2.始まりの街 8
スキルの使い方というのが正直に言うと全くわかっていない。何をどうすれば使えるんだろうか。歩行はわかるんだよ。歩けばいい。いや、このスキルが何の役に立つのかはわからないけど、歩行は歩けばスキルレベルが上がるし、使ってることになるとは思う。
っていうか、アクセサリー鑑定っていうのも取ってたはずだけど、鑑定とはまた違うの……? ゲームって難しいなと思いながらHELPをポチポチといろいろ開いていくと、それらしい記述を確認した。
「○○鑑定」と「鑑定」のように、似たような名前のスキルは、鑑定できる内容に差異がある。ただの「鑑定」スキルは、大雑把な情報の鑑定となり、アイテム名、性質、品質、簡単なアイテムフレーバーがわかる。「○○鑑定」のような特化スキルは「○○」に入る系統に関する情報が表示される。あ、下に例文がある。
薬草
性質:治癒属性 品質:C 平均売価:10B
世界に広く繁茂している草花の一つ。
【傷薬の材料の一つで、調薬師が求める植物。】
ふんふん、上三行が「鑑定」でわかる部分で、【】の中の部分が「調薬鑑定」でわかる部分、っと。つまり、アクセサリー鑑定を持ってると、アクセサリーの素材になるアイテムを鑑定したら、【】の部分がアクセサリー関係の表記になるってことか。
じゃあアクセサリーに使うものかどうかを確認するだけならアクセサリー鑑定だけでよかったのかな。あ、でも使わないアイテムだった時は平均売価を見て、取捨選択はできるかも?
商売についてはあまり知識がないけど、安価で売買できるものは基本的に薄利になるものが多い傾向にあるんだよね。もちろん状況によって値段の変動はあるはずだけど、価値のあるものをむやみやたらと安価で売買することは他者の利益を損害することになりかねない……だっけ?
高校時代の社会科系の教師が脱線好きで、流通商品の売買価格の小話の時にそんな話をしていた気がする。もちろん、価値が低い、いわゆる大量生産品をむやみやたらと高額で売買することも他者の利益を損害するから、「高額転売ヤーは須らく死すべし、慈悲はない」って口癖みたいに言ってたな。あの教師に何があったんだろうな。
それはそれとして、スキルの使い方は???
HELPで「スキル」「使い方」で検索したら出てきた。ふんふん、歩行とか見たいに行動が想像できるスキルは、その通りに行動すれば使用したという判断になる、意識していると熟練度が貯まりやすく、スキルのレベルが上がりやすい、と。
逆に、行動を伴わないスキル……例では魔法スキルが上がってた……を使用したい場合は、「どのスキル」を「どこ」「だれ」に向けて使用したいかを強く意識すると使用できる。熟練度が貯まり、レベルが上がれば意識を向けるだけで使用できるようになる場合もある、と。
ふぅん、最後はほんとかなって疑心暗鬼だけど、自分が慣れて簡単に使えるようになるっていうのはちょっと納得感がある。ある程度回数をこなしたりすると、頭で意識して考えなくても体が勝手に動くっていうのはわかるから、それの事かな。
とりあえず、意識すればいいのか。
「……うーん、どれにしようかな」
先ほどウェストポーチに放り込んだ草をいくつか取り出して眺める。ぼんやりと眺めてると、むしった草はおおよそ三種類くらいの形状をしているのに気づいた。すっと細長く伸びていて少し硬いのと、同じく細長いけど柔らかくて弾力があるの、ふんわりとした形で葉先が丸い柔らかいのだ。たぶん、同じ形の奴は同じ種類の草なんだろうな。
三種類の中から、細長くて少し硬い草をつまんで持ち上げる。じーっとその草を見つめながら、この草を鑑定したいと念じると、目の前に小さなウィンドウがポップアップした。いきなり出てきたから一瞬びっくりしたけど、これは鑑定ができたっていうことなのかな。ポップアップウィンドウに表示されている文章に目を通す。
エルガー草
性質:雷属性 品質:D 平均売価:5B
世界に広く繁茂している草花の一つ。
少し硬度があるが、芯として使用するには少し技量が必要。アクセサリー職人の入門素材として求められる植物。
エルガー……くさ? そう? とりあえずアクセサリー制作に使えるっぽい。どうやって使うんだろ。ほかの二つも鑑定したら入門書に目を通してみよう。今あるのだけで何か作れそうならいいし、足りないなら探さないと。
そう思って、細長くて柔らかい方をつまみ上げてじーっと見つめて鑑定してみる。先のエルガー草と同じく目の前に小さなウィンドウがポップアップする。
ミットライド草
性質:聖属性 品質:D 平均売価:5B
世界に広く繁茂している草花の一つ。
柔らかくて弾力があるため、マクラメの練習に使われる。アクセサリー職人の入門素材として求められる植物。
あ、これも使えるんだ。マクラメ。マクラメってなんだっけ。雑貨屋のおばさんが教えてくれたアクセサリーの中にあった気がするんだけど、いっぱいみたからどれがどれだかよくわかんなくなってる気がする……。ちゃんと入門書読んで確認しよう。
むしった草は三種類がおおよそ均等な量があるから、それなりに練習できるかな。できるといいな。あ、最後のはなんだろ。
先が丸いふんわりとしてる葉っぱをつまみ上げて同じようにジーっと見つめる。この草はなんだろな~。そんなことを考えながら見つめていて表示されたポップアップの文章はこれだった。
薬草
性質:治癒属性 品質:D 平均売価:10B
世界に広く繁茂している草花の一つ。
花を特殊な加工をして編み込むことで性質を付与できる。葉は使わない。アクセサリー職人の入門素材として求められる植物。
……葉っぱいらないのかよ!!!!!!
くっそ、三分の一はこいつなんだけど。花? こいつ花なんてついてなくなかった? ってか、これが例で載せられてた薬草かぁ……。やりたいことには使えないっぽいけど、例で書かれてた文章だと、これって調薬師? って人が欲しがってる奴なんだっけ。欲しい人、いつのかな。例と品質違うけど。
でも、欲しい人ってどこにいるんだろ。よくわかんないや。
とりあえず全部鑑定はできたし、入門書を読もうかなって思ったら、連続ログイン制限時間を知らせるアラームが鳴った。まだ余裕があると思ってたからびっくりしたけど、そういえば草を採取……っていうかむしってる時間が長かったんだと思う。
次のログインの時は、入門書を読もうって決めて、メニューにあるログアウトボタンを押した。