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ねぇ・・知ってる?

作者: 夜見塚蛍臥

ヒロインに賛否両論があると思いますが寛大な心で読んでください

噂・・それは非常に簡単に人の好奇心を刺激し、人を媒介に繋がりの続く限り広がっていくもの


私が通う学園にも多数の噂が主に女子たちの間で飛び交っている

・・主にイケメン揃いの生徒会の噂だけどね


『会長は見かけによらず甘い物が好きらしい』

『副会長がある小説の翻訳されてない原本を図書室からかりたらしい』

『近々書記が非公式なお茶会を開くらしく誰々が招待されたらしい』

『会計が先生に頼まれ事をして困っていた』

『庶務が雨に濡れてる捨て猫に傘をあげたらしい』

『顧問はお気に入りの女性に振られて傷心中らしい』


など何百では収まらないくらいの噂が学園内、その中でも生徒会の役員それぞれにある非公式のファンクラブや親衛隊の中では嘘か真か全く判別つかないくらい飛び交っている


どれが嘘か、真か・・判別できるのはこの学園の中では私くらいしかいない・・


そう・・私だけがその噂が嘘か、真か判断できる・・何故ならこの学園に流れている噂は全て私が流しているからだ


ちなみに趣味や道楽では流していない・・一応は仕事に分類される・・と思う


昼休みになり、友達とお弁当を食べていたが、時間になればお弁当をしまい立ち上がる、友達である女子の二人が立ち上がった私を不思議そうに見ている


「あれ?れーちゃん、もう食べないの?」

「うん・・時間だから」

「もしかして・・また先生に呼ばれたの?」

「・・うん」


頷いた私に二人は同情の視線を向けてくる・・ほぼ毎日だからね・・お昼休み返上で・・


「優等生って大変だね〜」

「れーちゃん、頑張ってね」

「うん、ありがとう、行ってくるね」


二人に軽く会釈すれば、指定された場所・・第一音楽室へ向かう


私が通っている私立真宵学園はとても広い・・良家やお金持ちの子息女がたくさん通っているからだけど・・こういう移動する時は本当に疲れてしまう


不意に窓を見れば私の顔が反射して写る

黒く癖のない紙を腰の辺りまで伸ばしていて瞳は茶色がかった黒で目尻が下がっていて優しそうに見える、そして縁のない薄いレンズの眼鏡をかけている・・身長は平均的・・スタイルはいい方

・・よく、地味な文学少女って言われます・・

小さくため息を漏らしながら第一音楽室へと歩みを進める






第一音楽室の前に着けば、恐る恐る扉を開けて室内に入る

中にいたのは全く好意的な感情のない・・逆に嫌悪感すら感じる視線を私に向けてくる・・6人のイケメン

・・この学校の生徒会役員と顧問の先生だ

その中の一人、赤髪に琥珀色のがっしりとした体つきで長身のイケメンの男性・・龍人の半妖の生徒会長、希龍(きりゅう) 凍弥(とうや)が私に近づいてくる

そして、私を見下ろしてくる


「おい・・お前、きちっと言われた通りにしてるんだよな?」


冷たく上からの声を聞いた瞬間、体は怯えから反射的に震えてしまう


「しっしてますよ!!じょっ女子達がよってくるような噂をたくさん、真実と嘘を交えて流してます!!」


それを聞いた瞬間、6人の顔には下卑た笑みが浮かぶ・・この人達は最低だ・・女で遊ぶ癖に捨てるときに騒がれるのが面倒だから自分から声をかけたりせずに、女子から自分達に声をかけさせて人間扱いせずに弄ぶ・・


私はそんな彼らの下卑た思惑の片棒を担がされている・・


私・・霧嶺(きりみね) 怜花(れいか)は『鵺』の血を継ぐ半妖・・『鵺』・・平安の時代に都にも現れたという妖怪・・『顔は猿、胴体は狸、足は虎、尻尾は蛇、鳴き声は鳥』と呼ばれる絵では西洋のキメラに近い姿で描かれるが本質は違う・・『鵺』の本質は『姿を変えること』

顔を見た人は猿といい、胴体を見た人は狸という等・・見た人によって『鵺』は姿を変える

そして、私はその『鵺』の力を強く継いでいる・・だから・・『印象に全く残らない姿』に自分を変えて女子生徒たちに噂を流す・・好奇心を煽るように『ねぇ・・・・知ってる?』の言葉を添えて

