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OTRA VIDA  作者: 杜松沼 有瀬


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5.プレイヤーとの交流 18

 少し拓けてはいるけど、この場所は本当に拓けてるだけで、さっきの花畑みたいに花とかがいっぱい生えてる場所じゃなくて、元々木が生えてたところを伐採したからなくなって場所が空いた、みたいな感じの、小さな草むらみたいな空間があるだけの場所。

 面白いものもないし、生えてる草をむしってみたけど、特に自分で使えそうな物はなかったから、それくらいなら伐採してた方がマシかなと思って、周辺の木を見て回ってたら、ウゥンシュやヴェルズィクトも、それ以外もある。

 まあ、あっても困らないしいいかと思って、近場にある木から伐採のために斧を振るう。斧で伐採するのは時間がかかるけど、たぶん本当に最初に伐採した時よりは手際よくなってると思いたい。

 一本伐採してからカササギさんたちを見るけど、まだ誰かと話してるのか、険しい顔つきで口だけが無音でパクパクしてる。難の話をしてるんだろうね。

 終わる気配を感じないので、ひとまず新しい木を伐採しては様子を見て、終わりそうにないからまた新しい木を伐採する。何本も繰り返すけど、全然終わる様子がないから、どうしようかな、二人を置いて先に拠点に戻ろうかなと考えながら次の木を伐採しようと斧を振り上げたとき、小さな「キュィイ」という鳴き声のような音と、ガサガサと葉をかき分けるような音が頭上から降ってきた。

 なんだ? と顔を上げると、今から伐採しようと思っていた木の葉の隙間から、何か小さなものが降ってくる。咄嗟に避けようとしたけど、ソレがふさっとした毛皮を持つ小動物であるとわかったため、勢いよく落ちてきたそれを斧を投げ出して両の手で受け止めた。

 ソレはサイズ感通り、あまり重たくない生き物で、受け止めた瞬間は少しの衝撃はあったけど、すぐに手の中はふわふわとした毛皮の生き物の柔らかさと温かさだけになった。

 受け止めた小さな生き物は、少しの間手のひらの上で小さく丸まってたけど、徐々に頭を持ち上げて、キョロキョロと周りを見回してかたこっちを見上げてくる。

 形はリスのような形で、2.5等身くらいに大き目の頭と、房っとした少し太めのしっぽがゆるりと揺れる。きょろりとつぶらな目がこちらを見上げてくるのと同時に、リスのようなものの目と目の間、額のあたりに丸い石が生えていた。

 なんで石が生えてるのかとか、なんで上から落ちてきたのかとか、気になることはあったけど、伐採の最中だったことを思い出して、リスのようなものをゆっくりと地面に降ろす。

 トンっと軽い調子で、小さな足で地面を踏みしめたリスのようなものに手を振って、先ほど放り出した斧を拾い上げて、伐採予定の木に向き合う。それから、もしかしてこの木に巣でもあったのかと思って木の上部を見上げるけど、それらしいものは見えない。

「ねぇ、お前。この木、切っても大丈夫?」

 念のためと思って、足元にいるリスみたいなのに問いかける。……動物だし、言葉は理解できないかな? と思ったけど、リスみたいなのは小さく「キュイキュイ」と鳴きながら頭を縦に振った。

 もしかして言葉理解できるの? 疑問に思ったけど、とりあえず切ってもよさそうだから、予定してた通りに斧を振り上げて伐採作業を進める。

 何度も斧を入れて、倒れた木をかばんに入れたところで、足に何かがふれる感覚があって見下ろしたら、先ほどのリスが右足にしがみ付いてこちらの体を登ってきているところだった。

 え、なんで登ってくんの? っていうか、地面に降ろしたからどっか行ったと思ったのに。

「なんで登ってくんの」

 リスっぽいのにそう声をかけると、リスみたいなのは「キュキュイ」と鳴きながら、それでも器用にするするとこちらの体を登ってきて、人の肩口にちょこんと落ち着いたかと思うと、耳元で「キュイ、キュイ」と小さく鳴きながら人の首元に頭突きしてくる。

