10歳 天狗の少女に魔法具を その1
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では13話目お楽しみください。
徴兵された兵が乗る船の到着予定まで日が無かったため急いでネブラの港を発った。
最初は個別に飛んでいたが、アウィスの飛行魔法では速度が遅いため、途中からイツキはアウィスを抱え、速度上昇の魔法陣を五重にも使って飛んだ。
そのおかげか夕暮れ前にはロングムオラのドゥクス邸に到着した。
どんどん屋敷を進むイツキとおろおろしながらそれについていくアウィスの姿があった。
執務室に着くとドゥクスは何かを飲みながら書類に目を通していた。
「おや、どうしたのかな?推薦状でもなくした?」
それはないという余裕の表情でドゥクスはイツキに話しかけた。
「祖父から聞きました。世界樹の枝を集めていたと。枝は残っていないでしょうか?」
「あるにはあるよ。僕の杖だけどね。お下がりでよければ餞別にしようか?」
「ありがとうございます。明日にでもテストしてみます。よかったね、アウィスさん」
「そうだね。ありがとうございます」
イツキが話をアウィスに振ると、ドゥクス氏の目もそちらに移る。
「アウィスさんでいいのかな?その翼、天狗のものと思うんだけど違ったかな?」
「はい。ソルフィリア家のアウィスと申します」
「ソルフィリア家のお嬢様ですか。イツキちゃんと出会ったのは旅行か何かかな?」
「いえ、今回の魔王様からの通達にソルフィリア家として対応するためにネブラの港に泊っていて、そこでイツキと出会ったのです」
そこでドゥクス氏は首を傾げる。
「おかしいな。ソルフィリアには結構男子がいたと思ったけどね?」
「それはおそらく父やおじ達でしょう。全員兵役年齢の上限を超えておりました。また、いとこも何名か居りますがまだ加減年齢を超えては下りません。ソルフィリア家の男子が参戦しないことについてはご了承願いたいところです」
「ふぅん。まぁ、ソルフィリアはちゃんと統治してくれて税収も納めてくれているすばらしい領地だよ。今後ともこのノウェム島の要になってもらいたいね」
「では、戻りましたらそう皆に伝えておきましょう」
アウィスがそう言うと2人は部屋を出た。
その後アウィスと一緒にイツキが寝るか寝ないか問題が発生したが些細なものだ。
翌朝、別の部屋から出た2人は合流すると、ドゥクスから杖を受け取った。
そしてテストのためにクレピドの町まで歩いていく。
歩きながらドゥクスの杖を見た。
長さは1メートル弱で先端には台座があり2センチほどのサファイアが輝いている。
歩きながら魔力を流し込んだり、簡単に魔法を使っていった。
魔力の流れや魔法のコントロールは世界樹製の杖であるために簡単にできてしまう。
サファイアのおかげか、水や氷の魔法が使いやすかった。
そんな杖をアウィスが持ってクレピドの町の空いた港に到着した。
アウィスはテスト前の学生のように緊張していた。
「ただのテストですから緊張しないでください。いつも通りに魔法を使えばいいだけですよ」
イツキがそう声をかけたら緊張も少しほぐれたのか笑顔が見えた。
「やるよ!」
アウィスは右に杖を構え、左に払った。
すると竜巻ができたもののすぐに散ってしまった。
魔法はすぐに散ったもののアウィスは立っている。
「どうでしょう?」
「うーん、魔法の威力が足りないかな。もう少し強い風を起こすつもりだったんだけど……」
(どういうことだろう、わたしの杖を使ったときはきれいな竜巻ができていたはずだけど……)
「ちょっとわたしの杖で試してみてくれない?」
「試すのはいいけど……」
そういってイツキの杖を受け取るアウィス。
先ほどと同様に右から左に杖を払った。
すると先ほどよりも強い竜巻が発生した。
(杖の違いは柄の長さと先端の宝石だ。柄の長さがいかんともしがたいところだから、替えるとしたら先端だ)
「アウィスさん。羽団扇って貴重なものなんですか?」
「いや、家に何本もあるよ。それがどうしたの?」
「魔法具に羽根が使えないかと思いまして。抜けるんですか、それ?」
