5.プレイヤーとの交流 14
「ほんと俺たちの常識範囲外だねぇ、カナくんはさぁ」
「……? なにが?」
先端のわさっと繁っていた葉っぱが顔面にぶち当たったせいで、髪とかいろんなところに引っ付いた葉っぱをはがしてかばんに放り込んでいると、心底あきれたといわんばかりの態度カササギさんの声が降ってきて、どういうことだろうと首を傾げる。
「カナカさん、スキルは使われませんの?」
スキルを使う。なんか、きいたことがあるような?
『制作系のスキルは、こうやってスキルでアイテムを作成ができるんだよ』
ふと、アメリーさんの声が頭の中で響く。アメリーさんの手のひらから小さな光が生まれた、あの光景。
「……そういえば、スキルってあったっけ」
鑑定を使うことには随分と慣れたけど、そういえばそれ以外のスキルって使ったことないな。使う必要性を感じなかったっていうのもあるけど。
「鑑定以外使ったことない。……普通に作業とかすればできるのに、何でわざわざスキル使うのかよくわかんない」
思ったことをそのまま口にすると、なんでかカチュさんは呆気にとられたような表情だし、カササギさんも何とも言えない顔をしてた。そんなに変なこと言ってるのかな。
「なんとも絶滅危惧種だだこと。カナくんが時短とか気にしない感じか」
「僕は別に急いでないから、時短とか考えたことない」
「まあ、それもそうか。どうしても、俺たち対人をやる連中はせっかちになりがちだからねぇ」
「ふぅん?」
対人をやるって、よくわからないけど、とりあえずカササギさんみたいな人はせっかちに急ぐから、時短のためにスキルを使うってことか。アメリーさんもそんなこと言ってたような気がするけど、やっぱりわかんないや。スキルの使い方もよくわかんないし。
「この木、あと2~3本伐っていきたい」
「オッケー。俺の方でも見かけたら教えるね」
それはありがたい。一応目に入るの全部鑑定にかけてるけど、見落としがないとも限らないしね。鑑定かけなくても見分けられる外見なのもよかった。この色の木はほかにはなさそうだからよかった。
足元の花をむしり、薫り高いの文字がある木の枝や使えそうな蔓なんかをもいで引きちぎってしていれば、数分歩けば次のウゥンシュの木が見つかる。
同じように自分で斧を振るって切り倒し、手伝ってもらいながらかばんに切り倒したそれを収めていく。二本目も切り倒してから見たら、結構な高さがあった。もちろん、先端に行くにつれて細くはなってるけど、それでもアクセサリー用の台座とかに使うなら十分な量が確保できるし、枝なんかの細いのは、なんだっけ、細い棒みたいな髪飾りがあったはずだから、それにも使えるかも。
念のためにあと二本も確保出来たら十分だと思うかも。
「カササギさん。思ったよりでっかい木みたいだから、あと二本くらい切ったら、花を優先して探したい」
カササギさんが頷いて、向かう方向を少しずらした。地図を見ても元々最初にいた場所もよく覚えていないからわからないけど、多分そっちの方向に進路を変えたんだと思う。まあ、ウゥンシュの木を見つけて、元々進んでた方向からずれたと思うし。
カチュさんは時々こちらの上着が木枝に引っかかりそうになったら、そっとそれを直してくれたりしてる。
昨日通った道に近い通っているはずなのに、昨日見た記憶がない植物がいっぱいある。あと、ところどころに落ちてるなんだかコロコロと丸っこいのは何だろう。石じゃないみたいだけど、完全に地面に落ちてるから、歩きながらだと拾いづらい。
変なものだったら嫌だからそのまま放置してるけど、あとでカササギさんに聞いてみようかな。
そのまま進んでいる最中に、またウゥンシュの木を見つけたが、今度は近くに二本はえていた。今までは近くに生えてなかったから、そういう性質の木なのかと思ったけど、近くでも育つんだ。
「この二本伐っちゃうからちょっと待ってて」
