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OTRA VIDA  作者: 杜松沼 有瀬


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6.幻獣と加工と調剤と変人 6

 4メートルくらいと聞いたとおり、穴自体はそれほど深くはなかった。4メートルが浅いのかというと疑問はあるけど、僕の体感としては本当に一瞬だったので、深いとは感じなかった。

 ニニだけ風圧で飛んでいかないようにしっかりとつかんで、落ちる時の風が体中を包む感覚と、重力に逆らう浮遊感からくる背筋に走るぞ割とした感覚が一緒に襲ってくるのを受け入れながら、地面までの距離を確認する。

 高さとしての4メートルで地面に到着するのはほとんど一瞬だと思う。降りたと思ったらすぐに地面に到着した。薄い靴裏に接触した地面の硬さが響く。ジンとしびれるような痛みが立ち上ってくるけど、つらいと感じるほどではないから、衝撃を逃がすために軽く曲げた膝を伸ばす。

 もう大丈夫だろうとニニをカバーしていた手を外して、落下の風で首筋や頬に引っかかる髪の毛を直しながら周りを見回すと、少し離れたところにぽっかりと横向きに大きな穴が開いていて、その前に生姜(ジンジャー)さんと最中(モナカ)さんが立っていた。

「梯子を降りて来てもよかったのに」

「飛び降りた方が早そうだったから」

 それと、多分大丈夫だろうけど、この細い縄でできてる縄梯子を何度も行き来したら、それだけ千切れるのが早くなりそうだなって思ったし。

「じゃ、カナカくんもきたしこの横穴見てみよう」

 そういう最中さんの右手には大き目のツルハシ、左手には暗がりをまるで魔昼間のように照らすことのできそうなランタンをそれぞれ握ってる。ランタンは煌々と光ってるけど、その光を見ても眩しくて動けないほどではなかった。

 なんだろう、何とも言えない絵面のひどさがある。もう少し何とかなりそうなんだけど……。ツルハシが結構大きいのもそうなんだけど、なんか最中さんが持ってるツルハシのデザインが、何だろう、黒と紫色がメインでもやもやとしたものがついてて、普通ではないデザインがすごい。

「カナカくん、こっちだよ」

 ちょっと近づきがたい感じがあるんだけど、最中さんに手招かれたのでそっちに近づけば、最中さんはそのまま横穴へと足を踏み入れる。

 最中さんの持ってるランタンで照らされた横穴は、結構奥の方に続いていて、明かりで照らされても奥の壁は見えない。横壁は掘りっぱなしなのか、デコボコとしていてちょっと衝撃を与えたらボロボロと崩れてきそう。足元も細かく石が転がっていて、ニニは下に降ろしたら歩くのが大変層がくらいには悪路になってる。

 最中さんの後ろについて横穴に入るけど、足元のデコボコが足の裏に刺さってちょっと痛い。靴、もっと靴底の厚いやつを探した方がいいかな。イベント終わったら、もらった服をずっと着てるのもなんだかなって感じだし、服もあわせて探しに行ってもいいかもしれない。

 数分かけてゆっくりと進んだ横穴の先は、ゆるく曲がって続いていて、最終的に拓けた空間にたどり着いた。結構天井が高い空間で、結構広くて、天井近いところがキラキラと星空みたいに光ってる。天井近い壁のところも淡く光ってるのもあって、最中(モナカ)さんのランタンがなくても案外明るいかもしれない。

 その空間の中央部分には天井には届かないけど、人一人よりも大きい岩が目立つ。その近くまで最中さんが走っていったけど、最中さんは二人分くらいの高さはありそう。幅も一メートル以上ありそう。

鍾乳洞(しょうにゅうどう)型の採掘所だね」

 僕の後ろから中を覗き込んだらしい生姜さんがそうつぶやいたのが聞こえる。これ、採掘所なんだ? っていうか、鍾乳洞……?

「この形の採掘所だと、中央のデッカイ岩と、周囲の壁にぽつぽつと生えてる鉱石から採掘できるんだよ」

「へぇ。……ところで、鍾乳洞……?」

 鍾乳洞って、確か鍾乳石(しょうにゅうせき)がある洞窟のこと、だよね。鍾乳石って天井から滴った滴が長い年月をかけて氷柱状になったもののことじゃなかったっけ?

