なったわけでも説明しよう。
僕がこんな身体になったのは、だいたい100年前の事だ。
その頃は、第一次世界大戦とか、色々大変な時期だったみたいだが、困ったことに僕はそのころの記憶のほとんどを忘れてしまった。
だから、何がきっかけでこういう体になったのか、詳しくは覚えていない。
たしか、都市伝説的な何かだったはずだ。その都市伝説はあまり有名ではなくて、偶然オカルト好き(当時の言い方ではないが。)の友人から聞いた話だった。
断片的な記憶から想像するに、こんな感じだったはずだ。
「なあ。」「なにさ。」
「お前、この噂、知ってるか?」
「どんな噂だよ。」
「○○県の、○○市にある、○○○って祠の噂。」(固有名詞は一切覚えてない。)
「しらないよ。初耳だ。でもわざわざ話さなくても良いよ。興味ないし。」
「まあ、そういうこと言うなよ。でだな、その噂ってのはな、まずその祠の前に、○○と○○と○○をこうこうこういう方法でお供えするんだ。」(無論、詳しいことは覚えていない。)
「へえ」
「んでもって、○○○○○○○○○という呪文を唱える。」(ry)
「はあ。」
「するとだな、なんと……」
「なんと……?」
「不老不死になれるって言うんだ。」
「あー……………………あほらし。」
「なんだと!?」
「そんな方法で永遠の命なんか手に入れられるかよ。下らねー。よくあるデマじゃねえか。」
「またそうやって人を馬鹿にしてだな、そうだから、お前はいつまで経っても恋人ができんのだ。」「なんだと!それは関係ないだろう。」
と言った感じで、その時は小馬鹿にしていたのだが、(もしかしたら違うかもしれないが…)家を継いだ後に、どうも行き詰まってな。
よくあるだろう、思春期に。自分の事が分からなくなったとか。当時のぼくはまさしくそれで、自分探しの旅にでたんだ。(本当はほかに用事が有ったかもしれないが、全く思い出せない。)
たまたま、あの祠のある街に着いて、噂のことを思い出したんで、試してやろうかと思い立ったんだ。
当時本気で信じてた友人を、ネタにするくらいのつもりで、おもしろ半分やってみようと思った。そして実行した。
正直なところ、期待もあったんだ。退屈な毎日の中、刺激と言うものを求めていたのかもしれない。
でも、やった瞬間、僕は落胆した。何も起こらなかったんだ。
何かこう、きらきらとエフェクトが有るもんだと思ってたから、何の変化もしない祠を見て、やっぱりそんなもんかと、結局友人が騙されていただけなんだと、決めつけた。
しかし生活を続ける内、傷の治りが異様に早いことに気づいた。
まさかと思って、腕を包丁で突き刺したら、ものの五分でもとどおりになった。
不老不死の噂は本当だったんだ。
最初の内は興奮したさ。常人とは違う力を手にしたことに。
でも、不老不死になったからって、何もなかった。いや、それよりも、心配事が増えたんだ。
こんな簡単に不老不死になれるんだ。他にいたって不思議じゃない。その人たちの中で、一般人に不老不死の存在を知られてはいけない、というルールが存在しているのかもしれない。いや、きっとそうだ。
となると、僕が不老不死だと、周りの人間にばれてはいけないんだ。10年経っても僕だけが20代の姿だったら、周りからあやしまれてしまう。
故に僕は、家を出た。
現代社会になると、よりいっそう生活するのが苦しくなった。
戸籍なんてあるわけないし、身分証さえないから、就職なんてできるわけがない。
もしかしたら、うまくやれば就職出来ないこともないのかもしれないけど、そんなやり方知らないし、面倒くさい。
そんなわけで、僕は何十年という間、ホームレスの無職なんだ。
ようやく、我が寝床についた。
河川敷の、鉄道の高架線のしたにある、ブルーシートで出来たテントだ。
河はゆっくりと流れを作り、不思議な周期を作る。
油でベタベタした毛布にくるまり、目を閉じると、電車が上を通ったようで、音が響いた。
ガタンガタン、ガタンガタンと繰り返す。