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棘のないヤマアラシ

作者: 雲晴 莉叶
掲載日:2025/11/23

棘がないヤマアラシ


雪の降る森の奥に、ハリーという名前の小さなヤマアラシが住んでいました。


他のヤマアラシたちはみんな、背中に鋭い棘をびっしり生やしています。寒い夜にはみんなで寄り添って、棘を立てないように気をつけながら体温を分け合います。少し痛いけれど、それでも温かい。みんなそうやって冬を越してきました。


でもハリーには、棘が一本もありませんでした。


生まれたときから、背中はつるつる。ふわふわの毛だけしか生えていませんでした。


ハリーはみんなと一緒にいたいと思っていました。でも近づくと、他の子たちの棘がハリーの体にぐさぐさ刺さります。離れたくないのに、痛くて泣きながら逃げ出すしかありませんでした。


「ごめんね、ハリー……こっちに来ないでくれると助かるんだ……君を傷つけたくはないんだよ」


みんなは申し訳なさそうに言うけれど、結局ハリーはいつも一人で震えて眠るしかありませんでした。


近づけば自分が傷つく。離れれば寒くて死にそうになる。僕はずっと孤独でいるのかな。


ハリーは思いました。


「僕、みんなと一緒にいられないんだ、みんなと違うから。」


ある吹雪の夜、ハリーはもう限界でした。体が冷えきって、動けなくなって、雪の中にうずくまっていました。


そこに、一匹のヤマアラシが駆け寄ってきました。名前はトゲ。ハリーの一番の友達でした。


「ハリー! 生きてるか!?」


トゲは自分の体をハリーにぴったりくっつけて、必死に温めてくれました。トゲの棘がハリーの体に刺さる。でもトゲは離れようとしませんでした。


「トゲ…痛いよ…離れてよ……」


「バカ言うな。俺はお前が死ぬ方が痛い」


トゲは泣きながら言いました。


その夜、ハリーはなんとか生き延びました。でもトゲの体は、傷だらけになっていました。

トゲも身体がボロボロになりました。


翌朝、トゲは森中を探し回って、あるものを集めてきました。


硬い松ぼっくり、木の枝、……それらを丁寧に削って、小さな棘の束を作りました。


「ほら、これを背中にくっつけてやる。」


トゲは木の樹脂で1本1本、ハリーの背中に棘をつけていきました。痛かったけれど、ハリーはじっと耐えました。


全部つけ終わると、ハリーの背中には立派な棘が並んでいました。


「これで……お互い様だな。」


トゲが笑いました。


その冬から、ヤマとトゲオはいつも一緒にいました。


近づきすぎるとお互い痛い。でも離れすぎると寒い。


だから二人は、少しだけ離れて、でもちゃんと温もりが届く距離を探しました。


ときどき棘が当たって「いたっ!」って言い合ったりもしたけれど、それでも笑い合いました。


ハリーは気づきました。


完璧に傷つかない距離なんてない。


完璧に温かい距離もない。


でも、傷つきながらも温め合える距離がきっとある。


棘があっても、なくても。


大切なのはお互いを傷つけたくないと思う気持ちと、それでもそばにいようとする勇気なんだって。


雪が解ける頃、ハリーの背中の棘はもう樹脂ごと抜け落ちていました。


でもハリーはもう、一人で震えることはありませんでした。


トゲがまた新しい棘を作ってくれるから。

他のヤマアラシの仲間も、ドングリを拾ってきたり、尖った石を持ってきてくれました。



みんなはちょうどいい距離で、寄り添って

いつまでも仲良しに暮らしました。



ヤマアラシのジレンマから。

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