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OTRA VIDA  作者: 杜松沼 有瀬


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6.幻獣と加工と調剤と変人 1

手癖で書いてたらなんか一人称出しづらくなって必死にごまかしごまかし書いてたんですけど、そろそろしんどくなったので、今回から普通に地の文に一人称でます。

 むい、むいっと頬のあたりを押される感触。なにこれと思いながら避けるように寝返りを打つと、首筋の辺りになんだか覚えるある感触が突進してきた。

 なんだこれ、と重たい瞼を持ち上げるのとほぼ同時に、「キューイッ」と甲高い鳴き声が聞こえて、あぁ、そっかとニニの存在を思い出してもう一回寝返りを打つ。

 すると、人の首筋に頭突きしてきていたニニが、おはようと言いたげに「キューイッ!」ともう一度鳴くので、寝起きでがっすがすにかすれた声で「ぉはょ」と返せば、ニニは満足げに一つ頷いた。

 若干くらっとする頭を押さえながら上体を起こしつつニニを見ると、ニニはずいぶんと器用に枕元においてあったニニ用のかごに入って、何かを取り出してまたひょいっと乗り越えてこっちに戻ってくる。いや、ほんとに器用だなぁと思いながら眺めてたら、ニニが何かをこっちに差し出してきた。

「キュイッ! キュキュキュイッ!」

「……なに、これ?」

 差し出されたものを見ると、よくわかんないけど薄い桃色をした、キラキラと光を反射する小さい石だった。なんでこの石を渡されたのかはよくわかんないけど、ニニがくれると言いたげな仕草を見せるので、とりあえずもらっておくかと、サイドテーブルに置いてあったかばんに放り込んだ。

『起きろ―――――! 朝だーーーーー!!』

 ニニがとっとことベッドから降りていく様子を眺めていたら、昨日の朝と同じく真鯛(マダイ)の刺身さんの大声がパーティーチャットに響き渡る。昨日と同じく耳の奥にキーンと響いたそれに、二度目でもキツいと余韻をやり過ごすために布団に出戻りする。

 そんな僕の様子に驚いたのか、ベッドを降りて行ったニニが慌てたようにベッドに上ってきて、布団に突っ伏しているこちらを心配げにゆすってきた。

「だいじょぶ、ちょっと声が頭に響いてるだけだから」

「キュキュイ? キュイィ……」

「ん、ちょっと待って。少ししたら落ち着くから」

 パーティーチャットでは昨日と同じく真鯛の刺身さん以外の人たちからブーイングが起こっているのも聞こえるけど、音という音が頭に響く感じがひどい。

 騒いでる人たちはこんな風にはなってないのかな。結構くらくらすると思うんだけど。

 そう思いながら枕に突っ伏して目を閉じでじっとしていれば、徐々に波が引くようにそれもなくなるから、それを待っていると、ニニが僕の上にのっかってきたのを感じる。

 ちょうど首の上に乗っかってきているのを、手を伸ばして触れば小さく震えているように感じて、ゆっくりとニニの体をなでる。

 ゆっくりニニをなでてる間に、体調も落ち着いたので、ニニをつまみ上げて首の上からどかして体を起こす。ニニを顔の前まで持ってくると、なんだか不安そうに見えるような顔をしてたので、もう大丈夫だよと声をかければ、つまんでいた指先にぎゅっとしがみついてきた。

 それにしても、二日連続であの大声でひどい目に合ってるんだけど、なんか回避する方法ないのかな。後で調べておこう。

 指にしがみついたままのニニをつかんだまま、一先ず下に降りることにする。脱いだり外して置いたりしたものを身に着けてから、昨日と同じように、今度はニニをての上に乗せたまま一回へと降りる。途中で近くの扉から出てきた服をくれた変人がこっちを見てひっくり返ったけど、奥から出てきたれるん。さんが「織夜(オリヤ)邪魔」って蹴って廊下の壁際に押しやってた。

 手の上でそれを目撃したニニがびくっと体を震わせてたんだけど、どうしたんだろう。れるん。さんがこっちを見て「早くご飯にいこ」と声をかけてくれたので、促されるままに僕たちはその人を放置して食堂に向かった。

 食堂に入ると、テーブルに突っ伏して寝てるっぽい最中(モナカ)食べたいさんと、その隣にジンジャーマンクッキーさん、それからその向かい側にカササギさんがいた。

 れるん。さんは奥の方に向かって行って、カササギさんがおいでと手招きをするので、カササギさんの隣の席に座る。ちょうど僕の向かいに最中食べたいさんがいたので、そういえば寝る前に聞こうと思ってたことがあったなと思いだす。

 ニニをテーブルの上に降ろしながら聞こうと思ってたことをまとめる。まず聞きたいのは、接着剤だ。木材と加工した植物をしっかり接着できる接着剤を知らないかを聞きたい。

 どうせ聞くなら、まとめて聞いた方がいいかもしれない。ほかに何か聞きたいことはあったっけ。ひとまずは接着剤が一番欲しいけど、ああ、そうだ。塗料についても聞いてみよう。

 どうしても木材の持つ色味だけだと、組み合わせたい素材と色味が合わないことも少なくはない。そういう時は塗装するのも手だと本には記載されてたけど、塗装に必要な塗料の詳細は書いてなかった。一応、塗料も調合で作れるとは聞いたけど、作り方もわからないから、一緒に確認しておこう。

