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HELP!!

「お、メグおまえこんなとこで何やってんだ?」

「何やってるって買い物に決まってるでしょーが。」

当然という様子でメグがそう返す。

「夏休みあと3日しかねぇぞ。」

「それは、圭治も一緒じゃん。しかも、スキンヘッドのおにーさんと一万円札振り回してるなんてどうよ。」

「うっさいなぁ。」

俺たちがそんなやり取りをしていると、一之助がいきなり会話に割り込んできた。

「その女子おなごは圭治の知り合いか。拙者にも紹介してくれぬか。」

そう言った一之助はちょっと口の端に笑いを湛えている。なんか良い感じはしなかったが、俺は二人に互いを紹介した。

「一之助、こいつは伊倉愛海、通称メグ。俺のガキの頃からの友達。メグ、こいつは本山一之助、えーっと…ちょっと訳ありで人探してるのを手伝ってる。」

 だけど、いざ紹介するとなると、一之助をまさか戦国時代の武士とも言えず、俺は口ごもって、当たり障りのないことだけを言った。

「拙者、本山一之助と申す。」

「本山さんね…伊倉愛海です、よろしく。」

するとメグはぺこりと頭を下げてから一之助を上から下までざっと見た。で、

「圭治、何かホント訳ありそうね。」

と言った。

「だってそれ、雅美ちゃんのジャージでしょ?」

「ああ、俺のはデカ過ぎるからな。」

俺はそれに肯いた。ま、メグも同じ中学だったから、それは一発で判るよな。しかもご丁寧に、二の腕に高橋って刺繍入りとくれば……

「あんたこの人の服、ダメにでもしちゃったの?」

「ま、そんなとこ。じゃぁな。」

 

 俺は手を振ると一之助を促して階段の方に歩いて行った。俺は早いとここの状況から抜け出したかった。長いことしゃべればそれだけぼろの出る確率が高くなる。

「ねぇ、私がコーディネートしてあげよっか。」

なのに、メグはいきなりそんな事を言いだした。

「良いよ、別に。俺だけで充分。」

俺は目いっぱい迷惑そうにそう答えたのに、

「コー?解らんが、伊倉殿も一緒に見立ててくれるか。拙者この時代の服はとんと判らぬ故、一人でも多い方が心強い。」

なんて、一之助が言うもんだから、俺は思わずものすごい顔で一之助を睨んだ。

「何よ、その顔。本山さんが良いって言ってくれるんだからあんたが怒ることないじゃん。」

その顔を見たメグはそう俺に返した。

「別に俺は怒っちゃねぇよ。じゃぁ、来いよ。」

俺はそう言うと、不機嫌な顔のまま階段を昇りはじめた。一之助も素直にそれに続く。

「ねぇ圭治、なんでエスカレーター使わないの? すぐそこなのに。」

すると、メグは階段の下でそう声を上げた。

「うっさいよお前、2階位階段で昇れよ。デブるぞ!」

「解ったわよ! 昇ればいいんでしょ!!」

俺の言葉にメグは階段を駆け上がり、俺たちを追い越して2階フロアで口を尖らせて俺たちを待った。

「おっ、ちょっとは痩せたんじゃね。」

そして、上がりきってそう言った俺に、あっかんべーをしている。ガキか、お前は…


 一之助が最初、試着室にも入らずに着替えようとしたのは、ちょっと度肝を抜かれたけど(なんせあいつサイズの下着なんてなかったから、ジャージの下はスッパだったし、マジ慌てた)、後は上機嫌でメグの持ってくる服を飽きずに試着して(その間にこっそりパンツ買って穿かせたし)、見た目だけは現代人っぽく変身した。


「一之助、相手が女だと態度変わんのな。」

俺がそう言うと、一之助は、

「妬いておるのか。」

と返してきたので、

「そんなんじゃねぇよ。」

と睨んだ。それでも一之助はまだにやにや笑っている。感じ悪っ!メグに任して俺、フケようか……そう思った。


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