その二十五「空媛尊」
金属像のなかの二人は何か安らぎのようなモノを感じていた。安直に言えば母親の胎内に戻ったようなものだった。身体ががんじがらめにされているような状態であるのに気付いた二人は、結局のところ何もできなかった。この中は時間も空間も存在しないような気がしたが、他にも多くの存在を感じていた。
「詩織、どこにいるのよ?」
弥生は目の前に存在しているのかもしれない白い闇に手を伸ばそうとしていた。しかしなんら感じる事は出来なかった。それは、もしかすると今は魂だけになったと感じてしまった。
「わたしは・・・死んだの? でも、よく聞く臨死体験なんかしなかったわよ。どういうこと?」
そう考えた途端、詩織の声が聞こえてきたような気がした。そんな気がしたというのは耳で感じたのではないとわかったから。
「おーい、弥生! ここはどこわたしは誰なの?」
なんだか気が抜けたような言葉に詩織はおかしいと思ったが、自分の身体はどこに行ったのか分からない事に気付いた。これはいったい? すると別の角度、空間など認識できない状態なのでどこからか威厳に満ちたような女の声が聞こえてきた。
「ようこそ、お二人さん。ここはあなた方が金属像と認識していたところを抜けてきたところです。申し遅れましたが、わたくしは空媛尊といいます。もっとも、あなた方に分かりやすく言えば、このカラクリを司るシステム管理プログラムです」
空媛尊を名乗る声はなんらかの意志を持つ機械だというようだった。しかし、あの祠のどこにそんなものがあったというのだろうか? 二人は不思議に思ったが言いたいことがあった。なんでここにいるのよって!
「あのー! どうして私たちが閉じ込められなきゃいけないのよ! それに三十年ごとに人身御供するだなんてひどくねえ? いったい何をするきなの? 私たちを食べるの?」
弥生の声は怒気が籠っていた。彼女は結構興奮すると誰もストップすることが出来なくなるタイプだった。少しの間があってから空媛尊の声を感じた。
「食べませんわ! あなたたちのように若い女の身体を一時的に使って魂の貯蔵庫として使っていたのよ。本当は三十年の間はあなたたちのどちらかを使うつもりだったわ」
それを聞いて弥生は怒った!
「三十年!? それじゃ2045年まで閉じ込めるって事なの? そんなの嫌よ! 三十年後の世界なんてきっとロクなもんじゃないよきっと!そんなんじゃあ・・・」
弥生の愚痴は延々と続きそうだったが、空媛尊が話の腰を無理矢理折ってしまった!
「あなたって・・・まあ、時間が残っていないから説明は省くわ! もうじき、この祠は崩壊するのよ! それまでにはどうにかするから!」
祠が崩壊? 二人には空媛尊が言っている意味が分からなかった。