「最初にこの形の採掘所が見つかった時は鍾乳石があったんだけど、いつだかのアプデで鍾乳石が削除されたんだよね。でも、その時点ですでに通路タイプの採掘所を洞窟型って呼んで定着しちゃってたから、鍾乳石がなくなった後もこの形の採掘所は鍾乳洞型って名称のままになってるんだよね」

 なるほど? もともとあったのものがなくなることもあるんだ。確かに、すでに定着してるのを変更すると訳が分からなくなることもあるもんね。

「とりあえず採掘しよう。早くしないと最中が全部掘っちゃいそうだよ」

 そう言いながら指さす生姜さん。指の先に視線を向けると、中央の大きな岩にツルハシを振り下ろしている最中さんが見えた。

「採掘って、ああやればいいの?」

「基本的にはそうだね。採掘できるポイントは、あの中央の岩みたいなのか、壁から生えてる石があるでしょ。アレに採掘スキルを使うか、採掘用のツルハシで掘ればいいんだよ」

「ふぅん」

「露出型の採掘所だと、あの中央の岩みたいな目立つのが一つだけぽつんとあって、洞窟型はさっき通ってきたみたいな通路なんだけど、通路壁からこの場所と似たような感じで石が生えてる。鍾乳洞型はこんな感じの拓けた部屋みたいな空間で、中央の岩と壁の石とが合わさったところなんだよ」

「なるほど」

 そういう種類があるんだ。ってことは、多分採掘する場所が一番多いのが、この鍾乳洞型なのかな。採掘するところにはいっぱい採れるところとそうじゃないところがあるんだ。

 僕が生姜さんに教えてもらってる間に、最中さんはなんの躊躇もなくガッツンガッツンとツルハシを振り回してるから、本当に一回も採掘する前に全部採掘されそうな気配がする。

 とりあえず、実際にやってみるか。かばんの中に入ってるツルハシを取り出して、生姜(ジンジャー)さんに聞いたとおりにやってみる。

 ツルハシを叩きつけるために肩上まで金属部分を持ち上げてみると、思った以上にツルハシの金属部分が重たくて、ちょっとよろけそうになるけど、そのまま壁から生えている石に近づいていく。

 壁から生えてる石は、中央の岩よりも大分小さいけど、壁のデコボコとは言い切れないくらいの大きさがある。多分、僕の腕よりは太く見えるその石は、壁から4~50センチは飛び出てるから、ツルハシの先端を当てるのも何とかなりそうだった。

 その石の前に立って、持ち上げたままだったツルハシを振り下ろす。何とか空振りせずに済んだツルハシの先端は、壁から生えた石の中心くらいに当たって、軽く穴が空いた。

 これで終わりなのかな、と一瞬思ったけど、地面を見下ろしてもそれっぽいものは見えない。前にアメリーさんのお店で購入した石は、もっと手のひらくらいの大きさのものがあったくらいだし、壁から生えた石もそこまで削れてないから、もっとツルハシで叩くのかな。

 ちらっと中央の岩の辺りを見ると、最中さんはガッツンガッツンと何度も何度もツルハシを岩に叩きつけてる。音を聞く限り結構な勢いでやってるみたいだけど、これって力いっぱいやった方がいいのかな。

 わかんないことだらけだけど、とりあえず真似してみようと思ってもう一回ツルハシを振り上げる。固いものにツルハシの金属部分が接触した反動がすごい。さっきはそこまで感じなかったけど、めちゃくちゃ手がジンジンとしびれてくる。手のひらから肘辺りまでに強いしびれが走る。あんまりやりすぎるとツルハシが手から滑りそう。

「あ、アンシャルディグ! グタムティグも出てる!」

 ひゃっほーいと奇声を上げながらぶんぶんと最中さんがツルハシを振り回してる。アンシャルディグはたしかアメリーさんの雑貨屋でも購入できる鉱石の一つだった気がする。なんとなく名前に憶えがある。でも、グタムティグの方は聞いたことがないから、アメリーさんのところでは売ってないんだと思う。

 最中さんが喜んでるってことは、何か薬を作るのに必要なのかな。今持ってる本に書いてあった分にも載ってなかった素材だと思うし、何をするのに使うのか聞いて、アクセサリー作るのに使えそうなら使ってみようかな。

「……どれが採掘で採れてるやつなんだろ」

 ガツガツとツルハシで突いて、壁から生えた石がほとんど見えなくなったところで手を止めて地面をじっと見つめる。

 壁際の地面には、僕がツルハシで突いて砕けた壁から生えてた石の残骸と思われる石屑や、その時の衝撃で巻き込まれて崩れたと思われる壁の破片が大量に転がって山になっている。

 とりあえずしゃがんでその細かい石の山を見ていると、濁った灰色なんかの中に、時々キラキラと光を反射するものがある。この反射するのが採掘で採れるやつなの?

 鑑定のスキルを使ってみても、『石屑の山』と表示されるだけで詳細がわかんない。これどうするの? とりあえずこのままかばんに放り込むか。

 そう考えたけど、この石屑の山両手で掬い上げても、大きさが小さくて手のひらからさらさらと零れ落ちて行ってしまう。え、これどうすればいいの。アメリーさんからはツルハシしか買ってないんだけど……?

「袋みたいなのあったかな……」

 カバンの中をあさるけど、さすがに袋っぽいものは何もない。どうしようかな。マクラメでカバンを編んでも、正直隙間から零れ落ちちゃいそうなんだよね。

 どうしようかな。考え込んでいると、ぽんっと肩を叩かれた。

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