そして・・ファンクラブに特に噂を流すために私は全部のファンクラブに中堅メンバーとして所属してる・・でも・・私を知る人はいない、知っていても話し相手としてだけ・・名前も顔も覚えていない


生徒会長は下卑た思惑が好ける笑みを浮かべながら私を頭を乱暴に撫でる


「よくやった・・そういうふうに俺らに忠実な犬で居ればいい・・そうすればお前みたいなブスとも結婚してやる・・嬉しいだろ?」


・・6人が俯いている私に嘲笑を向けているのがわかる・・顔をあげれない・・


・・私は古くからの名家だから・・同じく名家の会長と婚約してるが・・会長は私を全く見ていない


「じゃあ、これからも、忠実な犬ってことでよろしく」


この会長の言葉を皮切りに他の生徒会役員や顧問が私を貶すような言葉を発して笑いながら音楽室から・・出ていく



音楽室には俯いている私しかいない


「・・・・・・・・はは」



もう・・我慢・・しなくていいよね?



「アハハハハハハ!!本当に・・本当にバカばっか!!」


お腹を押さえて笑い転げたい気分!!本当にあいつらはバカしかいない!!

あの怯えてる姿が『鵺』の能力を使った演技だとも知らずに私の素だと思ってるんだから!!


「それに・・結婚してやるって・・はん、だぁれがあんたなんかと結婚なんかするもんですか!!」


元々私は生徒会役員や顧問の婚約者候補でもあるが・・それは向こうから頼んできたことだ


かなり裕福で余裕のある私の実家と違い、奴等の実家は家計が火の車だったり、女遊びがたたって多額の慰謝料を請求されたり、宗家と分家あわせて子供が1人しかいないから確実に半妖の子を生まなければいけなかったり・・私の家との繋がりがなければ最悪の場合、次代でお家断絶等や没落が普通にありそうなのだ・・なのに・・


「なぁんにもわかってない・・まぁ、私は誰が没落しようと関係ないけど・・」


逆に落ちぶれたあいつらを想像するだけでスッキリとした気持ちになれて自然と顔が笑みをつくる


「それに、誰が生徒会の犬よ・・あの人の頼みだからあんたらに従ってるのよ」


全くもって腹立つわね・・私はあの人の犬だってのに

ふと、イラつきながら無意識に時計を見ると時間は昼休みが終わるまで約40分くらい・・そろそろ良い時間ね


何度か深呼吸して『対人関係用の気弱な自分』の仮面を被り、第一音楽室を出ればすぐさま目的の部屋へと歩みを進める






・・部屋の前にいるだけなのに緊張してしまう・・何度も何度も深呼吸を繰り返す

ふと、視線を上げれば『理事長室』の文字が・・彼が部屋のむこうにいる、そう思うと自然と頬が笑みの形をつくる

二度できるだけ響くようノックをした


『はい、どうぞ』


扉越しに彼の低いけど優しい声色の声が響く・・何度聞いても良い声・・って、うっとりしてる場合じゃないわね


「・・失礼します」

「ようこそ、霧嶺さん・・何のようかな?」


笑顔で私を迎えてくれたのは少し中性的な顔立ちで優しい笑顔を浮かべている黒髪をうなじの辺りで纏めている細身の男性

楠木(くすのき) 清吾(せいご)さん、若くしてこの学園の理事長になった人で・・私の昔からの想い人


清吾さんも私の婚約者候補の一人だったが・・年齢のせいで真っ先に候補から外された人・・確かに・・私は今年で満18歳だけど清吾さんは今年で満28歳

・・10歳もの差があるのか〜・・はぁぁ

清吾さんにとって私は妹とか・・まとわりつく小娘くらいにしか思われてないのかな〜

自分のたどり着いた考えにため息を漏らしていれば、清吾さんは申し訳なさそうに苦笑しながら私に近づいてきて・・・・



私の頭を撫でてくれた



せっ清吾さんが私の頭を!?幸せすぎる!!


「すみません、怜花・・ちょっとした冗談ですから、機嫌を直してください、ね?」


ふにゃぁぁぁ!!機嫌なんてもうとっくに直ってます!!むしろテンションが天井知らずですよー!!


