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OTRA VIDA  作者: 杜松沼 有瀬


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5.プレイヤーとの交流 23

 工房に入って、作業テーブルの上にのる程度にさっき採取してきたばっかりのものを広げていく。それから、ざっとみて試作に使いたい色味だったり、形だったりするのを手早く取り分ける。

「キュイ?」

 そうやって仕分けていると、ニニが不思議そうに鳴いた。

 ニニってどこまでわかるんだろう。そう思ったけど、結構言葉も通じてる雰囲気があるし、デザイン画も見せたら理解できるのかな。そう思って、かばんの中からデザインを書いたメモを取り出して、少し素材を押しやって広げたテーブルにメモを広げる。

「僕、アクセサリーを作りたいんだ。お前と会ったのは、その素材を集めてる帰り道だったの。今は、これを作ろうと思ってて、今素材を選んでたところだよ」

 デザイン画を見せながらそう話しかけると、ニニは食い入るようにデザイン画を見ていた。一分くらいじーっと見てるから、なにか気にかかるところでもあるのかなと思っていると、ニニは「キュイッ」と一鳴きして、素材が広がってる方に走っていく。

 何をするつもりなのかと思ってみてると、ニニは素材の間を駆け抜けていたかと思うと、下の方になっていたアルフトラウムとベルヒガングを何輪かつかんでこっちに向かってきて、掴んでた数輪を差し出してくる。

「キュッ、キュイーッ」

「なに。……これを使えってこと?」

「キュイッ!」

 そうだといわんばかりに頭を上下に振るニニに、とりあえず手を差し出して持ってきてくれたものを受け取る。ニニが持ってきた花を見ると、ほかのものよりも形が整っていたり、色味も発色がよくて綺麗なものばかりだった。

「これ、いいやつを探してきてくれたの?

「キュイッ!」

 これが満面の笑顔ってやつなんだろうか。ニニがにっこりと笑いながら頷いてくるので、それに「ありがとう」と返して頭を指先でぐりぐりとする。

 ニニが変わらず嬉しそうにしている様子を見て、少しだけほっとした気分になる。

 動物と触れ合うなんてこともなかったから、ニニに対してどういう行動をするのが正しいのかもよくわかってない。だから、初めて自分がされたときに、なんだかふわふわとした感覚を覚えたことをニニにしてみてる。これでいいのかはわからないけど、ニニが気分を害している様子はなさそうなので、当分はこの方向で行けばいいかもしれない。

 ちょっとの間ニニの頭をぐりぐりとしてから、ニニが持ってこなかった、作業テーブルの上に残っていた素材をまとめて保管できるスペースにしまっていく。

 かばんに戻そうか考えたけど、保管場所として棚もちゃんと置いてあるなら、棚に入れておけば気分転換に取りに立てるからちょうどいい。ベルヒガングは室内で見ると色の濃淡もあるから、とりあえず濃淡は置いておいて色味でまとめて入れていく。

 ひとまず全部保管棚に入れ終えたら、ニニを作業テーブルの端っこの方において、「これから薬品を使うからここにいて」と伝えて、作業テーブルの上に工房に備え付けられていた大き目の薬液用のケースを取り出して、かばんの中から持ってきた薬品を取り出す。

 染色を考えてたけど、ニニの持ってきてくれたのは綺麗な色をしているから、このままの色で作ってみたい。ケースにどぱどぱと植物を枯らさないためのフレシェバーン液を流し込む。花部分だけを丁寧に切り離して、フレシェバーン液に沈めてから、20センチの厚みに切った輪切りのウゥンシュの幹を一枚取り出す。

 作業テーブルの半分近くを埋める大きさのそれの、刻まれた年輪の木目を眺めて土台としてよさそうな模様を探す。最初は形を整えやすければそれでいいかとも思ったんだけど、実際にアクセサリーに組み込んだときに、想像以上に木目模様が違和感を生んでいることに気づいて、作るアクセサリーに合わせて木目模様を選ぶことも必要だと理解した。

 だから、土台で花と組み合わせた時に合う模様をしっかりと探す。場合によってはほかの輪切りを出した方がいいこともあるんだけど、幸い取り出したのにいい感じの木目模様のところがあったので、自分の手に合うサイズの糸鋸でその部分を切り出す。切り出した木材をさらに土台の形に大まかに整えながら、フレシェバーン液に浸した花の様子を確認する。

 そろそろいい感じだったので、花を薬品から上げて作業テーブルに設置されている乾燥棚へと形が崩れないように並べる。この作業自体は何度も繰り返したから、案外簡単にこなせるようになった。乾燥棚に広がる色とりどりの花は意外ときれいにみえる。

「キュキュ~?」

「こうすると、お前が選んでくれた花が枯れないんだよ」

「キュィ!?」

 ニニが不思議そうに乾燥棚に並べられた花を見ていたからそう答えると、ニニは飛び上がってびっくりした。なんか、もっとすごそうな空間に連れてかれたのに、それに驚くんだ。ニニのびっくりするポイントがわかんないなぁ。

