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OTRA VIDA  作者: 杜松沼 有瀬


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5.プレイヤーとの交流 15

 牙を閉まってから、カササギさんに誘導されるがままに森の中を進んでいく。

 手の届く範囲のものをむしり、ちぎり、引っ張り、手折り。とにかくとれるものを採りながらカササギさんの背を追っていると、後ろを歩いているカチュさんから、「カナカさん、普段はどのあたりのマップにいらっしゃるんです?」と聞かれた。

「最初の街と、街の東門出てすぐのとこか、ちょっと奥の森にしか行ってない。他に採りたいものなかったし」

「……おそらくあそこですよね、東門を出て北の方にある森ですわね」

「うん」

「……そこに行くまでの間に魔物は出ませんでしたの?」

「見たことない」

 もう一度思い出してみるけど、初めて森に行ったときに遭遇したあの男以外に、生物を見たことがなかった気がする。確かに、森とかって動物とか虫とかいるのが普通なのか。遠目でも見たことがない気がする。

「えっと、武器は何を使用される予定でいらっしゃったのですか?」

「……? 戦いたくないから作る方にしたんだけど……」

 カチュさんの言いたいことがよくわからない。戦いたくないから作る方になったのに、武器って何のことだろう。

 こっちはそれで混乱してたけど、カササギさんは話が理解できてるらしくて、こっちを振り返りながらケラケラと笑った。

鸞瑪(スズメ)、何笑ってるんです。こんなにかわいらしいカナカさんが心配じゃないんですか」

 カササギさんにカチュさんがなんでか怒ってるっぽい。というか、……かわいい……? それはよくわからないけど、戦わないから武器とかいらないんじゃないかな。まあ、最悪刃物は持ってるから何とかなると思うけど。

「カチュ。カナくんはねぇ、カチュが想像してる以上に強いからね」

 カササギさんの言う強いがよくわからないけど、カチュさんがそれ以上この話題を続ける気がなくなった様子なので、まあいいんじゃないかな。

 まだカササギさんとカチュさんが二人で話を続けてるけど、自分はそのまま周囲のむしれるものをむしってく。

 伐採は時間がかかるからしないけど、サンプル代わりに手が届く場所にある細めの枝は普通にもいでる。この森、さっきからいろいろもいでるけど、思ったよりもいろんな種類の木が生えてる。

 一部は見たことある種類なんだけど、大半が見たことのないのだから、なかなか楽しい。木って、あの木材特有のにおいがするんだと思ってたけど、木の種類によって全然違う臭いで、いわゆる木のにおいってイメージまんまの匂いのもあれば、ウゥンシュのように、なんだが独特だったり、ちょっと甘かったりする匂いだったりする。

 匂いがほのかに香るアクセってどうなんだろう。芳香剤にできるって記載があったってことは、匂いでもなんかあるのかな。まあ、嫌な臭いよりはいい匂いの方がいいだろうってのはわかるけど。

 ……いい匂いのする枝とか蔓を使って作れるかな。採り終わって帰ってからなんか考えてみようかな。

「カナくん」

 匂いについて記載がある木の枝や蔓を優先的につかんで引っ張ってると、先にいたカササギさんがそうこちらの名前を呼んできたのでカササギさんを見る。すると、「着いたよ」と言われて周りを見たけど、正直まったく覚えてない。ただ、足元のあたりが結構むしった痕があるから、そうなのかもしれない。

「じゃ、カナくん。せっかくだしマップにピン刺ししてみよっか」

「……ピン」

「そ。とりあえずマップ開いて」

 少し先にいたはずなのに、いつの間にか隣に来ていたカササギさんに促されるままに、地図を開く。相変わらず地図は一帯が森だったけど、少し離れたところに、相変わらずなんだか楽し気なマークがあって、その周辺は少し拓けてるように見える。

 よく見たら、その奥の方に川のような水色の細長いものがあって、その対岸にきれいなキラキラした幾何学模様のマークが、楽し気なマークとちょっと離れたところに、ほんのり水色の入った白いレースのような円のマークがある。……これ、何のマークなんだろう。

「じゃ、ピンの刺し方を教えるよ。マップのピンを刺したいとこをダブルクリックして。pん刺すのは今俺たちのいる場所ね」

 カササギさんに言われる通り、マップの自分たちがいるとマークが出ているところに、人差し指を向ける。この地図って触れるの? と疑問が湧いたけど、ある程度の場所まで指を進めると、指が何かに触れてるような感覚がした。なるほど、ここでいいのかと納得して、そこに指を置いて二回トントンと叩く。

