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ある日の恋する乙女のモノローグ

作者: 川見 雅

「明奈、帰ろー?」

「あ、ごめん。私まだやることあるから先帰っててー」

「えーまた坂田クンですか」

「ち、違う!違うよ!?」

私の慌てっぷりにはいはいとでも言わんばかりに手をひらひらと振って桜子は笑った。

「本当毎日毎日待ち伏せして熱心だよねー」

「待ち伏っ…?!」

「んじゃ私は一人寂しく帰るとしますかね、また明日ー」

「うん、バイバイ」

桜子を見送って席に戻ると読みかけの小説を開く。読みかけ、というよりはもう2周も3周もしたから読みなおし、という方が正しい。

周りの友達からはこんなの何度も読んでると性格歪むよと言われたが、好きなのだ。

主人公のヒロインはある夜に偶然出会った男と一夜を共にする。朝目覚めてみると灰皿の下に数枚の1万円札。それを見てヒロインは大泣きする、ひたすらに傷つく、お金なんかほしかったんじゃない、と。

…まぁ確かにヒロインの行動は共感しづらいし同情もできない。単純な話だし。

でも私にはわかる。その執着の気持ちが、その愛が。ヒロインは確かに軽いけど、でもただ尻軽なだけじゃない。

本当に好きだったんだ、一目惚れでも、一晩だけでも、体だけでも。愛してほしくて、必要としてほしくて、求めてほしくて。そんな、恋。

「坂田…早く来ないかな?」

恋をしている、私も。深く深く坂田に。

だからこんなにも気が急いてしまう。

早く、早く、早く会いたい。

会って、その声を聞かせて、私の声を聞いて、笑ってほしい。

私と坂田がであったのは2年前。私がすぐに男の子を好きになってしまう、いわゆる恋愛体質なのは分かってた。

同じクラスになって、仲良くなって、優しくてかっこいい坂田のこともすぐ好きになった。あの頃も他に好きな人はいたけどそんなのは関係なかった。坂田と会える日は幸せ。話せたら、笑ってくれたら、もっともっと。

私が一番坂田の近くにいた。

私が一番坂田の魅力を知っていた。

だからいつかは私の方を見てくれると、そう信じていた。

期待は、願いは驚くほど簡単に裏切られる。

気付いた時には坂田の一番そばにいる女の子は私じゃなくなっていた。私よりも後に出会ったハズなのに、あの子は私よりずっと深く坂田の心に入り込んでいた。坂田のことが好きなわけでも愛してるわけでもないくせに、

なんで私の知らない坂田を知っているの。

『坂田って落とすの簡単じゃない?単純だよ、アノ人。』

なんで私にそんなこと言うの?

なんで笑ってるの?

落とした?

落としたって何?

クレーンゲームじゃないんだよ?

『まぁ頑張って?応援してる。』

応援?

嘘でしょ?

そんなにどうでもいいの?

何とも思ってないの?

何とも思ってないのに、坂田にあんな顔をさせるの?なんで?なんで?なんで?なんでなんでなんでなんでなんで

それでも坂田は彼女を選ぶ。

それでも私は坂田を選ぶ。

どんなに他の男の子を好きになっても、他の男の子と色んな事をしても、一番に坂田のことを求めてしまう。尻軽だの何だのと後ろ指を指されようと私がずっとすっと一番に求めているのは坂田だけで。

愛してほしくて、必要としてほしくて、求めてほしくて。

ねぇ、

ねぇ、坂田。私にしなよ。私なら、私のそばにいてくれるなら何でもしてあげるのに。私なら、私の持っているもの全部を坂田にあげるのに。


ずっとずっと誰かに愛してほしかった。

愛してほしくて

満たされたくて求められたくて

世界で一番、貴方に愛してほしいと思った。

ねぇ、ねぇ坂田

もし願いが叶うなら

きっと私はこう願うの

何を代償にしても惜しくない、お願いだから

私を見て



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― 新着の感想 ―
[良い点] 明奈の坂田君に対する一途な気持ちがひしひしと伝わってくる話だと思いました。読んでいくうちに、明奈の想いの深さにいつの間にか入り込んでいました。良かったです。 [一言] 短編小説なのですが、…
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