「・・はっはい、わかりましたー」


体は緊張してこれくらいしか言えないが嬉しさから顔が真っ赤になって全身が熱い・・今日私・・嬉しすぎて死ぬかもー


「よかった・・紅茶、飲んできますよね?」

「はっはい!!是非!!」


飲みたい!!清吾さんのいれた紅茶飲みたいです!!


身を乗り出した私を見て苦笑した清吾さんは私に背を向けて棚の上にある茶葉やポットを前にして紅茶をいれるための準備をしている


その後ろ姿を眺めつつ・・私は清吾さんに初めて会った時のことを思い出していた



彼に会う前・・私は小学一年生ながらに・・憔悴していた・・

私は嫌だったのに『婚約者候補達と是非会ってほしい』といわれたから候補達とあった・・なのに・・


・・5人とも完全に私を下に見てきた・・


俺の言うことは絶対とか、口を開く度に毒舌とか、気に入らなかったら暴力とか・・『気弱な』仮面をつけてなかったら、私は勘当させられるくらい怒り狂っていたと思う・・本当にあいつらなんなの!!自分達は頼む側でしょうが!!なのになんで上から目線なのよよ!!


そんな時に顔あわせをしたのが清吾さんだった


初めての高校生を相手に私はかなり警戒していた

そんな私を見て、清吾さんはしゃがんで私に視線を合わせて微笑んで頭を撫でてくれた


『こんにちは、霧嶺怜花ちゃん・・僕は楠木清吾、よろしくね』


・・私はこの時から恋してしまったんだと思う

それからは清吾さんの前では『演じる』のをやめた

清吾さんも私を可愛がってくれた


清吾さんが婚約者から外れてからは自分から清吾さんの家に通った・・当然お義母さまとお義父さまは私に好意的、よく『清吾のお嫁に来てね』って言ってくれる


・・そして、私は高校生になり清吾さんはこの学園の理事長になり・・今に至る


「はい、紅茶どうぞ」

「ありがとうございます・・とても美味しいです」


清吾さんが自らいれてくれた紅茶・・じっくり味わわないと

紅茶を飲んでいると清吾さんは申し訳なさそうな表情を私に向ける


「怜花・・ごめんね、無理はしてないかな?」


・・清吾さんが心配してるのは私の仕事のほうね


「はい、全然大丈夫ですよ、私は噂を掌握したといっても過言ではありませんから」


清吾さんが私に与えてくれたことは・・この学園の『噂の操作』

あの生徒会のバカ達は仕事はきちんとするけど余計なことまでする


別に私はそれが噂になって広まって他の人から冷たい目で見られても全く構わない・・が、あいつらはあれでも学園の顔、あいつらの不祥事は学園の不祥事になり理事長である清吾さんの責任になる


私はそれが許せなかったが・・私がなんと言おうとあいつらは性格を変えないし・・ならば、皆が望むような噂を広げ、悪い噂を埋めてしまえばいいと感じた



人は私も含めて愚かな生き物だ

耳障りのいい嘘を真実だと思い、汚い真実を嘘だと断定する

だから、私は皆が望むような真実|(嘘)を流して皆が嫌う嘘|(真実)を忘却へと埋めてしまう

・・それが私が清吾さんに任されたこと


それに・・私はこんな風に噂に振り回される人を見るのが高笑いしたくなるくらい好きだ・・だから、清吾さんは私をもっとこき使って欲しい

清吾さんは苦笑を浮かべて私に近づき優しく頭を撫でてくれる・・すごいきもちいい・・


「怜花・・あと半年・・無理せず、お願いしますね」

「っ!!・・はっはい、もちろんです」


・・そうだったあと半年すれば私は卒業して・・また清吾さんと会えなくなるんだ・・嫌だな・・


でっでも、だからこそ、任された仕事をしないと!!清吾さんにまかされたんだから!!

そうよ!!清吾さんのため全力を尽くさないと!!

