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OTRA VIDA  作者: 杜松沼 有瀬


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5.プレイヤーとの交流 17

「それで、こいつら何? さっきまでいなかったよね」

 よく見たらさっきまでカササギさんのいた辺りに、人間らしい物体の山が出来上がっているし、少し離れたところにいるカチュさんの近くにも人間っぽいのが倒れてる。いつの間にこいつら来たんだろう。

「カナくん集中してたもんねぇ」

「本人たちの主張ですと、この辺りを拠点としているそうですの。ここで採取することについていちゃもんをつけられまして……」

 困ったといわんばかりに、カチュさんだため息を吐く。……ここって拠点の場所なの? きょろっと周辺を見てみるけど、どこにも拠点らしい建物も見えないし、立ち入りを禁止しているような進入禁止の境界線なんかも見えない。この花畑を拠点にしてたってことなのかな。

「……この花って、調剤とかでなんか使えるのかな」

「なんでそう思ったの?」

「いや、こいつらここを拠点にしてるって言ってたっていうから、花畑を拠点にするなら、そういうオクスリとかに使えるからってことじゃないの?」

 ガラの悪い奴らが花畑を拠点にするなんて、それくらいしかないんじゃないの? 道場に通ってた頃のやつらが、漫画かなんかで定番の設定だって言ってた気がするけど、違ったかな。

「偏見だよそれは。まあ、薬剤に使えるかは知らないけど。こいつら、俺たちが「厨二病上等」のメンバーだってわかってて殴りかかってきてたから、対人メインでやってるグループで、偶々俺たちがここにいたから拠点だなんだっていちゃもんつけてきてただけだと思うよ」

「ふぅん。……まだむしっていい?」

「気が済むまでむしりな~。時間が時間になったら止めるけど」

「わかった」

 邪魔な倒れてる男を蹴ってどかしてから、次の密集場所の近くに座って花をむしる。こうしてむしってて、少し不思議に思うことが一つだけある。ベルヒガングは、鑑定したときの情報で、生育環境で色が異なるって書いてあった。生育環境ってまとめられ方だから、何が要因かはわからないんだけど、なんでかこの花畑のベルヒガングは同じ場所に割いてるのにいろんな色がある。

 昨日むしって集めたのは、薄水色とか、薄紫色とか、なんていうか寒色系の色合いのが多かった。でも、この花畑のベルヒガングは、薄桃色に薄橙色、薄黄色、薄緑色、薄水色、薄紫色っていろんな色が集まってる。

 さっきから密集してるところをむしってるけど、その密集地の中でも色が違う。素材として使うときに、いろんなカラーバリエーションを作れる意味ではうれしいんだけど、それより前の段階だと、同じ色が大量には密集してないから、結構厄介かもしれない。

 何が条件でこの花の色は変わるんだろう。むしった後でも変わるのかな。不思議だけど面白いな。欲しい色だけ集めるときの条件がはっきりしたら、特定の色だけ多く集められるんだけどな。こういうのって、条件わかったりするのかな。

 条件を外したら、今この場所に咲いてない色も裂いたりするのかな。どうなんだろう。戻ったらアメリーさんにそういうのに詳しい人がいないか聞いてみようかな。

 密集地帯をむしり終えては、次の密集地帯の近くに座ってむしる。どれだけむしったかわからないけど、気づいたら辺り一帯の密集してるところがなくなってた。

「カナくん、満足した?」

 すっと近づいてきたカササギさんにそう言われ、まあむしれるならむしりたいけど、むしり続けられるだけの密集地もないから、もういいかな。

「ん」

 カササギさんに頷けば、「じゃあ帰ろっか」とカササギさんが言うので、促されるままに立ち上がって歩き始める。往路と同じように、カササギさんが前に立って、後ろにカチュさんがついてくる感じで、花畑を後にしながら、手が届く範囲のものをむしる。

