その十三 「筆談」
世界には当時の技術水準では存在し得ない遺物が発見される場合があり、それらは”オーパーツ”(時代錯誤遺物)と呼ばれている。一例としてメソポタミア(イラク)で発見されたバグダッド電池がある。ただ、これは重要な書物を保管していた金属容器が偶然電池のような構造であった事からきた誤解という説もある。
一方、喜多が研究している「南海道伊予國上代神記」は近代の捏造とされているが、元になった書物の中に四国に超古代文明が存在したという証拠が隠されているというのが喜多の主張だった。しかし、情報はノイズに溢れており、もし本当に証拠へと繋がるシグナルがあったとしても難しいので、見つからないと弁明していた。
今回調査のために祭礼が行われる空媛尊社にやってきた一行には確固たる目的はなかった。もし、なんかヒントになるようなものがあればいいかなっというぐらいしか思っていなかった。今回の調査を指導している越智も今日は写真を撮って話をなにか聞いて松山に帰れば今日は終わり、ぐらいにしかおもっていなかった。
しかし女性メンバー二人が祭りの巫女に選ばれてしまったので、祭りが終わりまで見届けないといけなくなってしまったので、社務所にある電話で限られた時間で連絡を取って一息ついたが、連れて行かれた二人のことも気になっていたが、この祭りの意味をあれこれ考えていた。
「そういえば、愛媛県古代女神列伝のなかにこの祭りの意味は天空から来た神様を慰めるという一節があったな。しかも、何回か慰めたら天空へと戻るという事も書いていたような気がする。そうすると、その神様を慰めるのが祭りの目的だということだろな。でも、なんだろう神様とは? まあ御神体といったところだけど、それってなんだろう?」
そう越智は考えていたが喜多はどうもそれが何かの見当がついているようだった。そこで喜多に聞いてみる事にした。
「喜多先生、これから行われる祭りで慰める神様だけど、御神体のことだとおもいますが、なにかご存じないでしょうか?」
すると、喜多はなぜか手帳に文字を書き込み始めた。そこには筆談するという事が書いてあった。
「越智、筆談する。ここでは詳細を口に出来ん」
「先生、御神体は?」
「見当ついている。でも証拠がない。だから来た、たぶんオーパーツだ」
「それってなに?」
「多分だが宇宙船の人工知能だ」
「そんなはずはないですよ」
「信じてくれんのは判る。でも地下に隠された遺跡にあるようだ」
「だから巫女と一緒に行くわけ?」
「そうだ。でも知らん振りしろ! 何が起きるか判らないから」
「彼女らに危険はないのか」
「大丈夫、証拠を見たいのだ超古代文明の源を」
「わかりました。大人しくついていきます」
そういった事をやり取りしたが、喜多はここまで書いたことを手帳から破り引き裂いた上で灰皿で燃やしてしまった。
「越智くん。これからの祭りを見学する許可は下りている。だから最後まで見届けよう。そうすれば何かわかるはずだ」
このとき、この祭りが長く苦しいものになるとは思ってもいなかった。




