その十二 「黒電話」
妙子女史に呼ばれた四人は社務所の奥にある部屋に通された。そこには巫女装束を着せられた詩織と弥生の二人もいた。
「越智先生、喜多先生、一体どういうことですか? あたし明日約束があるのですよ! 今夜には帰りたかったのですがどうすればいいのですか?」
詩織はその細い首筋の血管を浮き上がらせて、少々高潮したような感情を顔に出していた。ここは今の時代にしては珍しい携帯電話やスマホの電波が届かない地域だった。だから連絡しようがなかった。
「詩織さん、それは悪うございました。でも、もし参加していただいたらあなたにとって最高の贈り物がもたらされるはずですよ。ここに電話がありますから、親御さんと、そして明日お約束をしているお友達に連絡してください。そうそう帰る時にお礼を差し上げますからね」
そういうと妙子は長いコードにつながれた『黒電話』を持ってきた。それは昭和時代によく見られたダイアル式のタイプだった。
「これって電話ですか? ダイヤル式なんて聞いた事しかなかったんですが、本物はドウ使うのですか?」
「それにしても骨董品みたいですね。ここ十年ぐらいみたことなかった。お二人さん、回し方はこうして・・・」
そういって喜多が電話の使い方を教えたので、二人は実家や友人に連絡をとった。
「ところで、殿方さんは連絡はよろしいですか」
「まあ、必要はないと思う。特に重要な用事の計画はいれてないしに」
「僕も大丈夫です。一人暮らしですから」
「ワシもじゃ、倅には祭りが終わる頃に来てくれといっているから、連絡は不要じゃ」
男性四人は妙子の申し出を断ってしまった。これから以降、一行は外部との連絡を取る手段はたたれてしまう事に気付いたのは、必要な事が起きた後であった。
「ところで、妙子さん。これからどんな祭りが始まるのですか? 巫女大祭ということですが皆目見当がつかないものでして」
「細かい説明は折りを見て、そちらの小松さんが説明されますわ。簡単に言えば、ここで祀られている古代の女神をお連れする儀式があります。それで必要な巫女を探していたのですが、なかなか見つからなくて困っていたのです。ようやく条件に合う方を見つけたのです。そちらのお二人さんです。お二人さんには女神様から格段のご褒美をいただけると思います」
そういうと、妙子は次のように言った。
「詩織さんに弥生さん。これからあなた達は正式な巫女として女神様の元に参ります。あなたたちは女神様にお使いできるような身と心に変わっていきますから、心配せずに奉仕してください」そういうと、二人の巫女を連れて行こうとしていた。