 すると、指の横に小さなポップアップが出て、そこに何かが書いてあった。ピン、ルート設定、共有ピン、削除。そう書かれていた。

「今回は、俺たちとも共有するために共有ピンを選択して」

 共有ピンという文字に触れると、さらにポップアップが出て、一番最後に出たポップアップウィンドウの中には、様々な小さい絵がいくつもあった。

「マップピンアイコンがいろいろ出てると思うけど、カナくんがいいなって思うのでいいよ。使えるアイコンしか表示されてないからね」

 それでもいいって言われるとちょっと困るな。どうしようかなぁとその小さな絵を眺めていると、「スクロールしたらまだあるよ」と言われて、小さな絵のウィンドウの横にスクロールバーが表示されてるのに気づいた。

 こんなのいっぱいあるの? と思いながらスクロールバーをスライドすると、確かにいろいろなものがある。中には、あの楽し気なマークもあった。どうしようかな、と思っていたら、その中に桜の花があった。視界の端に自分の髪の毛が入ってきて、反射でその桜の花をポンと押していた。

「お、桜か、いいねぇ。じゃあ、カナくん、その桜のマークをワンクリックして、出てきた注釈に「スポーン地点」って入れてくれる?」

 地図に表示された桜の花を一回叩くと、「注釈: 」という空欄が出てくる。空欄に触れると、文字が書き込めるようになったけど、文字の書き込み方がわからない。普通に書けるの、これ?

 困惑しながらその書き込み欄に指を滑らせて文字を書けば、その文字がそのまま注釈欄に反映された。見慣れたややぎこちない角ばった文字。……え、活字に直してくれないの?

「カナカさん、空欄部分を長押しでキーボードディスプレイが表示されますよ」

「……」

 面白そうにこっちを見て笑ってるカササギさんの足を蹴り飛ばして、自分の手書き文字が反映されているそこの欄を長押しすれば、カチュさんのいう通りにキーボードディスプレイが表示されたので、手早く打ち直す。見慣れた不格好な手書き文字が活字で上書きされたのにほっとして、それから地図をじっと眺める。

 ほとんどが濃い緑色だけど、よく見ればぽつぽつと薄い緑色だったり、薄い黄色だったりとそれなりに拓けた場所も表示されていることに気づいた。

「いったいなぁ……。とりあえず、基本的に共有ピンはパーティーとか、同盟を組んだ先とか、味方にしか見えないから。共有じゃない方のピンは、完全に個人版ね。カナくんが他の人には教えたくないときとかに使うといいよ」

「そう。ところで、地図だとすぐ近くになんかありそうなんだけど、そっち行ってみてもいい?」

「どこ?」

 覗き込んできたカササギさんに、地図のその場所を指さして見せると、「いいね」と頷いてくる。

「じゃあ、せっかくだからルートも入れてみよう。今度は目的地をダブルクリック、ルート設定で、「現在地からのルート」を押す」

 言われたとおりに、向かう先の場所を二回たたくと、先ほどと同じポップアップが出る。そこのルート設定を指で触れると、特定の場所からのルート設定と、現在地からのルート設定と表示されていたので、下の項目に触れる。

 すると、今しがた自分でピンを立てた場所と目的地の間に細くてキラキラした青い線が引かれた。

「こういう森だとあんま必要ないけど、街中とかだとこれで通る場所がはっきりするよ。もう一つの方は、まあ、他の人に説明するときとかに使うことが多いかな。あとは、すでにピンが立ってるとこまでのルートの場合は、ピンを長押しで同じようにルート設定の項目が出てくるからね」

 確かに、方向がわかってれば問題ない森の中よりも、煩雑な通路になってる可能性のある街中の方が必要そうな機能だ。細い線だけど、たぶんアメリーさんのお店を検索したあとの時とかと似たような昨日で間違いないと思うけど、なんで細いんだろう。よくわかんないや。

「じゃ、その場所に行って、必要な素材が採取できそうならその場所にピンを打っておこう。あ、一回採取した場所でも、マップ内時間で2日あれば再採取できるから、もし使い切ったとかあったらイベント期間中に何回か採取できるから安心してね」

 そうなんだ。カササギさんの言葉に頷いて、相変わらず先頭に立って進み始めるカササギさんの背中を追って森の中を進み始めた。

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