私はすぐに出してもらった紅茶を飲み干して立ち上がる


「お茶、ありがとうございました、また放課後に来ますね」

「うん、待ってるよ」

「はい!!失礼しました!!」


きちんと一礼をして理事長室を後にする



―――――――――――――――――



彼女が部屋から出ていったのを見送れば

僕はカップを片付けながらため息をついてしまう


「本当に・・ダメだな、僕は」


彼女を頼りすぎている自分に嫌になる



僕は『九尾ノ狐』の血を代々受け継ぐ家に生まれ育った

そして、妖怪の血を兄弟の中で一番濃く受け継いでいたから年齢が近い弟たちではなく10歳も歳が離れた僕が怜花の婚約者になった



僕は子供が好きだったから僕になついてくれる彼女が好きだった、僕に笑顔で近づいてくる彼女には小動物的な愛らしさがあった

新しく妹が出来たみたいだった・・僕は彼女に対して家族のような親愛を抱いていた

しかし・・彼女は違った・・彼女は僕を婚約者としてみていた・・だから、踏み込めるとこまで踏み込んで、触れられたくないところにはあまり触れなかった・・そして・・いつしか、僕も彼女が好きになっていた


僕は最低だった、怜花を汚すような妄想をたくさんした・・二人っきりだとそのまま怜花を襲ってしまいたくなった・・そして、こんな僕は怜花に相応しくないと悟って・・婚約者候補から降りた


なのに怜花は僕が婚約者候補から降りたと知ればすぐに僕の家の方に通ってきてきた

正直・・それが嬉しかった怜花の心の中に僕がいるってわかったから

あと・・怜花が外堀を埋めてくれたのは嬉しかった・・両親も怜花に好意的になってくれたし


そして怜花は高校生になり、積極的に僕のことを助けてくれた

慣れない学園長の仕事さらには傲慢な半妖の家系の子息達の入学、それに頭を悩ませているときに来たのが怜花だった

そして彼女は僕を見てこう言った


『私にできることはありませんか?清吾さんのためなら私、なんでもします!!』


最初は高校生になったばかりの彼女には頼めないと思ったが・・彼女の目は本気だった、多分僕が頼んだら犯罪にまで手に染める、そんな決意が瞳から伝わり・・そして、彼女に『噂の操作』をお願いした・・


彼女はよく働いてくれた、我が儘な御曹司達の悪い噂を全て隠し、学園を良い噂で埋め尽くした・・

彼女もつらかったろうに・・


「もう・・1年切ったのか」


ボソッと呟けば机の引き出しから二つの指輪が入ったケースを取り出す、もちろん、僕と怜花のだ、彼女が卒業したら、僕は彼女にプロポーズする・・だから・・


「もう少し、待っててくれるかな?怜花」


僕の愛してる人、僕が一番幸せにしてあげたい人の名前を呟いて、ケースを丁寧にしまった

これだけ待ったんだ・・あと1年くらいは問題ない


―――――――――――――――――


放課後なのか生徒が鞄を持ち下校するなか廊下で二人の女子生徒が仲良さげに話している


「ねぇ、知ってる?」

「んっ?何々?」

「あのさ、何年か前の生徒会、イケメン揃いだったって知ってる?」

「あ〜、知ってる知ってる、顔だけじゃなくて中身もよかったんでしょ?それがどうしたの?」

「その生徒会のメンバーって、全員逮捕されて今刑務所にいるらしいよ?」

「えっ?・・マジ?」

「うん、暴行や横領、さらに酷いのだと殺人とか」

「・・それ・・本当に同一人物なの名前だけ一緒って落ちじゃない?」

「全員、本人だってよ、写真も載ってたし」

「じゃあ・・その良い噂ってなんだったんだろ」

「うーん・・彼らが猫かぶって良い面しか見せてなかったのかあるいは・・」

「故意にそういう噂が流されていた・・とか?」


二人の会話に入ってくる人物がいる・・生徒ではなく、黒いスーツを着て眼鏡をかけた人の良さそうな若い女教師だった


「あっ・・そういう考えもあるのか〜流石先生」「ふふ・・楽しそうな会話をしているところ申し訳ないけど・・そろそろ完全下校時間よ、早く下校しなさい」

「は〜い」

「また明日ね、怜花先生」

「えぇ、また明日ね」


女教師は優しげな笑みを浮かべながら二人の生徒を見送る

そのまま彼女は職員室ではなく、理事長室に入り、嬉しそうな笑顔を浮かべる

この部屋の主である男性も入ってきた彼女に笑顔を向ける


「お疲れさま、怜花」

「お疲れさまです、清吾さん」


さらに笑顔を深くする彼女と男性の左手の薬指には銀色に輝く同じ造りの指輪あった



『ねぇ・・・・知ってる?この学校には噂を操る怪物がいるんだよ』


『あなたはこの噂・・信じる?』

『月に惹かれる烏』

『太陽に憧れる兎』

とは全く関係ありません


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