 あとは思いつかないけど、最中食べたいさんが知ってる中でアクセサリーでも使いそうな薬剤の調合とか思いつく物があれば教えてもらえないかな。今すぐ使わないのでも、これからやりたいと思ったことに必要になるかもしれないから、知っておきたい。

 ちらりと最中食べたいさんをみると、ジンジャーマンクッキーさんに首元をつままれて起こされているところだった。どういう状況なんだろう。これって声をかけてもいい状態なんだろうか。

 僕がどうすべきか悩んでいると、ジンジャーマンクッキーさんが僕の様子に気づいたのか「どうかした?」と声をかけてくれる。聞いても大丈夫なのかなと少し躊躇したけど、まだ食事は始まりそうにないし、聞けるうちに聞くべきかと思いなおして口を開いた。

「あの、最中食べたいさんに調合のことで聞きたいことがあって……」

「おっ、調合のなに? ポーション作る?」

 僕が一言調合と口にしたとたんに、少しけだるげに頬杖をついていた最中食べたいさんが、ずずいっとこちらに向かって体を乗り出してくる。勢い良いその行動に、テーブルの上のニニはすごい速さで僕の腕をよじ登って首の裏と後ろ髪の間に逃げ込んだし、隣のジンジャーマンクッキーさんに「おちつけ!」と頭に拳骨を落とされてた。

 「いっっっだぁっ」と悲鳴を上げて頭を押さえる最中食べたいさんに、とりあえず首の裏に逃げ込んだニニをなだめるようにつかみながら、首を振って否定する。

「ポーションはいらないですけど、木材と加工した植物をいい感じに接着できる接着剤を知りたいです。あと、染料じゃなくて塗料も知ってたら教えてほしいです」

「木材用の接着剤と塗料? んんんん……あぁ、うん、いくつかあるよ。でも、さすがに素材が足りないかな……」

 頭を押さえながらこっちの話を聞いてた最中食べたいさんは、ポーションはいらないの言葉に沈んだかと思うと、ほかの薬剤の話にすぐに顔を上げて少し悩むように視線をさまよわせながらそう言った。

「調合、調剤、調薬の基本として、ポーション類の飲料系の水薬は植物素材を中心にすることが多い。逆に、キミが言うような、接着剤なんかの溶剤系や固形剤系には、鉱石系や魔物系の素材を中心にすることが大多数なんだ。で、キミが求めてるのは後者で、申し訳ないけどこっちも昨日までに根こそぎ採取してきたのは植物系ばっかりだから、鉱石類の素材在庫がほぼゼロ。魔物素材も、狩りに出たのはれるん。だけだから、たぶんそこまで種類もないと思うから、まずは材料採集しないと難しいかな」

 空に指を滑らせながら、つらつらとそう答えてくれる最中食べたいさんに、なるほど、と増えた知識を忘れないように頭の中で分けていく。今は素材がないなら、今日もまずは素材を取りに行くのがいいかもしれない。素材が集まってから、最中食べたいさんに作り方を聞けばいいか。

 そう思ってお礼を言おうと思ったら、最中食べたいさんの隣で話を聞いていたらしいジンジャーマンクッキーさんが一つ提案をしてくれた。

「じゃあ、朝食が終わったら俺たちと一緒に採掘に行かないかい? どうせ最中はそろそろ採掘系の情報が出そろい始めたから新規素材開拓に行きたいって駄々こねるだろうし、カナカくん単独行動は良くないだろう?」

 その提案に、若干ニニが最中食べたいさんを警戒するようにしてる雰囲気を感じるけど、隣でカササギさんがにっこりしてる気配もするから、僕は素直に受け入れるように頷いた。

「ニニ、最中食べたいさんが近くにいるのヤだったら、部屋で寝ててもいいよ」

 僕としては、嫌そうなニニへの助け舟のつもりでそう聞いたんだけど、言った途端にびっくりするくらいの大声で抗議するように鳴かれた。

「キュイ!? キュキュキューイッ!! キュイッ、キュイイイイイイイッ!!!」

「っ!? なに、ちょ、うるさっ!」

「キュイイイイイイイイイイッ!!!」

「ニニ、耳痛いってば……っ」

 わざわざ首の後ろからちょっと耳に近づくように頭を寄せてから大きな声を出すものだから、本日二度目の耳の奥にキーンと響く嫌なものにくらくらとするのが再発して、頭がズキズキと痛みを訴える。

「え……幻獣ちゃんに嫌がられてる……?」

「そりゃ、昨日最中にあれだけの勢いでぐるぐる回られたら怖くもなるだろうね」

 痛みにテーブルに突っ伏すと、苦笑するカササギさんの笑い声と合わせて、向かいからショックを受けてるような最中食べたいさんの声と、呆れたようなジンジャーマンクッキーさんの声が聞こえた。

 ニニは、多分ここまで僕にダメージが入るとは思って泣かったっぽくて、僕がテーブルに突っ伏すのと同時に「キュイッ!?」と驚いて、少しうろたえたように首から降りて僕の頭に手を当ててくる。ちっちゃい、どことなく不思議な感触のものが、僕の頭を軽い力で何度も行き来するのを感じながら、頭痛が引くのを待った。

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