 今までにむしったものと同じものもあれば、違うものもいくつもあるので、とりあえずむしり続ける。

「……あの、カナカさんのそのかばん、いったいどうなってるんです? まだ入るんです……?」

 そういわれて、かばんの残り容量を確認するけど、まだまだ容量は半分にも満たないから、本当にいくらむしってもいいっていいな。むしれるものをとにかくむしってるところで、視界が少し拓けた場所があって、その近くに初めて見かけたがあった。

「カササギさん、アレ初めて見た。伐採してもいい?」

「ん? いいよ」

 カササギさんが立ち止まったのを確認して、初めて見た気に近づく。かばんから斧を取り出そうとして、そういえばスキル使う使わないって話があったなと思い出す。

 せっかくだし、一回使ってみようかな。スキルってどうやって使うんだっけ。普段、鑑定を使うときは鑑定したいものを見て、鑑定したいって考えるだけでいいんだけど、伐採も同じでいいのかな。

 初めて見た木をじっと見ながら、伐採したい、伐採スキルを使いたいと考えると、アメリーさんの時みたいに、見ていた木が薄い光に包まれて、木ごと消えていった。おぉ、一瞬だった。確かにこれは斧で伐採するよりもすごい早い。

 ……すごい早いけど、伐採した木はどこに行ったんだ?

「ねぇ、伐採したのどこ行ったの?」

「っ、ふふ、インベントリに入ってるよ」

 カササギさんに笑われてるのはめちゃくちゃ腹立たしいけど、昨日教えてもらった通りにインベントリというのを開く。あのマス目がいっぱいのウィンドウが現れて、その中にやけにきれいな形になっている丸太の絵があった。

 丸太の絵の右下、マス目の中に、小さい文字で数字が書かれてる。その数字は、2と書かれていて、これは何だろうと思いながら、とりあえず取り出すにはどうするんだっけと思いながら絵に指を触れさせると、メニューのポップアップが出てきて、その中に「取り出す」という項目があったので、それをタップする。

 ぽんっと何もないところから目の前に出現した、長さ1メートルくらいの木の皮を剥いできれいに整えられた丸太が一つ。インベントリウィンドウをみれば、マス目の中の数字は1になっているので、同じサイズの丸太が2本になったってことなんだろう。

 そう考えてから、うん? と思う。元々伐採しようと思ってた木は、パっと見た感じでも高さは3メートル以上はあったと思う。それなのに、得られるのは1メートルくらいのものが2本だけ? しかも、樹上にあった葉っぱとか細めの枝とかは全部入手出来てない。

 丸太にするために、細い枝やそこについてる葉っぱを落とすのはわかる。丸太として使うならこの状態にするのが一番いいのはわかるけど、この長さに切り出した残りはどこに行ったんだろう。

 たぶん、自分で斧で伐採したら、この丸太と同じ長さのものをもう一本とれると思うし、細い枝とか葉っぱも含めるなら、スキルで伐採すると随分と目減りしているように感じる。

「カナくん? どうしたの?」

「……スキルで伐採したら、使える素材が目減りしちゃってる」

「は?」

 カササギさんがすごい顔してるんだけど、そんな顔するようなこと言ったかな?

「あの、カナカさん。先ほどの木の大きさから、スキルで伐採したときにどれだけ素材を得られたんですか?」

 カチュさんがおずおずといった調子で聞いてくる。戦闘中心にゲームをしてると、採取とかあんまりしないのかな。

「この丸太2つ」

「えっと、スキルを使わない場合ですと、どれくらいになるんです?」

「? あの木丸々だから、たぶんこの丸太だったら3つにはできると思うし、丸太にする時に出る端材とか、細い枝や葉っぱも取れるから、結構目減りしてると思う」

 カチュさんにそう伝えると、カチュさんも目を丸くして固まっちゃった。……どうしたんだろう、この二人。

 そう思いつつ様子を見てたら、カササギさんが何だかよくわからない大声を上げて、その後無言でなんだか口をパクパク刺せ始める。カチュさんも同じ状態なんだけど、何してるんだろうね。

 少しの間その様子を眺めてたけど、なかなかその状態が終わらない様子だったから、暇だから周辺のものをむしったり、斧での伐採をして暇つぶしすることにした。

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