その六 「南海道伊予國上代神記」
越智の知り合いの喜多が研究している「南海道伊予國上代神記」は、一般には古史古伝のひとつとされており、四国にかつて超古代文明があったという伝承が書かれている。それによれば四国山地に空よりもたらされた文明は花開いていたが、大和朝廷が全国を支配する頃には滅亡していたとしている。また文明の担い手は”元祖”日本先住民で大陸からの渡来人による侵略で消え去ったという。
明治時代に伊予某藩の元家老が自宅にあったという古文書を編纂したものとされているが、おそらく近年の偽書とされている。無論、これらは考古学学会から全く相手にされてなく、そのため研究会の学生からも胡散臭いといわれていた。
この日、越智が喜多に協力を求めたのは「南海道伊予國上代神記」に空媛尊社の事が書かれていたからだ。それによれば遠い昔、この地に天空からの船が降り立ち、土地のものに技術を伝えるとともに30年に一度、若い女性二人を洞窟に安置された神輿に泊まらすようにと言い渡された。しかし、ある時若い娘が疫病でいなくなったため、年老いた女を差し出したところ、この地の文明が衰退した。そのため、以後はかかさず祭祀が行われてきた。
この祭祀が今年行われるであろう空媛尊社の女神大祭の事だろう推測していたので、確かめるというわけだが、皆目見当の付かないことだった。別の友人に見せたところ、天空の船とは宇宙船で三十年に一度地球人の女の子とお話したいということじゃないかと冗談をいわれてしまった。
「ここの祠の話がカゼなら今度は、宇和海にある超古代文明の燈台遺跡でも調査しよう。まあ南海道伊予國上代神記もネタとしては面白いんだけど」と越智は考えていた。彼は今日祠で起こる事を全く予想していなかった。