アウィスは羽団扇から羽根を抜くなんて考えもしなかった。
「どうだろう。やったことないからわからないな」
「じゃあ、専門家に聞いてみましょう。丁度この近くに魔法具の店があったはずです」
イツキはそう言うとアウィスをつれて魔法具店へ向かった。
お店に着くと、閑古鳥が鳴いていた以前と違い数名お客さんがいる。
「いらっしゃい。どんな御用で?」
店主は少し年を重ねたように見えるがまだまだ元気だ。
イツキは羽団扇を差し出す。
「この羽根って取れますかね?」
「やってみましょう」
店主は羽根の付け根を持つと引っ張った。
すると勢いよく抜けた。
「どうやら細い錐で穴を開けてそこに羽根を刺していたようですな」
「羽根が取れたところで次の杖なんですけど」
そう言うと、ドゥクス氏からもらった杖を見せる。
「これは、私がスンムス将軍に献上するために作った杖ではありませんか!」
「そうなんですね。あまり大きなことは言えませんが徴兵をされまして、選別としてドゥクス閣下から受け取りました。それで、この宝石の台座部分を円形にしてさっきの羽根をさしてほしいんですけど、できますか?」
店主は当たり前のことを聞くなというような表情をした。
「それはできるだろうが、宝石と泊め金具はどうするんだ?」
「ドゥクス閣下に返します」
「ふむ、期限は?」
「2日でお願いします。伸びても3日目のお昼までに」
「無茶を言うやつだな。だが、やってやれないことはない。とりあえず2日後に来てくれ」
「よろしくお願いします」
そういって魔法具店を後にしたら、その旨ドゥクス氏に伝える。
「はいはい。その間、世話をさせてもらうよ」
そういって快く部屋を貸してくれた。
空いた時間にアウィスは魔方陣の勉強をするらしい。
マギーチェスキー師匠と書いた本を教材に勉強していた。
せっかくなので、まっさらな本をいただいて写本を作ってあげることにした。
魔法の名前はコピーアンドペースト。
左に教材の本、右に写本用の本を置き、1ページずつ丁寧に転写していく。
すると数分で写本が出来上がった。
「どんな魔法を使ったの?」
アウィスにそう問われたが、詳しく説明しても使うのは難しいだろう。
「本のページの内容をしっかり頭に浮かべて、インクを使ってそれを写すことを想像すればできますよ」
「わかった。よくわからないことがわかった」
無知の知という奴だろうか。
アウィスは、残念なことに、あまりうまく魔方陣をイメージできないみたいだが、紙の上では発動できるらしく、与えられた客室とクレピドの町を往復する姿が見かけられた。
(そんなに大それた魔法陣は載っけていないはずだけど大丈夫か?)
イツキはちょっと心配になった。
しかし、イツキにはやるべきことがあった。
体力錬成である。
イツキは杖を持ってドゥクス邸とクレピドの港をランニングしていた。
ドゥクス邸とクレピドの町は港の先まで行っても150メートルほどしかないが、杖を持ってランニングすると大変だ。
魔法具店に行った日の午後からランニングをする。
正直なところ杖は重く、10歳の未熟な体には負担が大きい。
しかし、慣れてくれば多少はましになった。
夕方になり、食堂で夕食をとっているとドゥクス氏もやってきた。
一緒に食事をしているとドゥクス氏から指摘があった。
「体力をつけようとしてるのはわかるけど、魔法で身体能力を底上げしてるよ」
「魔法使ってました?」
「無意識に使っているのかい?魔法が使いにくくする指輪があるけどどうする?いる?」
「無意識に使っているみたいです。その指輪貸してください」
「いいよ。今持ってこさせよう」
デザートのフルーツを食べているときに、執事のケッラリウスさんが指輪を持ってやってきた。
その指輪をつけると筋肉に乳酸がたまったときのように動きがぎこちなくなった。
「陰ながら応援させていただきます」
そんな言葉をイツキにかけてケッラリウスは戻っていった。
「期待されてるね。まあ頑張ってみてよ」
そうして地獄のトレーニングの幕が開いた。
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