その五 「美魔女」
一行は祠の前に到着した。途中、なぜか詩織と弥生が滑ってしまったので泥まみれになっていた。みんな濡れていたが、なぜか女二人の被害が大きかった。
「あーん、こんなに泥まみれだよ。着替えなんか持ってきていないのにどうしよう。このまま松山まで汚れたままで帰らないといけないの」
「越智先生、私たちが泥まみれだからといって乗車拒否しないでね。掃除しますからおねがいします」
二人が嘆いていると「どうかなさいましたか? 」奥から女性の声が聞こえてきた。その女性は若いようで着ている和服がとても似合う大和ナデシコだった。
「あなたたちは喜多先生がおしゃっていた人達ですか? 私は松前妙子です。今日はお世話になります」
これには一同驚いた。三十年前に十九歳といえば、五十近いはずなのに彼女は若々しく三十前にしか見えなかった。彼女は和服姿だったが、このような天気にもかかわらず濡れていなかった。
「あなたたちをお待ちしておりました。これから祠の脇にある社務所に来てください。そこでしたらお風呂もありますし着替えも用意しています」
この時、一行が不思議に思わなかったのは、途中で橋が落下しているのに小松といい妙子といいどうやって来たかということだった。誰も疑問に思わなかったが、この時、一行は異界へ続く門をくぐっていたのだ。