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サンタクロースの方程式

作者: 東椰子実


近鉄で買い物をしていると


本屋の前で母親が必死にプレゼントは


何が欲しいのかと問い掛けていた。


子どもは言葉を濁らせ


なかなかハッキリと答えようとはしない。


どうやら、サンタクロース以外には


プレゼントの内容を教えたくはないらしい。


父親はその後ろをうろうろと徘徊する。


決まればレジに直行する予定なんだろうが


それも出来ず不甲斐ない。



コンビニに入れば


店員皆、赤い帽子を被り働いていた。


営業スマイルがやけに怖い


クリスマスフェアで限定商品が


綺麗に並べられていたが


残念ながら私が買うのは笹かまだ。



イルミネーションはとても綺麗だ。


あれだけ夏の間、節電対策を敷いていた


私鉄でさえもしっかりと浮かれている。


クリスマスは聖なる夜なんて


ちやほやされるけれども


何を無心教者のくせして調子のいい



だが、どんなに捻くれている者でも


クリスマスが近づくと


何故だかそわそわする


クリスマス


プレゼント


聖なる夜


サンタクロース


ほら、もうそわそわなっている。


ボールを見て飛びつきたくなる


犬の気持ちがよくわかる。



サンタクロースは本当はいないんだよ


と、電車の向かい側の幼稚園児たちが


さも偉そうな口調で話し合っていた


本当のことを知ってしまうことで


大人なんてつまらないものに


なっていくことを


君たちはまだ知らない。



サンタクロースはいないんだよ


だって目には見えないもん


そりゃそうだ


サンタクロースを見たものなんて


そうそういるもんじゃない


私だってそう思っている。


それだけで何故だか


悲しくなってしまうのは


一体何故なんだろう



どんなに真夜中目をこじ開けていても


ワインとケーキの残りものに


《サンタさんへ》…なんて


気取って添えてみても


一見コソ泥と見間違えるような


赤い服の人は会いには来てくれない。


それはこれからも、きっと



ずっと…








この間、ラジオを聞いていたら


《サンタクロースが見えないわけ》


なんて話題に触れる箇所があった




話は少し昔、1977年12月


シカゴ大学在籍中の


とある物理学の生徒が


今の私達と同じ疑問を抱き


それを解明しにかかったらしい。



世界中に20億の家庭が


一様に分布していると仮定すれば


クリスマスイヴの24時間に全家庭を回るには


1家庭につき、2万分の1秒の速度でしか


立ち寄ることはできない。


要するには


光速のおよそ4割ものスピードで


サンタクロースとやらは


走り回っていることになる。


なんとも無茶な話である


またそうなると


私達は肉眼でサンタクロースを


捉えることは到底無理な話だ。



だから、サンタクロースは


目には見えないんですよ


司会者がさも自分が


解いてみせたかのように


しゃあしゃあと言う。



なんとも都合のいい話だ


そしてなんとも暇な生徒もいたもんだ。


半ば飽きれつつも、この話を聴いた後


何だか子どもの頃を思い出した。



サンタクロースは魔法が使えるんだよ


だからどんな家でも、どんなに真夜中でも


どんな所にいたって、きっと


彼は君たちを見つけてくれる


そう大人たちは必死に嘘をつく


子どもに夢を与えるために


下手で暖かい嘘をつく


でも、もしも…


そう思っているのは


きっと私たちの方なんだろう


硬い方程式に夢を包んで


そっとキャンドルに火を灯すのは


いつだって大人の役目だ。



でも、もしも…


サンタクロースが本当にいるんだとしたら


なんて


どうやら、諦めの悪いのは


寧ろ私たちの方だろう




《見えないサンタクロース》


方程式は机上の空論でしかない


だからこれは想像の範疇での考え事


でもこの証明には


ほんのちょっとだけ夢がある


サンタクロースは目には見えないだけで


本当は私たちの前に姿を現している。



子どもが大きな真実を信じるなら、


大人は小さな嘘を信じてみるのも


時にはいいかもしれない。







今宵は俗にいう聖なる夜らしい


甘すぎる一切れのケーキの横に


申し訳程度のワインをついで


ゆっくりと夢を見るのも


案外いいクリスマスの過ごし方だろう。


もちろん置き手紙も忘れずに






《おつとめ、今年もご苦労様》



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