「何したいのお前」

「キューイッ」

 リスみたいなのはどこか楽しそうな鳴き声で何度も頭突きを繰り返してくる。リスみたいなのの毛皮の毛が耳の下から首筋にかけてにこすりつけられるので、ちょっとくすぐったいかもしれない。

 このリスみたいなの、どうしたらいいんだろう。相談したくてカササギさんの方を見るけど、まだ二人とも忙しそうにしてるから、伐採を続けようかな。

 まだ頭突きを繰り返してくるリスみたいなのに手を伸ばすと、リスみたいなのはその小さな手でこちらの指先をきゅっと掴んでくる。

「僕、まだ伐採続けるから、人に引っ付いてるのはいいけど、吹っ飛んで怪我したりしないように気をつけなよ」

 リスみたいなのにそう声をかければ、リスみたいなのはぎゅっと強く指先を掴んだ後、指を話して人の首筋にぎゅっとしがみ付いてきた。しがみ付くのそこなんだ、と思ったけど、とりあえず伐採を続けるために斧を振り上げた。

 リスみたいなのは、人の首筋にへばりついたままずっと人が伐採している様子を興味深そうに見てるだけで、吹き飛ばされることも、こちらの邪魔をすることもなく大人しくしていてくれた。

 伐採するたびにカササギさんたちを見るけど、全然終わる気配がなくって、本当にあの人たち何してんだろうなぁと思いながら、そろそろ伐採にも飽きてきた。何本も伐採したせいで、少し平手てた空間が一回りくらい大きくなった気がする。

 こんなに木材ばっかりあっても使い切れないかもしれないから、なにかむしれるものがないかなと思って地面を見下ろすと、たぶん、伐採した木に生っていたけど、何らかの理由で落ちたと思われる木の実がいくつも落ちていた。

 その木の実は、果物というよりは、どんぐりとか松ぼっくり見たいな、硬そうな小さいもので、こういうのも使えるのかなと思って拾い上げる。


 エーワルタング

 性質:土属性 品質:C 平均売価:5B

 とある地域にしか生息していない樹木。

 木目が美しいが、硬度が低いため、用途が限られるが、実はその形から加工することで硬度を保てる。アクセサリー職人の素材として求められる。


 反射的に鑑定をしたら、この実はアクセサリーにも使えるっぽい。周辺を眺めると、その辺りに結構ぽろぽろ落ちているのが見えたので、かがんで手の届く範囲のものを拾い上げる。

 拾ってみると、形や大きさが結構まちまちだから、これは量を確保しないと複数使うときに同じようなのを探すのに苦労しそう。

 ちらっとカササギさんたちがまだまだ時間がかかりそうなのを見て、エーワルタングの実を拾い上げるために少しその場所を離れる。

「キュ、キューイ?」

 首にしがみついていたリスみたいなのが、こっちを見て鳴き声を上げる。なんだか、「木の実が欲しいの?」と聞かれたような気がして、頷く。

「これ、アクセサリー作るのに使えそうだから、もっと集めようと思って」

 通じてるかはわからないけど、リスみたいなのそう伝えると、リスみたいなのは少し考えこむように首を傾げてから、ハっとしたように人の体を滑り降りていき、ポテポテと奥の方へと走っていく。

 リスみたいなのはどっか行きたいとこがあるんだろうなと思って見送ろうとしてると、リスみたいなのはこっちを振り返って、その小さな手をこいこいとしてくる。

「……お前、僕について来いって言ってる?」

「キュイ!」

 てっきりいなくなるのかと思ったのに、人を呼び寄せるかのような仕草にそう尋ねれば、肯定するように頷きながら鳴くから。

 進む先は、たぶんもっと森の奥の方なんだと思うけど。もう一度カササギさんたちを見るけど、まだ終わらない。……少しだけなら、いいかな。

 リスみたいなのに招かれるままに、そっと森の奥へと足を踏み入れた。

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