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38. 新しい生活

 

 はっと目を開けた瞬間、私は真っ白な光の空間から抜け出し、元の場所に戻ってきていた。

 胸の奥にまだ残る温もりを確かめるように息を吸い込むと、そこに――彼がいた。


「アレン!」


 地面にしゃがみ込んでいたアレンは、私の声に反応して、勢いよく顔を上げる。

 その目が私を捉えた瞬間、驚きと喜びが入り混じった表情が浮かんだ。まるで幻を見ているかのように、彼は瞬きを繰り返す。


(……帰ってこれた。アレンの元に、本当に戻ってこれたんだ)


 胸の奥からこみ上げる想いに突き動かされ、私は迷うことなくアレンの胸に飛び込んだ。硬い腕に受け止められた瞬間、全身に広がる温もりに心が震える。


「……ミア?」

 信じられないものを確かめるように、アレンが恐る恐る私の名前を呼んだ。


「ただいま、アレン!」

 真っ直ぐにその瞳を見つめて言葉を紡ぐと、アレンの目にようやく確信の光が宿る。驚きで固まっていた表情が、ふっとほどけ、頬が柔らかく上がった。


「……ミア……!」


 彼の腕に込められる力が強まる。ぎゅっと抱きしめられ、まるで存在を確かめるように離してくれない。その震える腕に包まれると、胸の奥までじんわりと温もりが染み渡っていく。


「アレン……」

 名を呼んで顔を上げると、彼の瞳が赤く濡れているのに気づいた。


「……アレン、もしかして……また泣いたの?」

 問いかけると、彼は小さく息を呑み、ふいっと視線を逸らす。


「……そんなこと……」


 照れ隠しのようにそっぽを向くその仕草さえ、今の私には愛おしくてたまらなかった。

 自然と笑みが零れると、アレンもまた視線を戻してきて、真剣な眼差しで私を見つめた。


「ミア……」


 囁くように名前を呼ばれる。

 その声に胸が震え、次の瞬間、彼の手がそっと頬に触れた。

 優しく撫でられる感触に、肩がびくりと揺れ、鼓動が一気に高鳴る。耳の奥で自分の心臓の音がうるさいほど響いた。


「……好きだ」


 低く、けれど揺るぎのない声が落ちてくる。真剣な眼差しに射抜かれ、全身が熱に包まれる。


「私も……」

 自然と頬が熱を帯び、言葉が零れた。


「私も、好き……」


 その瞬間、アレンの表情がぱっと花開くように明るくなる。嬉しそうに口を開いたその顔は、滲んで見えるほど眩しかった。


「じゃあ……今日からミアのこと、彼女って呼んでもいい?」

 少し照れながらも真剣な声。


「ふふ……彼女にしてくれる?」

 わざとからかうように返すと、アレンの顔がさらにぱっと輝いた。


 その笑顔を見るだけで、胸が温かく満たされていく。


「本当は、今すぐにでも結婚したいくらいだけど…」

 小さく冗談めかして呟くアレンの声に、思わず笑みがこぼれる。


「ミアの心の準備ができるまで待ってる」

 耳元でそう囁かれた瞬間、胸の奥が甘くくすぐったくなり、思わず目を閉じてその温もりを噛み締めた。


 二人の間に、言葉はいらない穏やかな時間が静かに流れる。差し込む光も、呼吸も、静けささえ、すべてが心地よくて愛おしい。


「好きだよ」


 再び囁かれた言葉に心が震える。アレンが顔を近づけてきて、前髪が私の額にふわりとかかる。


 鼓動が早鐘のように響き、呼吸が浅くなる。私はそっと目を閉じた。


 そして――。


 唇が触れ合った瞬間、世界が一瞬静まり返る。柔らかな温もりが頬に広がり、心臓が大きく跳ねた。

 時間が止まったようで、けれど同時に永遠が始まったような感覚。


 アレンの温もりと、重なった鼓動だけがこの世界に確かに存在していた。


 世界が静止したような静けさの中、ただ彼の温もりだけが確かで、これからも共に歩んでいけると心から信じられた。



〜FIN〜


完結しました!ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

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