 フレシェバーン液につけた後は乾燥させなきゃいけないから、その間に小さな刃物を取り出して、大まかに形を整えた土台を細かく削っていく。

 ニニに削り屑が飛ばないようにニニと逆側を向いて削ってたんだけど、ニニが見えないことに対して抗議するように「キュ~イッ!」と騒ぐので、ちょっと考えて、ニニの足元、下側を向いて削ることにした。背中を丸めると後で痛くなるんだけど、ニニが見たいなら見せてあげたい。

 ニニは作業テーブルの端につかまり、テーブルから乗り出してこちらの手元をのぞき込み始める。くるんと先の丸まったしっぽがゆらゆらと揺れてるのは、どういう感情なんだろう。なんか、犬と猫でしっぽを動かす意味が違うって聞いたことがあるし。

 少しずつ少しずつ削って形を整える。小さなナイフのような刃物でで切るところまで整えたら、今度は溝を惚れるタイプの刃物に持ち替えて、花をセットするためのへこみを作る。乾燥棚の花の大きさをチラ見しながら花に合うサイズになるように、でも大きくなりすぎないように慎重に削る。

 ある程度セットする穴を形にし終えたら、表面の凸凹をなめらかな面になるようにやすりで削る。最初は目の粗いので。全体的に表面を削ったら、少しずつ細かいやすりに切り替えて表面をなめらかにしていく。

 削ってない場所が残っててもザラついたり棘があったりして手触りがよくないし、逆に同じところばかり削ってしまったらそこだけへこんで見た目が悪くなってしまう。今までは見えるところに使うものじゃなかったから、そこまで神経質にはなってなかったけど、今回の土台は普通に見えるからそこはしっかりしないと。

 集中してやすりを動かしては指先でざらつきやへこみ具合を確認して、さらにもう一度やすりをかけてを繰り返す。一つ目の土台が納得できる状態になったところで顔を上げたら、頭を乗り出したままのニニがプゥプゥと小さな寝息を立てて眠っていた。

「……落ちそう」

 削り切った土台を作業テーブルの上に乗せて、ニニの頭をそっと持ち上げる。触ってもニニは起きなくて、プゥプゥ寝息を立ててる。そっとひっくりかえしたら、気持ちよさそうに鼻提灯を膨らませてる。……うん、慣用句として認識してたんだけど、本当にこんなことあるんだなと思いながら、ニニを作業テーブルの端に戻そうかなとかんがえて、寝返りを打って落ちたらまずいと考え直す。

 工房内を見回して、ニニがおさまりそうなサイズ感のケースがあるのを見つけたから、それの中にニニを入れる。でも、ちょっと寝心地が悪そうに、ぐずるように寝返りを繰り返してるから、かばんの中から今日むしった葉っぱの中でもやわらかい葉っぱを体の下に入れてやると、口元をむにむにとしながらおとなしくなった。

 その様子を見て、興味本位でニニのふっくらと膨らんでるほっぺに触れてみる。毛皮でふかっとしてるのに、むにっと柔らかい感触がして、なんだか不思議な感じがしたけど、悪くないと思う。たまにカササギさんが現実でほっぺに指を突き刺してくるのはこんな感覚なのかなと思うけど、それはそれとして気持ち悪いからこれからもほっぺに指を突き刺してきたら関節をキメ続けよう。

 少しの間ニニを眺めてたけど、作業を続けなきゃと思いなおして乾燥棚にある花の様子を確認する。いい感じになってたので、一つ花をとって土台に合わせてみる。サイズがちょっと小さかったから、少しだけ花を入れる場所のくぼみを大きくして、ちょうどいいサイズを確認する。

 花はいいけど、土台はまだ一つしか作れてないから、同じ形の土台を複数削りだす。一つ一つ木目が若干異なるから、木目を確認しながら土台の形と模様の様子を確認しつつ削り出していく。

 二つ、三つと土台が増えていく。一つ一つ木目模様が違うから、なんだか違う雰囲気があってどれもかわいいと思う。どの土台にどの花をあてはめようかなと考えていたところで、パーティーチャットから真鯛(マダイ)の刺身さんの声が聞こえた。

『晩御飯だよ! 食堂に集合しな!』

 パーティーチャットで返事をしている声が聞こえる。とりあえず下に行かなきゃいけないから、プゥプゥ寝息を立ててるニニを起こそうと思うんだけど、どうやって起こせばいいのかな。

 とりあえず、ニニのおなかをつんつんとしたら、ニニは眠そうに頭をふらふらさせつつ体を起こす。

「ニニ、晩御飯だって呼ばれたから、下にいこ?」

「ン~、キュイィ~」

 ちょっと眠そうな声だけど返事が返ってきたから、ニニをてのひらに載せてから、工房を後にした。

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