本当にあなたが好きな歌
いつのまにか
かみしめてた奥歯
ガムもかまずに
きつく縛っている
昨日は声を出した?
今日は声を出してみた?
少しだけ口をひらいて
人差し指を立ててみる
それを強く振ってみる
自由のきっかけ
ゆっくり振ったり
冷たく振ったり
押してみたり
回してみたり
床をぼんやり見つめていた
遠く下の方から薄明かりが見えた気がした
小さかった薄明かりは
明度が高くなり
明度が高くなるにつれ
少しずつ大きくなってきた
まるい光のボールが
ひとつ
床から滲んで宙に浮かんだ
これは誰のもの?
これは何のかたまりだろう?
優しさ
誰の?
怒り
誰の?
さっきまで
見えていたボール
窓の外を見ると
雨上がりの夜
白い街灯が照らすのは
ぬれたマンホール
銀色に光る星々のように
つよく煌めいている
ぼくが見つめるのは
光るボールとマンホール
人差し指を立てて
声をだすこと
うたうことをいやがる僕に
どうしたの?
って聞く
うったえることはないの?
と聞く
本当にあなたが好きな歌
それがないなら鼻歌は?咳き込むことがやっとの夜
あなたは誰を応援してるの
その応援する人にうったえる
その人に話しかけてみる
その人に歌いかけてみる
心の中に流れはじめた歌
心に残る歌を
うったえている人の声を聞く
深呼吸をひとつ
ワンフレーズだけ
ハミングし
口笛す




