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その二十一「甦った和子」

 ミイラというものは人間の遺体が軟組織を残したまま乾燥したような状態になったものをいう。もちろん人為的に作られる場合もあるし、自然に形成される場合もある。日本でも長い苦行の果てに即身成仏したミイラも存在する。しかし生きているのだろうか?


 通された部屋には大量の食料を盛った皿が並べられており、それを物凄い勢いでたべていた痩せた女性がいた。その二人はさっきまで干からびていたはずの裕子と和子だった。もし本当なら二人は三十八歳と七十八歳のはずだが、まだ十八歳にしかみえなかった。それにしてもいつのまにこんなにふっくらとしたの?


 「お二人さん、さっきまで君ら干からびていなかったの? いつの間に甦ったの?」越智は質問すると、奥で物凄い勢いで食べていた女が怒ったような口調でいった。それは和子だった。


 「あんただれさ? わしはのう生きていたんだぞ! 外じゃ六十年経ったといっているけどそんなの信じられへんぞな!」


 「和子ちゃん、言っているだろう。それは本当だってさ! こうして生きているうちにあえて嬉しいけどもさ」


 「さっきから変だけど、おっさんって本当に昭三おじさんか? 祭りの時にはまた好青年だったのに・・・まさか喜八郎おじさんじゃないのかよ?」


 「親父はなあ昭和六十二年に亡くなったんじゃ」


 「昭和六十二年? いま何年じゃ?」


 「平成二十七年さ」


 「へいせい? それってなんじゃ? そんな年号なんか聞いたこと無いぞな」


 あんまりふたりの会話が漫才みたいなので、無口なはずの大輔が横入りしてきた。彼もまた話をもましてしまった。


 「和子さん、それじゃ聞きますが今の日本の首相は誰ですか?」


 「うーん、誰だったかな? 鳩山一郎だったよねえ。たしか日本民主党のかな? 」

 

 「民主党? 鳩山? なんか最近あったような気がする。あ、そうかあの鳩山って孫とか言っていたよな」


 「あんたたちどうなっているのよ? さっきから本当にどうなっているのよ! そりゃ気が付いたときはわたしの身体干からびていたけど、食べているうちにこんなに膨らんできてさ! でも何が起きているんか、本当は」


 「しかたない。君、これを見たまえ」そういって越智は持っていた新聞を見せた。


 「これは愛媛日日新聞、うちでも取っているけど、なんか活字が大きいわね。それにカラー印刷だなんて贅沢だわ。えーと日付は二〇一五年・・・平成二十七年、十一月三日・・・本当にわたし六十年もあの中にさ閉じ込められていたの? じゃあ、わたし未来に来てしまったの?」


 そういうと和子が茶碗を持ったまま腰を抜かせてしまった。

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