕食の時間だぞ」
ついに門番の言うことが変わったと思うと、杖を突きながら屋敷の中に入っていった。
夕食はやっぱり食欲がなかったので、部屋にオレンジジュースを持ってきてもらった。
当然ストロー付だ。
「ご主人様からの伝言があります。指輪は持っていってよいとのことです」
「ありがたいと伝えてください」
「かしこまりました」
翌朝、やっぱり筋肉痛で動けなかったのだが、前日の様子から察したアンキラが早めにオレンジジュースをもって来てくれた。
それを飲んで体を休めるとお昼前には指輪なしという条件だが動けるようになった。
ということで、魔法具店に物の引き取りに行く。
指輪は巾着袋の中に入れた。
「いらっしゃい。品物は何とかできてるよ。確認してくれ」
そういって出されたのは昨日1本しか羽根がついていなかったものが9本の羽根を取り付けられた姿だった。
アウィスにも触ってもらう。
「うーん、よくわからない」
さすがにお金も払わず港でテストするわけにもいかない。
「おいくらですか?」
「持込だから安くしたいところなんだが、500サタナスだ」
そう言われたので、四角い銀貨1枚を出した。
「お嬢ちゃん金持ちだな、はい、釣りの500サタナス」
そういって出された5枚の丸い銀貨を受け取る。
「兵役で遠くに行くんだろう。元気でな」
「店主さんもお元気で」
そういって店から出ると港にやってきた。
世界樹を使った新しい羽団扇の性能テストだ。
「どうぞ好きに使ってください」
「じゃあ、やるよ!」
アウィスは右に杖を構え、左に払った。
すると、本家の羽根扇のときと比べると少し小さいものの、巨大な竜巻が発生した。
アウィスは腕を振るった状態で止まっていた。
「うそ、倒れてない」
心底驚いているようだった。
「やりましたねアウィスさん。大成功ですよ」
「ありがとう、こんなすごいものを作ってくれて……」
その言葉とともにアウィスの目から涙が零れ落ちる。
「泣かないでくださいよ。友達を助けるのは当然です」
「うん、ありがとう」
「では、時間もありませんからドゥクスさんに挨拶したらすぐにネブラの港に戻りますよ」
そう言ってイツキはアウィスの手をつかんで歩き出す。
ドゥクス邸についたら、執務室に直行だ。
「杖ができましたのでネブラに戻る前に挨拶に来ました」
「僕の杖を使っているから上等なものができただろうね。アーディンには枝が足りなくなっているからまた集めてほしいと僕が言ってたと伝えてくれるかな」
「はい。ご尽力いただきありがとうございました」
アウィスもお礼を言う。
「見ず知らずの私のために協力してくれたこと、真にありがとうございした」
「なに、できることをしただけだよ。2人とも無事に帰ってきてね」
『はい』
そうしてドゥクス邸を慌しく発つことになった。
イツキは出発前にアンキラやケッラリウス、庭師や門番に挨拶回りに行っていた。
門番は昔、軍の訓練を受けていたようでそれを真似たらしい。
アウィスは新しい羽団扇と魔方陣の本を持って出発だ。
帰るときも行きと同様、しばらく2人で飛んでいたがイツキがアウィスを抱えて飛んだ。
速度上昇の魔法陣も五重にも使っていた。
ネブラの港には大きな船が止まっていた。
中央甲板の高さがだけでもイツキ達が泊まっていた宿屋ほどもあり、船首楼と船尾楼を含めるとそれより大きな建物はこの港には存在しなかった。
幅は10メートルくらいで長さは100メートルくらいだろうか。
この港の埠頭では長さが足りないためはみ出していた。
アウィスは驚愕の表情を浮かべるとイツキの服の袖を引っ張った。
「見て!こんなでっかい船見たことある?」
「こんなに大きいのは初めてかな」
「ねえ、あそこで何か作業してるよ」
甲板には荷物を船倉に送るための四角い穴が開けられており、船上クレーンで中に荷物を入れていた。
クレーンは当然ながら人力だ。
まず、甲板から上に伸びたクレーンの先端から4本のワイヤーが伸びている。
ワイヤーの途中には動滑車が付けられており、そこに荷物を固定することになる。
あとはそのワイヤーをクレーンの先端にある定滑車を通して、船の上でそれを引っ張れることになる。
驚くべきは船の上にウインチが無数にあることだ。
動滑車もウインチも人の負担を半分に軽くするものだ。
丁度荷物が上げられるところだった。
埠頭で釣りあげられた荷物はジブの近くまで巻き上げられる。
次にジブをウインチによる巻き上げると、首を寝かせていた白鳥の首がピンと伸びたようになる。
そしてクレーンが旋回する。
甲板から伸びたクレーンの途中に小さな歯車があり、それを周囲に大きな歯車を4つ並べることでクレーンを回転させるのだ。
この大きな歯車を回すのも人力だが、長い取っ手が付けられており、それを人が回すことで大きな歯車が回るようになっていた。
「すごいね、これは」
そんな巨大な船の姿にあっけに取られるが、イツキは祖父アーディンの待つ宿に向かった。
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