「オッケーオッケー。周りは気にしないで伐ってな」
今までと同じように伐採作業を進める。カーンカーンと響く反響音に、ガサガサという何かのノイズ音のような混じったような気がして顔を上げたところで、カササギさんが強く地面を蹴ってこちらから斜め後方のあたりに向かって手にしていた剣を振るう。
いつの間に剣なんて持ってたのかもわからない、本当にまた滝の瞬間くらいの時間で、音の正体はカササギさんに首を落とされた。ドサ、ドサりとそれなりに質量のあるモノが落下、店頭する音が響く。そこには、頭を含めれば2メートルを越える巨体の、四つ足の獣のようなものが転がっていた。
「……なに、それ」
「第二の街のタガ周辺によく出没する牙猪だよ。正式名称は何だっけ」
「ワイルドレージェンですよ」
切り落とされた頭の方を見たら、確かにでっかい牙が二本生えてる、イノシシの顔をしていて、牙猪と言われるのも納得ができる容貌だった。
「こんなのいるんだ」
「モーガンの近くにだって角ウサギとか、牙鼠とかいたはずだけど?」
「見たことない。へぇ、これが魔物ってやつ?」
「そうそう。って角ウサギとかも見たことないの? 東西南北どこの門から出てもいるはずだけど」
「……そうなんだ?」
カササギさんに言われて思い返してみるけど、やっぱり見た覚えがない。っていうか、むしってる時はむしるのに集中してるし、木材の伐採に行く以外は本当に門を出てすぐのところでむしってるけど、動物もいなかった気がする。
「やっぱり記憶にない。いつも東門出てすぐのところで座ってむしってるけど、動物も見たことないよ」
「そのあたりでも小動物くらい出てきそうなもんだけどねぇ」
そういわれても、見てないものは見てないしなぁ。動物でも、近くに動くものがあれば気配の一つも感じ取れそうなものだけど。
そんなことを思いながら、途中になっていた伐採を再開する。こちらが二本分の木の伐採をしている間、カササギさんはもう一体近づいてきた牙猪の頭を落として、それらをどこかにしまい込んでいた。
たぶん、自分で作ったかばんのように、大きなものでも収納して持ち運べる手段があるんだと思う。よくわからないから、自分はこのままかばんに突っ込めるサイズのものをかばんに突っ込めばいいと思ってるけど。
切り倒した二本もしっかりとかばんに突っ込んで、斧もかばんに収納したときには、イノシシの伐り下ろした首部分から流れ落ちたと思われる赤いものが地面に沁みた後だけが残ってた。
「そういえばカナカさん。魔物とは初めて遭遇したとおっしゃられてましたけれど、魔物素材はお使いになられませんの?」
「魔物素材……?」
「例えば……こういうのとか」
何のことだろうと思っていると、カササギさんが牙猪から切り落としたらしい、大きな牙をこちらに向かって差し出してくる。一度受け取ってから、関係をかけてみた。
ワイルドレージェン
性質:風属性 品質:B 平均売価:6000B
世界に広く生息している魔物の一種。
中型の魔物で、食肉可能。皮革や牙などはアクセサリー職人の素材として求められる。
へぇ、これもアクセサリーに使えるんだ? 白みのある牙を拳で軽く叩くと、コツコツといい音がした。そこそこ硬めな感触に、切り出して彫刻したりとかいろいろできそうだと感じる。
「使ったことない。初めて触ったけど、これもアクセサリーで使えるみたい?」
「お、そっか。四月朔日は魔物素材ほとんど使わないし、カナくんもってっていいよ」
「ん。一回確認しながら触ってみる」
カササギさんの言葉に頭を下げながら、この白い硬質な牙をどうやって加工しようか考えてしまう。少しの間そのまま考え込んでいたら、カチュさんに「まだ採集したいものがございますでしょ? 牙は拠点に戻ってからにいたしましょう」と言われ、ソレもそうだと牙はかばんの中にしまい込んだ。




